大日本帝國軍の愛と友情の日々

逓信省の検閲済でありますが、男色趣味満載ですので、苦手な方は華麗なターンでご退却下さい!所謂BL小説サイトです。右側に注意書きがございます。必ずご一読ください

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  綿津見の波の色は・第佰拾肆話

いっかな通らぬ持論とはいえ、それを鷲頭は完全に棄てなかったし、己が無力だと打ちひしがれもしなかった。悔しさも何もかも愛する伴侶にだけ、時折その心を明かすことで、随分と救われたからだ。

いつかきっと論を唱えることができるはずである、と、一種の祈りめいたものを抱きながら、海軍大学校で教壇に立つ日々を送っている。

領土拡張主義、帝國主義、軍国主義、といったものが主流のなかで、鷲頭が唱える協調論はそれこそ、馬鹿げた夢物語のようなものとしか世には映らなかった。

だが、よく咀嚼し、突き詰めて考えればこれは、人類の底にねむる倫理と良心に訴えかけるものを含んでおり、いつか、戦に明け暮れて疲弊しきった者たちが、結局はとる道になるのではないか、と、嵩利のなかで結論に至っている。

そして、この先どんなことがあろうとも、この鷲頭の論を消させることは誰にもさせない、と固く心に決めた。かれの意志がそのまま、嵩利へ引き継がれて、胸中へ密かに仕舞われたのだった。

こうして、”箱庭”にいて国の守りの為に修練に励んでいても、肌を刺すようないくさの気配が日々高まってい、それが海向こうの支那へ押し寄せつつある、というのを嫌でも感じる。帝都でも、軍部首脳が慌しく動きを見せ始め、大正二年の夏休暇を最後に、安穏と過ごしていた日々は終止符をうった。

秋にさしかかる頃、慌しく第三艦隊も横須賀に帰ってきた。潮に揉まれて逞しくなった男たちを迎える街の空気も、一種異様な熱気を孕んでいて、いよいよ戦か、これで我が帝國も名実共に一等国か、とあちこちの街角で囁く声すら聞こえていた。

「けッ、いい気なもンだなァ、おい。国民にとっちゃ、このきな臭ェのも平気の平左か。なんだ、アレか。吾妻橋から見上げる大川の花火と一緒かィ、えぇ?」

と、各艦隊の司令長官以下、幕僚が集った料亭、”小松”の座敷で、那智は暗にこの時流を嘲ってみたのだが、酔ったうえでの言葉であったから、座に居た者たちは冗談と受け取って笑っていた。

その真意を汲んで内心で冷汗をかいたのは、鞍馬座乗の浅田長官と、筑波艦長の橘田と、香取副長の守本くらいだったであろう。

国防の見直しを計ったうえでの、艦隊再編成だとか銘打ってはいるが、意図は見え透いている。国の存亡にかかわりもしない、火事場泥棒のようないくさになどに、出てゆきたくはない。だが、英国との同盟があるからして、そうもゆかないのが現状なのだ。それに那智自身、日英同盟に附す軍事協定を結びに行った身である。

何も、那智や鷲頭たちだけではなく、海軍に身を置く者は多かれ少なかれ、政略に軍部が利用されていることに矛盾したおもいを抱いている。その性質上、海軍士官というものは外交官の代理でもあるが、儀礼的なものに過ぎない。所謂、抑止力の体現者として、すぐれた勇武と紳士的素養と高い教養とを備えた、軍人としての姿勢を保ってこその、”外交官”なのである。

「―長官、いくら酔ったとはいっても、あんなことは軽々しく言わないでください。冷汗が出ましたよ」

いつの間にか座をするっと抜け出して、姿をくらませた那智を、守本は難なく見出した。何のことはない、三つ四つ離れた空き部屋で、持ち込んだ酒を傾けつつ肘枕をしてごろりと横になっている。

「守本、おい待て。おらァそんな説教は聞きたかねェぞ。そんな、―あいつみてェな口ぶりで、おいらに説教するンじゃねェ」

端正な白い第二種軍装のままでいるのに、寝返りをうって大の字になると、癇癪を起こしたこどものようにして喚く。相当酔っているな、と守本はふとい眉を下げつつ、ため息を漏らす。

