大日本帝國軍の愛と友情の日々

逓信省の検閲済でありますが、男色趣味満載ですので、苦手な方は華麗なターンでご退却下さい!所謂BL小説サイトです。右側に注意書きがございます。必ずご一読ください

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  綿津見の波の色は・第佰弐拾参話

哀しみや苦しみといったものを隠さずさらけ出した新見の姿は、まるで毀れもののようにみえる。疵ひとつ、つけさせるわけにはゆかない、と那智は限りない愛しさを覚えた。口づけを与えると新見はいじらしく応えたし、那智も機に乗じて、やや情熱的に過ぎるそれに徹して、かれを酔わせてしまう。

改めて寝台に組み敷いたが、新見は腕のしたでぴくりとも動かない。

恰も、目もあやな緋と金蘭のなかに、純白の羽毛に包まれた水鳥が憩っている。そんな絵画が描かれているかのように見えた。

真っ白な夏軍装の金釦を外してゆきながら、那智は傷ついた翼を看てやるように、その身を愛撫してゆく。ちょうど昨夜、そうして愛して貰ったと同じように。しかし那智としては、それ以上の想いを籠めていた。

赤く染まった頬へ唇を落としながら、那智は囁きかける。

「暢、おらァな…お前ェさんに背ェ押して貰って、良かったと思ってる。何があっても帰って来てやらァ、って、そう覚悟が出来たンだからな」

「もう、その話は止めてください…!」

悲痛な面持ちで、新見はちいさく叫ぶ。こんな風に激情をみせるのは、滅多にない。今回の人員編成はかれにとって、それ程強い衝撃なのだ。半ば脅しつけて素直になったかと思ったが、新見の心に張った根は、なかなか深そうだった。それでも那智は変わらず、愛児をみるようなやさしい眼差しを新見へ向けて、言葉を継いだ。

「いいや、聞いて貰うぜ、暢。ここに刺さったやつを抜いて、おいらの言うことを…信じて、ちゃァんと帰りを待つ気になるまでは、何度だってな」

「何度言われようとも、私の気持ちは変わりません」

「百戦錬磨のおいらが言ってるンだぜ?…それとも何かィ、海軍随一の提督が旗艦もろとも、海の藻屑になるって、そいつを信じて疑わねぇってのか?」

心に突き刺さると分かっていながら、那智は敢えてこんな問いかけをする。たちまち、痛みに耐えかねる、といった風に眉をしかめてみせ、新見の顔は憂いに満ちているというのに、不思議と一層濃く艶めいて、匂いたつ。

「私は…ただ、私を許せないのです。出るべきでない戦と分かっていながら、鷲頭くんと違い、不戦を訴えることをおざなりにして、碌に流れに逆らいもせず、結局は戦へあなたを遣ることを認めただけです…。こんな私に、源さん、あなたは安心して帰りを待っていろと言う…」

「…じゃァ、何かィ。よくも死地に追いやるような真似しゃァがったな、この碌でなし、ってェ恨み言を言やァ丸く収まるのか、え?そうじゃねェだろうが」

「ええ…収まりはしません。ですが、今日の会議後…私が決裁の判を捺した時点に於いては別です。少なくともあなたには、そう罵倒されるべきでした」

「へぇ、そうかい。あの伏魔殿で暢が、危ねェ橋をどうやって、何度渡ったかってェのを全部知ってる、って言ってもかィ?」

新見の顔を間近に覗いたままで、白軍装の上衣とシャツをはだけさせて現した、琥珀色の肌を指さきで探りはじめた。その妖しく蠢く指が生む甘さのせいか、唐突に告げられた言葉のせいか。新見は低く呻いた後、友禅の絹地をきつく掴んだ。

「予備役編入の城内はどう逆立ちしたって海軍の新鮮な情報は得られねェ。そこでお前ェさんが、極秘に海軍の機密を伝えていたってなァ」

これは露見すれば、即刻軍法会議へかけられる程の重篤な軍規違反である。規律の厳守については、鷲頭とともに並び称される程の、模範的士官である新見が犯した禁―。

「何故おいらが知ってる、ってな面ァしてるな。…言葉も出ねェかィ?これァな、お前ェさんが素直においらの言うことを諾いてりゃァ、知らなかったことにしとく積もりだったンだよ」

