大日本帝國軍の愛と友情の日々

逓信省の検閲済でありますが、男色趣味満載ですので、苦手な方は華麗なターンでご退却下さい!所謂BL小説サイトです。右側に注意書きがございます。必ずご一読ください

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  綿津見の波の色は・第佰拾参話

寝具のなかで鷲頭は仔犬のようにからだを丸めて、嵩利の腕に抱かれながらねむっている。静かな寝息をたてている穏やかな寝顔に、嵩利は幾らか安堵をおぼえながらその頬へ唇をおとした。

只の愚痴だと言ったときの、悔しげな鷲頭の表情を思い返す。海軍内で一時は盛んに議論されたあの論文も、この時勢のなかで忘れられようとしている。波に洗われれば消えてしまう、砂に描いた絵のように扱われている。

陸軍でも、軍縮を唱える者は少数派に過ぎず、今や支那へ向ける熱意は只ならぬものになっているという。しかも海軍が先に、軍拡―艦隊増設を唱えて推進しているものだから、いくらあとになって鷲頭が軍縮の声をあげても、実際にその必要性を説く論文を記してみても、海軍内ではいざ知らず、陸軍の抑止にまでは成り得なかった。

これが逆であれば、まだ通ったかもしれないが、今となってはむなしい繰り言でしかない。欧州の情勢が不安定になればなるほど、政府と軍部は絶えず飢えた眼を動かして、そちこちに狙いをつけている。かつての北清事変よりも獰猛な姿勢であることは否めない。

政府の決定によって、軍は動かねばならない。避けられぬ過酷な航路へ舵を向けねばならぬときが、もうすぐそこまで来ているような気がする。若し、欧州の戦に我が帝國が出張ってゆくことになるとすれば、それはまるで奮い立たぬ、嫌ないくさになるのは明白で、嵩利は戦いに赴くについて考えたとき、これほど暗く澱んだ気持ちになったことはなかった。

きっと、鷲頭も同じ気持ちを抱いているに違いない。


考えを巡らせているあいだも、嵩利はずっと鷲頭の髪を撫でていた。ふっと眠りの縁に浮きあがって目を覚ました鷲頭は、やわらかな指さきの動きに擽られるまま、心地よい気分でいたが、すぐ傍にある嵩利の顔を目にして、ほろ苦く笑みを浮かべた。

鷲頭の”愚痴”はこのような状況に取り巻かれては、文字通り只の”愚痴”でしかない。だのに嵩利は鷲頭のことばを真剣に受け取り、真剣に考えてくれているようだった。それは嬉しいが、幾ら考えても何か光明の見出せる問題では、もはやないのだ。

むなしくなる一方でしかないのなら、他に進むべき道を模索し、そちらへ舵を向ける努力をした方がよい。そう、例えば今ならば、海軍大学校での教育がそのひとつである。

ちらりと見上げて目にしたが、嵩利はまったく眠気の浮いていない顔でいる。しかもその表情は暗い。鷲頭が目を覚ましたことに嵩利はまだ気づいていない。こうも暖かな床のなかで、鷲頭は遠慮なくかれのしなやかな肢体を肌に感じているというのに、当の嵩利は心細げで、暗い眼をして、独りきりで沈んでいるとは。

怪しからんな、と心中で呟き、鷲頭を受け止めているその懐の、寝衣の隙へ手を差し入れてゆっくりと探る。肌へ触れる指さきには既に、滴る程の欲を絡めている。未だちいさくやわらかな胸の頂を捕らえ、きゅ、と抓りあげて弄ぶ。

「う…ぁっ…」

思考が遊離しているところへ不意討ちを掛けられ、剥き出しになっている無防備な感覚はあえなく蹂躙される。嵩利のからだは鷲頭の思惑通り、まるで初夜の褥で初めて男に肌をゆるす稚児のような敏感さで、びくん、とからだを震わせた。

考えに耽り、まるで水底のような静けさでいたものを掻き乱され、嵩利は千々に散って消えゆくもの―暗く鬱屈としたおもい―を惜しいとは思わなかった。寧ろその暗いものから引き戻してくれたことに、ほっとしていた。が―。