「今日ばかりは諾いていただかないと。軽々しく抜け出してよい席ではありませんから…、戻りましょう、長官」

「ああ、こんな所に居たのか。まったく、これでは守本くんも苦労する筈だ。―こら、那智。いい加減にしないか」

温厚でとおっている浅田が珍しく、やや色をなしている。浅田も酒に酔っていて、普段抑えているものが滲み出ているからなのだろう。剣呑な空気が、さっと室内に流れる。

「煩ェやい、おいらに構うンじゃねェ」

「―この、馬鹿やろうッ」

大の字のまま、酒に灼けたどら声を放った那智へ、浅田が怒鳴りつけながら掴みかかっていった。止める間もなかった。というよりも、まさか浅田がそんな挙に出るとは予想もできなかっただけに、制止しようと伸ばした守本の手はむなしく空を切った。

浅田は、餓鬼大将のようにして膨れている那智の胸倉を掴んで引き起こし、睨みつけた。浅田と那智は進級の時期に差こそあれ、あの混沌とした明治初期の海軍兵学校に於いては、ほぼ同期に近い存在である。

「そうして不貞腐れていて、何になる」

「なンにも、なりゃしねェよ」

「帝都で、鷲頭や新見がどんな思いで軍務に就いているか、それを―」

「煩ェ!そンなこたァ百も承知でィ」

こどもの喧嘩のような応酬のあと、浅田は拳に固めた右手を振り上げる。兵学校での鉄拳制裁をおもわせる遠慮のない一撃が、那智の頬を見舞うかにみえた。だが浅田はその拳を震わせたのち、振り下ろして畳に叩きつけた。

「―何でィ、殴らねェのかよ」

「身内で殴り合うなど、それこそ不毛だからね…」

燃えた怒りは刹那のことで、浅田の身から抜けていた。上衣の金釦を千切りそうな勢いで掴んでいた胸元から手を離すと、浅田は大きく息を吐きながら那智の前へ腰をおろした。那智もすっかり毒気を抜かれたようになってい、決まり悪そうに頭を掻く。胡坐をかいたままだったが、ぺこり、と浅田へ頭をさげた。

「…よゥ、おいらが悪かったよ。久しぶりの陸と酒の席で、ちっと気ィ緩め過ぎたンだ。まさか、お前ェさんに叱り飛ばされるたァ、おいらも情けねェなァ」

酒に酔ったとはいえ、内輪もめの、それも下手をすればとっ組み合いの喧嘩に発展するところであった。海軍将官が、天下の料亭”小松”でそんな真似をすればどうなるか、火を見るよりあきらかである。

軍縮派の盟友たちは、皆どこか気分がささくれ立っている。

こんなとき新見が傍に居れば、那智もこれほど荒れはしなかったのだろうか。それとも、帝都で嵐の渦中にいる新見を思えばこそ、こうも荒れたのか、と、両者の仲裁に入るべく身構えていた体のちからを抜きながら、守本はふたりの長官を労わるようにみつめた。
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| 綿津見の波の色は・111―120話 | 19:52 | comments:2 | trackbacks:0 | TOP↑

COMMENT

待ちきれなくてやはり携帯から。

…行きたくないですよねぇ(>_<。)一番行きたくないのは、不毛と分かってて前線に立たなきゃなんない、那智や浅田さんのような立場のみなさんなのだと思います。


ううう~っ みなさん無事で帰ってきてくれ~!

そして新見~!!どこいってんだよ!那智さんがかわいらしいことになってんぞ!!(違)この二人の絡みも見てみたいな~とにやにやします\(^o^)/

| kanayano | 2010/10/18 20:22 | URL |

コメント返信です

どっこい。

那智はもう艦隊司令長官を、こま切れですが二年も務めているので、放免でぃす。

浅田と橘田は、黄海の護衛艦隊あたりに就くとおもいますが、死傷者を出した地中海には行きません。

死なせるもんか~いっ。

ついったーに予告しましたが、次回、那智×新見を書きますとも!

| 緒方 順 | 2010/10/18 21:16 | URL |















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