大日本帝國軍の愛と友情の日々

逓信省の検閲済でありますが、男色趣味満載ですので、苦手な方は華麗なターンでご退却下さい!所謂BL小説サイトです。右側に注意書きがございます。必ずご一読ください

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  綿津見の波の色は・第佰弐拾伍話

赤坂の別宅で過ごす那智と新見は、概ねこのような様子であったが、そこから遡って五日前。ちょうど那智が小松で駄々っ子の如き振る舞いをした日に戻る。

城内が秘書官の山科を伴って、ぶらりと鷲頭邸を訪ねてきた。このところの政局に相反して、珍しく楽しげな様子でいる。

「ちょっと、面白いことを思いついたんだがネ。ひとつ、話に乗ってくれないかなァ」

と切り出したのは、何かとあれば催している、盟友の集いのことだった。なァんだ、そんなことならお手伝いしますよ、と異口同音に言った鷲頭父子へ、城内は茶目の利いた笑みを向ける。

気兼ねなく、ということで集った居間で四人は顔を合わせることになり、そこで城内はとっておきの作戦を披露し始めた―。

「ええッ!なんです、それを…山科さんとぼくが、本当にやるんですか?」

嵩利も山科も、畳から膝ごと飛び上がらせそうなほど驚きながら、眸を丸くして城内を見つめると、満面の笑顔でこっくりと頷き返してきた。

きっと眦を吊り上げて反対するに違いない、と期待をこめて鷲頭へ助けを求める眼差しを向けたが、予想に反した不埒な笑みを浮かべつつ、嵩利の視線を受け止めている。

「ふむ…。いいんじゃないか、たまにはそういう余興も」

ふと、かるく値踏みするような目つきで、端座している伴侶を眺めてから、鷲頭は城内へ軽く頷いてみせる。 それで一切が承諾されたことになり、嵩利は半ば思考を停止させたまま、城内が打ち出した作戦の内容を反芻した。

―それから。

翌日から土曜日―つまり、鷲頭父子が赤坂にある那智の別邸を訪れるまで―、作戦が展開されてゆく。

嵩利は山科と、午後は必ず城内邸で落ちあった。

初日は、訪ねると離れへ通され、程なくして置屋から幾人か芸妓と男衆がやってきた。城内に相談を持ちかけられて、置屋の女将が話に乗ったのだという。大掛かりな支度を前にして、ここまで来てうろたえるのは情けない、と胆を決める。

一方、依頼を請けた芸妓たちも真剣である。居並んだふたりの対照的な印象を崩さぬよう、きっちりと水化粧から芸妓の着付けまで仕上げていった。

嵩利も山科も、ひとことで言えば、容姿端麗である。背から体格から殆ど同じで、元来が華奢なつくりであるから、所謂、女形と同じで違和感がない。最後に島田の鬘で仕上げてみれば、どこからどうみても、みごとな美妓がふたり、そこに立っていた。

見てくれは一先ず合格と相成ったが、本題はここからである。

裾引きに左褄、といった独特の―そもそも女装なのだから当たり前だが―芸妓の所作を覚えねばならない。

しかし、海軍兵学校に入校して、頭左の敬礼から始まる一切の厳しい礼法を覚えこんだ身である。そのつもりになってやれば、三日もあれば身につけられる筈だ、と嵩利は持ち前の負けず嫌いと、感覚の鋭さを発揮していった。

「ウンウン、いいんじゃないかネ。せっかくだから名前をつけなさいヨ」

と、”美妓”の噂を聞きつけてうずうずしていたらしい城内が、前日になって離れへやってきて、穴のあくほど芸妓になり切ったふたりを眺め、無造作にそんなことを言った。

名前とはつまり芸妓のそれである。結局、嵩利は伴侶の鷲頭の名から一文字、”春”の字をもらって、”春千代”。山科は城内の諱から一文字、”光”の字をもらって、”清光”、ということにした。

所作を覚えるついでに、小唄の舞踊をひとつ身につけることになったが、稽古をしていて嵩利の脳裏に浮かぶのは、およそそぐわぬ回想ばかりであった。

明治の終わりから大正の今までの間に、明らかに変わりゆく海軍の空気のこと。抗えぬ流れに歯噛みしつつ足を踏み出さざるを得ない、敬愛する上官たちの苦悩。藤原、城内、那智、鷲頭、新見、浅田、三上、有元、橘田―。

盟友たちが集う、気兼ねのない筈の食事会や祝いの席に於いて、これまではどこかに必ず希望とあかるさが散りばめられていた。それが今や見る影もない。しかも、次の辞令が出たが最後、陸のうえで皆が揃って顔を合わせることは、二度とないかもしれないのだ。

せめて、一時だけでもいいから、心から笑って欲しい、と嵩利はそれのみをおもって、城内の提案したこの作戦を引き受けている。その点では山科も全く同じ心境である。

海軍士官が余興に芸妓の真似事をするなど、全く馬鹿げていると誰もがおもうだろう。しかし、当のふたりは実に真剣だった。

大正二年の秋。続く先には混迷の闇が、隧道のようにぽっかりと口を開けて待っている。

その暗い道へ進むは、もはや言を俟つまでもなく必至である。ならば、余興の上だけでも、行く先の幸を祈念する舞を舞う積もりで、芸妓になり切ってみせよう、と、一種の透き通った心持を抱きながら、”春千代”と”清光”のふたりの美妓は、青海波も美しい揃いの扇を、無心でうち振った。
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| 綿津見の波の色は・121―130話 | 22:01 | comments:2 | trackbacks:0 | TOP↑

COMMENT

不覚にも

「水化粧」で呵々大笑してしまいました。
そういうことかなァと思いながら読み進めましたが、ほんとにやった♪

なにを考えてらっしゃるのか総理大臣閣下は! と思ったのですが、そうですね。
那智閣下の振る舞いを知って、無条件に笑わせてやりたいと思われたのでしょうね。
鷲頭閣下も引き受けたお心は同じでしょう。そうは見えませんが(爆)
イイ男たちです。
ああ、小生もお座敷もって美妓たちを上げたい♪

| misia2009 | 2010/10/28 20:23 | URL |

コメント返信です

ひとつでも心和ませる思いでを、という気持ちでやってみましたが、やりすぎた感も否めません。

おもしろがって城内ならやりかねないかなー、と考えたらこんな案が出てきてしまいました。

鷲頭はただ単に、嵩利の女装が見たかった、というのがほぼ八割を占めています。

| 緒方 順 | 2010/10/29 23:51 | URL |















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