大日本帝國軍の愛と友情の日々

逓信省の検閲済でありますが、男色趣味満載ですので、苦手な方は華麗なターンでご退却下さい!所謂BL小説サイトです。右側に注意書きがございます。必ずご一読ください

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  綿津見の波の色は・第佰弐拾弐話

「源さん…」

門を潜り、それを後ろ手に閉ざすと同時に、新見は俯いたまま那智を呼んだ。前をゆくかれの靴音はとうに止んでいる。新見に背を向けたままで、那智はずっと黙っている。軍務に関することで、女々しく愚痴を吐きたくなかった。それでも…。

「安心しろィ。暢を置いて逝きゃしねェよ」

いつもと変わらぬ声音に、新見はどきりとして顔をあげた。もうこのひとは知っているのだ、自身の前にどのような道が敷かれたかを。本日の時点ではまだ、艦隊、人員編成共に、内容については極秘である。たとえ小峰海相を揺さぶっても知り得ない筈のそれを、新見の顔色だけで察したというのだろうか。

「何てぇ面ァしてやがんでェ。大体なァ、何十年連れ添ってると思ってンだ」

お見通しなんだよ、と言ったその笑顔は颯爽としていながら、限りない愛情も含んでいる。門に背を預けるようにして立ち尽くしたまま、新見は頬に熱があがるのも他所に、那智の貌をまじまじと見つめ返した。

「…こうなることを、いつから、見越していらしたんですか」

「さァな、随分前過ぎて忘れっちまったよ」

と、思い出すのも面倒だと言いたげに吐き捨てる。こういうことに関しては気の短さを遺憾なく発揮させ、まだしょぼくれた様子でいる新見へ詰め寄った。この世で独りきりで居るみてェな面するンじゃねェ、とちいさく叱咤する。

「さ、縁起でもねェ考えを巡らせるのはよしな。今ゴチャゴチャ考えたって、答えは出ねェ。それに、暢が常に最善を尽くしてるってこたァ、おいらが誰より知ってらァ」

互いに一歩進むと、その距離は殆どなくなる。軽く唇を交わしたあと、新見は堪えきれなくなった心情を露わにした。

「海軍省人事局長としての立場から見て、最善の方法としては、それしかなかった。分かっていても、私は、あなたを征かせたくない。よりにもよってこの手で、あなたを―」

「そこまでにしとけ、暢。先刻からおいらの言ってることが、聞こえなかった訳じゃァあンめぇ」

「源さん、でも…」

「でももヘチマもねェんだよ。ったく、世話の焼ける奴だなァ。―ま、ツンケンされるよかァ、可愛がり甲斐のあるだけマシかも知れねェがな」

むんずと手首を掴み取ると、有無を言わさず歩き出す。玄関へは入らず、庭を横切ってゆく。居間も私室も通り越して、離れの部屋へ向かっている。

されるがままにして歩を進めていた新見だったが、その意図に気づいて慌てた。腕を引っ込めようとするのを、那智は振り向きもせず、手に力を籠めるだけで阻止する。

「―それ以上駄々こねたら、どうなるか分かってンだろうな」

気の短い那智が出した最後通牒に、新見はそれ以上逆らうのを止めた。

沓脱ぎ石に辿り着くまでの間に、これから身に降りかかることと、重要な軍務が残っている明日の半日とを、幾度も天秤にかけてみる。自信を持って、絶妙に均衡をとれるとは言い難く、新見は祈るような気持を抱きつつ、那智の手に導かれて、薄闇の支配する寝所へ引き込まれていった。

艶めかしい寝所へ入ったが、那智の態度は存外おちついたものだった。新見を促して隣へ座らせると、掴んでいた手を漸く放す。海軍将官の身形でいるふたりが、妖しげな空間にぽっかりと浮いている。そうやって寝台に並んで腰をおろしている姿は、まことに奇妙なものであった。

「お前ェさんを、そう弱気にさせちまうなんざ、おいらの甲斐性も高が知れてるってェ訳だなァ。…こんなことならやっぱり昨夜、先に手ェ出しとくンだったぜ」

ふん、と鼻を鳴らして言いながら、那智はちらりと隣の新見へ一瞥をくれる。抱いている気持ちを誤解され、途端に新見は慌てた。確かに、弱気と言われれば弱気なのかもしれないが…。

「い、いえ…そんなことは―」

「ふゥん」

頬に滑らせた手で顎先を捉えて、顔を向けるように促す。多分に揺れているまなざしを探るようにたっぷりと見つめてやると、新見の顔が忽ち真っ赤になる。その狼狽ぶりに対して那智は意地悪い笑みを返した。柔術の寝技に転じるときのように、鮮やかな身動きで寝台へ引き倒され、抵抗すら許されない体勢へ持ち込まれる。

「げ、源さん…っ」

「もういい。暢、弁解なンざ要らねェ。わかってンだろ、言葉じゃ慰めにならねェときもあるンだ。…素直になれねェなら、させるまでだが…出来ればそうしたくねェ。譲歩するのは、これが最後だぜ、ン?」

「あ…!」

耳へ唇を触れさせながら囁き、最後にその縁を噛んだ。疼くような感覚がはしり、新見は反射的に声をあげてしまう。しかしそののちは体から力を抜いて、甘えたい、弱音を吐きたい、そんな気持ちを隠さず眼差しに含ませ、那智へ続きを乞う。この暗がりのなかで、新見は漸く心を晒した。
→【10話】 →目次へ戻る

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| 綿津見の波の色は・121―130話 | 20:04 | comments:2 | trackbacks:0 | TOP↑

COMMENT

源さん!源さあーん!!(泣)

なんかもう、あれですね!肉食系男子万歳ですね!(違)
こんなナイスミドルが軍人なんて、中井貴一が連合艦隊出演しちゃう勢いですよね!(そのままやん)

なんかもう、最近は更新の度に正気を失いそうになりますっ(>_<。)
黄海ったって、私たちは結果知ってるから「中国か、よかった~☆」ですけど、新見さんにとっちゃ、さしずめ「日本海海戦を戦った海」近郊ですよ(>_<。)もしかしたらドイツが潜水艦ひっぱってくるかもしれないってのに、自分で人事あてがうなんて辛すぎる~!!
ふええ~°・(ノД`)・°・そんな暢さんを慮る源さんがかっこ良すぎて泣ける!!

あれ、そいえばこの方達ご家族っていらっしゃるんでしたっけ?(ウロ)

| kanayano | 2010/10/23 20:36 | URL |

コメント返信です

那智は来たる大戦に対する政府の態度に不満はあるものの、帝國が取り巻かれている状況などは冷静に把握しています。

参戦は避けられないことも、心の底ではとうに覚悟ができていました。ですが、分かっていても不貞腐れずにはいられなかったし、城内に対して悪態のひとつもつきたかったわけです。

こんな馬鹿らしい戦で命を落としてたまるか、と何があっても生きて帰ってくるという気持ちでいます。なので、新見には自分の気持ちを信じて、待っていて欲しいと思っています。

ふたりには、国許に兄弟はいますが、妻子はいません。

| 緒方 順 | 2010/10/23 21:17 | URL |















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