大日本帝國軍の愛と友情の日々

逓信省の検閲済でありますが、男色趣味満載ですので、苦手な方は華麗なターンでご退却下さい!所謂BL小説サイトです。右側に注意書きがございます。必ずご一読ください

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  変わらぬ青空のしたで・第弐拾参話

 惟之は丸い眼をまっすぐ副官へ向け、ふとんから指先を覗かせて、手招きする。枕もとへかれが歩み寄って来るのを待つ。

 「山口、もちっと寄れ」

 身を屈めた副官へ手を伸ばし、瞬間、その頬を思い切り抓り上げるなり、ぱっと手を離すとふとんに引っ込め、くるりと背を向ける。

 「…薬を飲んで眠くなったけぇ、おれァねむる」

 抓り上げられた頬をさすりながら、呆然とその背を見ていると、恩田に肩を叩かれ、もと居た場所まで引き戻される。椅子に腰掛け、持ち込んだ書類が載った机のうえに身を乗り出す。

 「二足のわらじを履きこなして、片や次官は女房で。向こうで亭主には苦労させられているんだから、やさしくしろと。そういう意味だ」

 そっと耳打ちされ、和胤は後ろあたまを掻いた。

 軍医から、暫く安静に、などと言われるまで働き詰めておきながら、上官は素知らぬ顔でいる。その上、ちっとも自身を顧みない。周囲の心配など、意にも介していないように見えて、つい、きつい言葉も出ようというものだ。

 「惟之は…、ああいう生き方しかできん。せめておぬしが傍に居る間は、面倒をみてやってくれ」

 なに、半分以上、こどもだと思えば可愛く思えてくる。と囁いて、にやりとしてみせる。それから、恩田は寝台に近づいていって、覗きこむ。

 「ようねむっちょる。…山口、戻るか」

 上官のことだから、たぶん三日も寝転がっていられないだろう。何とかその間に、議会で通らなかった満州の防備問題を解決したいところだ。

 局長の惟之が倒れたとあって、自然そのあとの指揮は恩田が執る。和胤も惟之の副官だから、お鉢は多少まわってくる。兎にも角にも総員、躍起になって走りまわるしかない。


 ―しかし、その三日が経っても問題は解決せず、第一局の面々はあたまをかかえた。そして案の上、かれらの上司、杉惟之閣下は三日を過ぎると寝台から起き出してしまい、落ち着かない―というよりは、甚だ退屈しきった様子で個室をウロウロし始めた。

 「これではええ加減、軟禁されちょるのと変わらんっちゃ。もう執務に就いてもええじゃろ、なっ」

 と、既に昨日から軍医長が訪れるそのつど、目を耀かせて、ちいさく首を右へ何度も傾げつつ、訊いているという有様である。そこでかれが“では、多少なら…”などとうっかり零してしまえば、あとはもう手に負えなくなる。昼の診察に訪れる軍医長を部屋の前で待ち、くれぐれもそれだけはしないでくれ、と恩田は頼みこみ、念を押して別れた。

 「なあ、新垣。この三日間一歩もそとへ出ちょらんが、参謀本部はいつもと変わりないか?」

 惟之にしてみれば、軍医長が何かおもしろい話でも拾ってきていないか、退屈まぎれに、何の気なしに訊いたことだった。

 何しろ恩田たちがあの満州の件を、ひとことも惟之へ報告していないだけに、まさか議会に通っていないとは毛ほどもおもっていない。というのも、あれは誰がみても―大げさに言えば、一般市民でも―火急的速やかに対処すべき問題なのは明白であって、いかに石頭揃いの議員連中でも、通すはずだと、そう信じていた。しかし…。

 「呉越同舟と言うんでしょう。満州防備のことで珍しく陸軍省と参謀本部が肩を並べて、議会と睨み合っているようであります。杉閣下がいなくなると、こうも計ったように問題が起こるものですかね」

 困っていいのか笑っていいのか、軍医長はそんな話をくちに乗せた。確かに陸軍省と参謀本部の仲がいい、というのは珍現象ではある。惟之はそれを聞いてニヤニヤしてしまう。

 「ははーあ、あの件か。いざ通したはいいが、今度は予算で揉めちょるんじゃな」

 「それが…。第一局にいる同期の話ですと、案件自体がまだ通過していないと、聞いておりますが」

 軍医長のそのひと言に、惟之の笑顔がそのまま貼り付く。椅子のうえで寛ぐ姿勢も変わらないが、早くも全身が殺気立っている。

 「何、そりゃ本当か?」

 「ええ、恩田大佐に近しい竹下中佐の話ですから、間違いではないか、と…」

 答えながら我知らず、冷や汗が額から吹き出てくる。軍医長は向かい合って座っている椅子から、腰を浮かしたいのはやまやまであったが、診察だけは、と最後まで済ませる。

 「どうじゃ、新垣」

 カルテに記入していく軍医長の手許を見つつ、惟之は訊いた。口調は談笑していたときと変わらない。対して軍医長は、すぐには答えられずにいた。

 完全に良好、とは言いかねる状態であるのだが、いまの殺気立った上官をまえにして、軍医長にくびを横に振る勇気はないし、それどころか、恩田から“くれぐれもそれだけは”と、頼み込まれているなどとは口が裂けてもいえない。

 「ええ、まだ完全に良いとは言えませんが…。今日から半日ほどでしたら、執務に復帰していただいても―」

 「よし、よう言った。恩に着るぞ」

 最後まで聞かずに、惟之は椅子からパッと立ち上がり、いつもの、栗鼠のように機敏な身ごなしであっという間に部屋から姿を消した。

 残された軍医長は、深くため息を吐くと、きつく瞼を閉じて眉間の間を指で揉んだ。まさか自分がきっかけで導火線に火が点くとは、夢にもおもっていなかった。
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