大日本帝國軍の愛と友情の日々

逓信省の検閲済でありますが、男色趣味満載ですので、苦手な方は華麗なターンでご退却下さい!所謂BL小説サイトです。右側に注意書きがございます。必ずご一読ください

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  綿津見の波の色は・第佰参拾弐話

ふたりは、約束をした。

どんなに軍務に追われようとも、赤煉瓦や水交社へ泊まるようなことはせずに、必ず帰宅すること、自邸に於いて軍務は一切持ち込まず、話題にも出さぬこと、というふたつである。

「春美さん、それを…守れますか?」

室内から持ち出してきた小さな卓へ酒肴を揃えていた嵩利は、手を止めて首をかしげながら鷲頭の顔を覗きこんだ。

海軍次官が赤煉瓦に泊まりこむ事態になる、というのは起こらないにしろ、軍務を自邸へ持ち込まずというのを守り通せるかとなると、それはいささか、信頼の置けぬ話になる。

「きみこそ、泊まりこむはめにならぬと、断言できまい」

意地悪く問うてくる。鷲頭の前に置いた猪口へ酒を注ぎながら訊き返すが、それは殆ど確信めいたものを含ませた訊ね方だった。

「そうなる前に、ぼくを海軍省から連れ出してくださいますよね?」

「海軍次官に…そんな振る舞いが許されると思うのか」

目許に僅かな動揺がうまれるのを、嵩利は見逃さない。

「もう…、すぐそうやって固いことを言うんだから、春美さんは…」

そんなことを言い合いながら、酒を酌み交わす。

約束といっても、必ず守れるものでないことは、互いに承知している。かといって他愛のないものというわけでもなく、こうして作り上げてゆく心の支えは、難局へ立ち向かう糧となり得る。

「この約束の発効は、何時からだ?」

何か思い出したらしく、話したそうな顔つきで訊いてくる。嵩利はちょっと唇を尖らせて、猪口の酒を干しながら、ぷいと横を向く。折角ふたりきりの時間なのだから、軍務に関する話など聞きたくなかった。

「先刻から、です」

「…何だ、拗ねているのか」

「別に、拗ねてなんかいません」

「そうは見えんがな」

たん、と卓を叩くようにして猪口を置き、嵩利は自身の酔い加減と、欲求とを測ってみて、それから、ちらりと鷲頭を横目で見やった。眉を寄せ、戸惑いをのせた眼の色が窺えた。すっと身を寄せて、我儘と甘い誘いを笑みに含ませながら、嵩利は間近に鷲頭の顔を覗く。

妖艶なまなざしを向ける嵩利の様子に、鷲頭は僅かに気圧された。

「何故…、ぼくが拗ねていると思ったんです?」

「先任副官、大臣秘書官、その上に軍事参議官副官。これだけで既に…、きみが赤煉瓦で缶詰にされるのは目に見えている。わかるだろう、きみは多くの信頼を得ているのだぞ。私情で勝手に―」

首をかしげつつ、甘い棘を含んだ問いを囁く嵩利。眼に強い光を閃かせたのを認めて、鷲頭はぎくりとする。態と怖い顔つきをして、懇々と説教を始めるも、只の照れ隠しとすぐに見抜かれる。こうなると滅多に脱がない殻を、嵩利に暴かれるのも時間の問題である。

蠱惑的な笑みを浮かべて、淀みなく響く諭す声を聞く。いつまでも聞いていたい声には違いないが、嵩利は、ひとさし指を唇の前に立てて翳した。それだけで、海軍次官鷲頭春美中将は言葉を継ぐ術を奪われる。

「ねえ、春美さん。ぼくを海軍省から連れ出して、ここへ帰って来たくなるようにしてさしあげましょうか…?」

その気になれば嵩利は、鷲頭を存分に酔わせることが出来る。以前それは証明されたわけだが、多分に積極的な態度を見せることは稀で、あの一度があった後、機会はなかった。

鷲頭にとってそれは半ば、禁断の領域になっている。この世にふたつとない妖花の、滴る蜜のなかへとっぷり溺れたいということを、心の奥底で懇望してきた。

言うなれば矜持の強い鷲頭は、なかなかその姿勢―生き様―を崩すということができない。殻を脱ぎ捨てた鷲頭は、ある意味では嵩利以上に純粋であり、剥きだしになったかれを、余すところなく愛する術を、嵩利は持っている。

どぎまぎと狼狽をみせる鷲頭の手を取って席を立ち、嵩利は振り向かずに手を引きながら東屋へ歩みを進めた。その髪や肩に、はらりと桜の花弁が舞い落ちてくるのを、鷲頭はまるで夢のなかにいるような風にして見ていた。
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| 綿津見の波の色は・131―140話 | 19:46 | comments:2 | trackbacks:0 | TOP↑

COMMENT

嵩利の色気

 を、感じました。父親の教育(?)の賜物でしょうか…

 ふたりの約束が、男女の秘め事にようで色めかしく、艶やかで、優しい気持ちになりました。お忙しいお二人ですが、自宅にいるときくらいはゆっくり心安らかに過ごしてほしいですね。桜の花の舞い散る様子が、また粋です。いつもながら、「やられたっ!」って思わされます(笑)久しぶりに次回は…。によによしながらお待ちしております♪

 週末はお休みできそうですか?
 お疲れのようです。どうぞゆっくり休んでくださいね。

| 奇特な訪問者様 | 2010/11/06 21:00 | URL |

コメント返信です

鷲頭の教育がしっかり行き届いてますね。

指折りかぞえてみたら、このふたりもう、八年連れ添ってます。

嵩利もすっかり遠慮がなくなって、このまま押せ押せで行けば、甘え下手の鷲頭を落とせるかも。

いまはもう二人きりですごせる自宅がありますからね~、陸にいるときくらい甘甘な時間をとらせてやりたいです。

今週の仕事が鬼畜だっただけですので、少し疲れてしまったのです。
今日ゆっくり休めましたから、大丈夫です。ありがとうございます。

| 緒方 順 | 2010/11/06 21:56 | URL |















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