大日本帝國軍の愛と友情の日々

逓信省の検閲済でありますが、男色趣味満載ですので、苦手な方は華麗なターンでご退却下さい!所謂BL小説サイトです。右側に注意書きがございます。必ずご一読ください

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  綿津見の波の色は・第佰拾漆話

「ン…?おゥ、なンだ、暢か…」

不意に耳元で寝惚けたような声がきこえて、新見は歩みをとめた。鮮やかな夕陽があたりを染めているのに気づいて、那智は顔をほんの少しだけあげる。朝と違ってもうその光からは温もりが失せている。

「その…、何だ。色々と…済まねェな」

いま那智が感じられる温もりは、じぶんと大して変わらぬ広さの、この背にある。負ぶわれているのにも気を払う様子もなく、とん、と頭を肩口におとして頬擦りをしながら、黙っている新見へ甘えかかった。

「おとなしく背負われていてください、もうじき着きますから」

ふぅっ、とゆっくり息を吐いたとき、頭を乗せている肩も動いた。その揺れすら、那智には心地よい。新見の唇から穏やかな声がして、また歩みはじめるのがわかる。

どこまでもこの道が、いつまでもこの時間が続けばいいのに、と那智は柄にもなくそんな考えを浮かべた。きっと酔っているせいだろう、と自嘲気味にわらう。生ぬるい風が頬を撫でて、先ほどよりは意識が浮かびあがっている。

赤坂の家に着くと、既に簡単ながら床を延べていたそこへ、厄介な上官を寝かしつけた。きけば、一昨日もさして飲まぬうちに酔いが回ってしまったとのことで、那智がこういうときは、余り体調―心身とも―が良くない証拠である。

静かな寝息をたてはじめた那智の枕元へ膝をついて、そっと上掛けを胸までひきあげてやりながら、深く労わるようなまなざしで寝顔を見つめた。新見は暫くそうしてから、やっと軍装を解いて着替える。

和服を纏ってから戻ると、那智は目を覚ましていた。半身を起こして、冷えた井戸水を汲んでおいた水差しから、美味そうに一杯飲んでいる。新見を認めると、やおら照れ臭そうにぽりぽりと頭を掻いて、”ま、こっちィ来なよ”と手招いて、自分の傍へ寄ってくるのを待つ。

「暢よゥ、その、おらァな…」

傍らへ膝を落とした新見は、しどろもどろに言葉を継ごうとする那智を見ても、表情を変えなかった。何の色も浮かべずに顔を見合わせていたが、前触れもなしにいきなり両の拳を那智のこめかみにあてがって、力任せにぐいぐいと捻り上げた。酒に酔って鈍い痛みを抱える頭に、これ以上の拷問はない。

「いてててて!おィ、痛ェだろ、やめねェか!」

「今日はこれで、叱言はなしです。このくらい我慢しなさい」

「わァかったよ!おいらが悪かったっ」

赤煉瓦であれだけ不遜な態度を見せていた割には、城内邸からの帰り道をはじめ、随分と殊勝な態度でいる。何か反省するだけのことがあったに違いないと踏んだのだ。漸く手を放すと、涙目になってこめかみをさすっている。新見はその間に膝を進めて、しっかりと那智を抱き取った。

「お、おィ―」

頓狂な声をあげる那智をよそに、新見はぎゅうっと抱きしめてくる。

「源さん、我慢しなくていいですよ、もう…」

囁くような声から、もう先刻まで纏っていた強気なものがなくなっている。絶え間なく流れるせせらぎを思わせるような、深い労わりが含まれている。

”けじめつけた途端、それかョ”と、拍子抜けして呆れてしまったが、那智とてひとのことは言えない。新見に逢いたくてたまらなかった。逢ってこうして抱き合って、労わり合いたかった。

「おいらもずうっと、暢に逢いたかったぜ。あの…伏魔殿みてェな赤煉瓦で、よく切盛りしてきたなァ」

よしよし、と抱き返しながら後ろあたまを撫でてやる。この時勢のなかに於いては、ある意味、艦隊勤務で海に出ている方が、気楽な部分が多々あった。何かの巣窟のような帝都に、新見をポツンと独り置き去りにした、という感覚が那智の中に生まれていたから、かれの許に帰ったらきっと、いの一番に慰めてやろう、と決めていたことだった。

新見はそうして那智に真っ向から労わられて、忽ち胸が熱くなるのを感じた。しかし、先に甘えてよいのは自分ではない、と、ぐっと堪える。会議室で見た、痛みを堪えるような那智のあの表情が忘れられなかった。

「私のことは、あとで慰めてくだされば宜しいです。いいですか、離れないで、ずっと…こうしています。もう、我慢してはいけませんよ。源さんが泣いて喚いて、それを受け止められるのは、私しかいないんですから。今まで離れていた分、思い切り泣きついてください」

さらさらと、やさしい清流のながれるような声が、那智の心に沁みてくる。

―ああ、まったくこいつはよゥ、おいらをこども扱いしゃぁがって。いつからこうなったってンだ、おィ―

「あァ、言われなくたってそうすらァ」

と、照れつつ怒ったように言った那智の声は、半ば堪えきれぬ涙に震えていた。
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| 綿津見の波の色は・111―120話 | 19:09 | comments:2 | trackbacks:0 | TOP↑

COMMENT

幸せいっぱい

お腹いっぱいであります~
私しかいないんですから。ひゃ~~~

…綺麗な手のこめかみグリグリ、痛そう。とっても楽しかったです♪

| misia2009 | 2010/10/19 21:45 | URL |

コメント返信です

春美と嵩利とちがって、このふたりはもうそれはそれは…、素直に気持ちをぶつけ合える人たちですので。

ちょっと次回くらいでこのふたりの話は自重しないと、本編がどっか行きそうなので(爆

またの機会に、書きたいとおもいます。

| 緒方 順 | 2010/10/19 22:14 | URL |















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