大日本帝國軍の愛と友情の日々

逓信省の検閲済でありますが、男色趣味満載ですので、苦手な方は華麗なターンでご退却下さい!所謂BL小説サイトです。右側に注意書きがございます。必ずご一読ください

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  変わらぬ青空のしたで・第弐拾弐話

 「どうも、眠ってしまわれたようであります」

 恩田がすこしばかり笑んだ顔を困らせて、和胤の横からそっと手を伸ばした。惟之があたまから被った毛布を摘むと少しずらせて、顔を半ばまで覗かせる。

 「おぬしが、誰を抱えているのかわからんと、訊かれたときに面倒だろう」

 「それもそうでありますね。では、お部屋に…」

 恩田と川上とに軽くあたまをさげ、昼時で人影のすくないなか、和胤は上官を抱きかかえながら、目的の部屋へ向かう。そして、途中で幾人かとすれ違うが、恩田の指摘した通り、和胤が抱えている人物が惟之とわかると、却って労わることばをかけてくれさえする。

 部屋に上官を運び、上衣を脱がせて楽な姿勢で寝台に横たえさせた。上衣はきちんと壁に吊り、毛布を取り去ったかわりに、ふとんで包む。何か手落ちがないか、部屋を見渡してから、静かに辞した。

 参謀総長の部屋へ向かいながら、思い返してみれば、今日は大事な事案があるというのに、妙な半日を過ごしてしまったものだな、と和胤は手で口許を隠しつつ苦笑いを漏らす。つい一昨日、杉惟之少将の副官として赴任したばかりなのに、この密度の濃さはどうだろう。

 それに、噂ほど当てにならないというのを、改めて感じた。上官は“陸軍の火薬庫”などという、物騒な人物には見えない。むしろ茶目で愛嬌があり、それでいてどこか妙な人徳を醸し出している。

 おそらく本人は意識していない。だからこそ周囲は、様々な形で擁護や庇護をしてくれるのだろう。そういったものが、個室に上がるまでにすれ違った人々の反応を見て、感じることができた。


 総長の部屋に三人揃って出向き、川上から参謀総長へ一札が手渡される。総長の大城は川上と同じ薩摩人で、かれもいわゆる、“ウドサァ”であった。

 時おりふたりの会話には郷里ことばが混じって、長州人の恩田と和胤には、意味がなんだがわからないこともあった。それでも、かなり突っ込んだ話をしているというのだけは、察した。

 部屋を退いて帰り際、川上はもう、錐のように鋭い面差しではなく、いつもの茫洋とした雰囲気を纏っていた。

 昼行灯と揶揄されているかれの、直接の部下だったこともなく、あまり接点もなかった恩田だったが、今日の上官の一件と相まって、すっかり敬服してしまった。


 ―翌朝。

 参謀本部第一局室長の執務室に、杉惟之の姿はなかった。未だに四階、個室の寝台のうえである。

 「おれァ、いつまでここで引っくり返っちょればええんじゃ。朝っぱら副官だけでなしに、恩田まで押しかけよって。また逃げると踏んで、監視か?」

 ふとんの中から恨めしげに言う声にも張りがなく、顔色も優れない。昨日の会合のあと、川上の提案で軍医長の診察を受け、心身の酷使と過度の酒とで、血液や脳にも負担がかかっていると告げられた。

 「おれが医者嫌いなのを知っちょるくせに、呼んできおって。血は抜かれるわ、注射はされるわ。弱り目に祟り目じゃ。まったく情けない」

 「情けないとおもうなら、しっかり休んで養生なさってください」

 「このひと月、まともに睡眠もとっておられない。そのうえ本部で起居すること半月以上。それで陸軍省との問題を、参謀本部の誰にも相談しないで片をつけたわけですか」

 びしっと言ったのは副官で、恩田はその副官のことばに相槌をうつと、惟之以上の恨めしげな顔で、ふてくされたように言う。

 「しかたなかろう。おれァ陸軍次官でもある。ややこしい立場に立たされちょるんじゃけぇ、そこに転がってくる面倒ごとを、他の連中には投げられんよ」

 これには顔を見合わせて、さすがに二人とも黙るしかなかった。だが上官の、責任感と使命感の強さをこうも目の当たりにしてしまっては、ますますこの部屋から出すわけにはいかない。

 実は昨日出した案件が、議会でにべもなく拒否されてしまったのだ。それを告げれば上官は血相を変え、火の玉のような勢いで飛び出してゆくだろう。そんな状況になってしまった今、軍医長からの“暫くは安静に”という診断結果は、副官たちにとって天佑と言ってもいい。
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