「…」

「前代未聞の軍規違反を犯した将官、元将官を生け贄に投げ入れて、海軍、政府、道連れにして巻き込んじまえば、来るだろう下らねェ戦への参戦を、なかったことにできる。…おおかた、極秘にとか言いやがって、城内と企んだンだろう」

「―!」

「どうなんだィ、え?」

貝のように閉ざした口を割らせるなど、朝飯前である。琥珀色の肌へ唇を触れさせ、きつく痕を刻んでゆく。それでいて、撫で回す手つきはひどくやさしい。疼く痛みと甘やかな感触とに耐えられず、新見は身を跳ねさせた。

「あ、ぁ…っ!」

「白状しやがらねェと、もっと酷ェ目に遭わせるからなァ」

仰け反った拍子に喉がひくり、と震えて、那智はすかさずそこへ咬みついた。口腔で、こり、と喉仏が鳴り、苦しげに呻く声が漏れるのを聞く。それを噛み千切りそうな気配すら漂わせているようで、背筋の薄ら寒くなった新見は漸く口を開いた。

「残された道のなかでは、そうするしかなかったんです。それに、城内閣下も―」

擦れきった囁きが、そう告げた。那智は、くっきりと歯型をつけて唇を離し、浮き上がった鎖骨の上へ容赦なく花を咲かせてから、凄味のある笑みを新見へ向けた。

「で、お前ェさんはそんな大それたことを企んで置きながら、自分が許せねェだの、おいらの帰りをしおらしく待てねェだのと、そう抜かしてやがったってェ訳だ」

「げ、源さん…でも、それは―」

「暢、明日の軍務は諦めな。ここまで来ちゃァ、夜通しお前ェさんを鳴かさねェと、おいらも腹ァ治まらねェからよ」

段々と那智の目が据わってくるのを、止める術はもうない。新見は”極秘計画”が一体どこから漏れたのか、目まぐるしく思考を回転させて探ろうとしたが、その思索の時間は、すぐに絶たれることになる。
→【11話】 →目次へ戻る

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| 綿津見の波の色は・121―130話 | 21:49 | comments:4 | trackbacks:0 | TOP↑

COMMENT

だって仕方なかったんだもの…!

なぜ知っている那智大将。「なぜって、那智だからさ…!(不敵な笑み)」

冒頭の雛鳥のような新見局長ににやにやしながら、やはり堪能させていただきました☆ 首相もいろいろ立場とかあるんだよね… 昭和以降の政党後ろ盾と今とじゃ背負ってる意向とか違いますもんね(-_-) こんな城内さんが来年の収賄事件に関わるってんならもう泣いちゃいますよ。鷲頭さんはじめ関係各位には是非無関係でいてほしい!←勝手な希望

「明日の軍務は諦めな」…くはぁっ!!たまんねッス(≧ω≦)b

| kanayano | 2010/10/25 12:36 | URL |

コメント返信です

>来年の収賄事件

ええと、残念ながら現・内閣総理大臣の城内には降りかかります。避けられないですねえ。

堪能していただけたようで、書き手もほっとしております。愛でていただき、ありがとうございます♪

そろそろ、本編に戻ろうと思っています。

| 緒方 順 | 2010/10/25 22:08 | URL |

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

| | 2010/10/27 19:56 | |

コメント返信です

日本を、ひいては海軍を護る為なら官職惜しまず何でもします。

恋も軍務も命がけ。一途な明治のオヤジさんたち。

大正三年は、そんなささやかな幸せすら、全部津波のように攫っていくのでしょう。そして波の引いたあと、また彼らは強かに立ち上がってゆくのでしょう。

ayanoさんの小説は素晴らしいです。愛しくて切なくて哀しくて。

ああ、あの時代も、人はこうして歴史を作ってきたのだなあ、と、しみじみ考えさせて下さる物語を紡いでいらっしゃいます。まったくもって、縁というのはどこからきてどう繋がるかわかりませんね。

当小説も、一時は閉鎖も考えたほど休止していましたが、misiaさんや雪風さん、ayanoさんの御蔭で持ち直すことができました。このところ、じぶんのなかでアクセス数とか、あんまり意味がないです。

共感してくださる方がいるというのは、それだけで幸せです。

| 緒方 順 | 2010/10/27 22:50 | URL |















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