大日本帝國軍の愛と友情の日々

逓信省の検閲済でありますが、男色趣味満載ですので、苦手な方は華麗なターンでご退却下さい!所謂BL小説サイトです。右側に注意書きがございます。必ずご一読ください

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  変わらぬ青空のしたで・第弐拾壱話

 この件が収まってほっとしたころに、もう一度振り返って冷静に考えたのち、どうしても胆の虫が治まらないのであれば、惟之をふん捕まえて百叩きでも、何でもすればよいと、川上はおもっている。大枠で見て言えば、今回の惟之の行動は軍規に違反していないし、そもそも、かれの働きはひとりで幾人分の参謀を凌ぐかわからない。

 温厚な川上が、顔を曇らせて苦言を呈せば、恩田と和胤の立つ瀬がない。それを恐れた惟之は長椅子のうえでじっと川上を見上げ、無言で訴える。

 「じゃっどん…、まあ、過ぎてしもたことはよか。ああたは、いま少しばかり眠ってくいやい」

 僅かに不満そうな色を眉間に残していたが、川上は惟之の訴えを酌んでくれた。それでも川上の気持ちがふたりに伝わったらしい。すこし肩をおとしつつ、恩田と和胤が連れ立って部屋をでてゆく。それを見送った川上は立ち上がり、壁際の衣装箪笥から毛布を取り出してくる。それで、長椅子のうえの栗鼠を、暖かいようにくるんでやる。

 「ごねんのいりました」

 それで安心したのか、深く息を吐くと、惟之は少し掠れた声で、郷里ことばを発した。薩摩人に長州人のことばが通じるか、そんなことは意識せず、自然と出てしまったにちがいない。

 芯からの謝意を告げられ、川上は惟之の丸いあたまをそっと撫でて、いつもの執務机へ戻る。微かに、長椅子から寝息がきこえて、それだけだ。何も騒がしい音は入って来ない、いつもの平穏な部屋にもどった。


 暫く経ち、料理の包みをかかえた恩田と和胤が戻ってきた。シチューの小鍋まで持参している。川上のはからいで、少しばかり無理を言って、惟之のために別にこしらえてもらったものばかりであった。

 部屋のなかに、洋食の旨そうな匂いが漂う。長椅子でねむる惟之は起きる気配もなく、身じろぎひとつしないで、深い寝息をたてている。

 「起きてたもんせ、杉サン。腹がへってはユッサができもさん」

 ふたりが食器を揃え、盛り付けているあいだに、川上は長椅子のうえへかがみこんで、毛布に包まれた惟之の肩を掴んで揺すった。

 うう、と呻いて顔を背けるが、起きる気配がない。軍服の襟から覗く首すじに、血管が浮いている。そこから辿って耳の後ろ、それからこめかみにも。疲労が溜まっているのがわかる。

 「杉サン、起きやんせ」

 気の毒だとおもったが、川上はそれでも惟之を起こしにかかった。

 「なんじゃァ…、もちっと寝かせぇやー」

 毛布に顔を埋め、やっとくぐもった声をあげる。それもかなり眠たげで、常時と違って快活さの微塵もない。恩田にしこたま尻を叩かれて、溜まっていた疲労も一緒に表へ叩き出されたかのようだった。そのうえ、大儀そうに起こした上体がゆらゆら揺れている。さすがにこれはだめだと、三人で目くばせし合う。

 惟之に支度されたものはどれも、胃に負担をかけないよう念入りに調理されている。食事中は毛布を傍らに置き、食べ終わるまで行儀の良さは崩れない。

 「ああたは、階上へ行ってぐっすり眠ることです。総長のところへは、ワタシと恩田サンと山口クンとで、ゆきます」

 食事が済んだところで、執務机の向こうから、有無を言わさぬ声が飛んでくる。俄かに惟之の目の色が明瞭になった。目つきが鋭くなり、眠気が掻き消える。

 「待て待て、爺さん。その一札にはおれの署名もある。行くに決まっちょろうが」

 しかしそれでも川上は頑として首をたてにふらない。惟之は長椅子のうえで胡坐をかくと忽ち膨れた。またここで利かん坊になられても困る、と、恩田と和胤がすかさず目の前に立ち塞がる。

 「閣下…、お願いですから」

 「万が一こじれた場合、閣下に動いていただかねばならんと、川上閣下から伺ってます。ここは体を休めてください」

 口調こそ諭すようで、敬語を用いているが、ふたりとも目は脅迫寸前の真剣さである。チョッ、チョッ、と上目遣いで、惟之は交互にふたりを見遣る。くちを尖らせたままでいるが、これ以上の虚勢を張る元気はない。

 「おっかないのう…。わかっちょる、わかっちょる。階上でおとなしく寝ちょるけぇ」

 両手をあげて降参の意を示すと、長椅子から腰をあげるより早く、和胤の腕が伸びて惟之を抱き上げる。

 「お座りになられている間、あんなにふらふらなさっていては、到底階上まで歩かせられません。今度は手荒いことはしませんから」

 部下のことばに照れ切って、鼻のあたまを指さきで擦り、手を伸ばすと素早く毛布を掬い上げ、頭からかぶってしまう。見えないのを幸いに、すっかり体をあずけ、和胤の肩先にあたまを載せてしまう。川上の部屋を出る前に、既に和胤の腕揺り篭のなかで、ぷつんと糸が切れたように、惟之は眠りに落ちる。
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| 変わらぬ青空のしたで・21―30話 | 19:40 | comments:0 | trackbacks:0 | TOP↑

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