「あ…、は…ぁ」

おとなしく胸元へあずけていた穏やかな寝顔は、どこにもない。寝衣の襟を掴みとって暴き、肌へその隆い鼻先を埋めている。凝り固まらせた胸の頂に、薄くたてた口髭が触れるのがわかる。鋭敏なそこへ、さり、と髭が擦れるだけで、嵩利は肌をふるわせる。

やがて唇へ含んだそれを、摘み取った貴重な果実を味わうようにして、舌先でかたちを確かめながら幾度も愛撫する。そうしながら、もうひとつの頂に生る実にも触れ、その熟れ具合を確かめることも忘れない。

「だ、め…、今夜は、襲わないって、言ったのに…」

濡れた音をたてて、食していた実から唇を離すと、鷲頭は顔をあげて笑みを浮かべる。狡さと甘さを含んだ眼を、枕へぐったりと頭を預けたまま嵩利は恨めしげに見返す。不意討ちはまずまずの成功を収めたと言ってよいだろう。

「そうだな…、確かに言った。だが、いまはもう翌日だぞ」

柱にかかる時計を眼で示して言う。精緻な透かしのはいった真鍮の針が、室内にひとつだけ灯るランプの光を弾いて、鈍く輝いている。確かに針は、午前零時を過ぎたところをさしている。日付を考えれば、確かに翌日である。ここまで来ると屁理屈も立派な作戦と言わざるを得ない。

だが、鷲頭は表情を改めて、思いのほか真剣なまなざしで嵩利を見つめる。

「―あんな暗い表情をさせたままで、きみを眠りに就かせるわけにはいかん。…私の戯れ言を気にしていたのだろう。きみの姿勢は嬉しくおもうが、あれらはもう、どうにもならんのだから、考えずとも宜しい。一緒に探せば新しい道など、幾らでも見つかる」

新しい道。その言葉をそっと呟いてみると、胸にざわついていたものが消えていくのを感じる。鷲頭をみつめ返すと、嵩利は参りました、というように弱々しい笑みを浮かべて降参した。この夜のなかに鷲頭と居て、ひとりで暗い澱みに陥る必要などないのだ。

「仕舞いまでは…駄目ですよ。ほんの少し、だけに、して…」

「わかっている。そのまま、眠ってしまえる程度に、な」

それから。強襲をかけてきたときのような、情欲に粘りつく愛撫はぴたりと止んだ。嵩利は鷲頭にからだを預けながら、温かく大きな掌が絶えず肌を撫でてゆくのを、まどろみと満ち足りた気持ちのなかで味わっていた。

それは、春の陽にあたたまった、遠浅の海辺の波間に身を委ねて、たゆとうのと似ている。互いの温もりのなかで、溶け合うような愛撫を交わしながら、ふたりは共に眠りへおちていった。
→【8章・1話】 →目次へ戻る

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| 綿津見の波の色は・111―120話 | 15:28 | comments:2 | trackbacks:0 | TOP↑

COMMENT

NoTitle

ひいやああ(/////)

もう!鷲頭さんのイジワルです!今夜は襲わないって言ったのに~

「もう翌日だぞ」

 なんかもう嬉しいやら悲しいやらドキドキするやら、つまりやっぱりごちそうさまでした!!(興奮)


「新しい道を探そう」そう心から言ってくれる人がいる嵩利はとても心強い気持ちになったのだと思います。ああもう、前回の鷲頭談を書けて、今回はこんな甘甘で、それをどっちも書けてしまう緒方さんスゴすぎる!!

| kanayano | 2010/10/17 16:03 | URL |

コメント返信です

いえいえ、こちらこそ。おそまつさまでした。

更新早々読みに来てくださって嬉しいです♪

きっぱり、新しい方法でがんばらせる道へ背を押してみました。

前回のは、じぶんが歴史を振り返った上での愚痴も混ざってます。ええ。鷲頭に代弁させちゃいました。

軍人はどう転んでも軍人ですから、最善を尽くせるようにしてあげないと不憫だなと思いまして。

このあと、シーメンス事件、第一次大戦、南洋進出、パリ講和条約、戦艦陸奥及び長門竣工、ワシントン軍縮、と続きますので、できるだけ本人たちの納得できるような仕事をさせてやりたいです。

| 緒方 順 | 2010/10/17 16:34 | URL |















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