大日本帝國軍の愛と友情の日々

逓信省の検閲済でありますが、男色趣味満載ですので、苦手な方は華麗なターンでご退却下さい!所謂BL小説サイトです。右側に注意書きがございます。必ずご一読ください

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  綿津見の波の色は・第佰拾壱話

大学校から帰宅して、ひとたび家の門を潜れば、外でくっつけていた、”スマート第一、海軍士官”のうわべをかなぐり捨ててしまう。居間に腰を落ち着けるなり、脚を投げ出して座りこみ、眠たげに瞼を擦りながら盛大に欠伸をする。

奥の襖が開いて、とみが割烹着すがたのまま出て来て、ちょうどその欠伸を目撃した。

「あらあら、お帰りなさいませ、坊ちゃん」

「ただいま、おとみさん」

屈託のない態度で返事を寄越す嵩利が、かつて千早家で甘えん坊として名を馳せていたことをとみは知らないが、長年城内家に仕えるかの女から見れば、こういった無邪気な態度を見せる嵩利が可愛くて仕方がないらしい。たとえ相手が海軍中佐であっても、ついつい”坊ちゃん”と呼んでしまう。

「お八つに、大学芋をこしらえましょうか」

「ウン、お願いします。美味そうだなァ」

東京帝國大学の前で、三河屋という店が出している菓子なのだという。最近学生の間で美味と評判で、ずいぶん流行しているらしい。このところ、築地と青山の間しか往復していない。流行り廃りにいまひとつ疎いのは、職業柄というところか。

午睡をとるからと言って自室へゆくと、もう床が延べてあり、寝衣まで支度してある。居間で出された茶を啜っている間に済ませてくれたのだろう。無論、この位のことは毎日自分でやっている。海軍士官は誰しもが海軍兵学校で、身の回りのことは何でもひとりで、きちんと済ませられるよう躾けられてきたのだから。

それでも、とみのこういった気遣いはいたく身に沁みる。藤原家からはタエ、城内家からはとみいうふたりの家政婦が交互に面倒をみに来てくれるのだが、ふたりとも実に濃やかに気遣ってくれる。

脱いだ軍服を綺麗に衣紋へ吊って、浴衣を着るなり、干したてのふとんへ潜りこむ。枕へ顔を半ば埋めて、ものの数分も経たぬうちに寝息をたてる。


嵩利が青山の自宅で心地よい午睡におちているころ。

鷲頭はまだ築地の海軍大学校に居る。今日は呉から造船科の将校が招かれ、その講演を聴いている。英国で研究してきたという弩級戦艦から得た構想と、将来我が帝國が保有する艦艇についてが、主だった内容である。

やはり海軍上層部は、途方もない規模の艦隊を保有する腹積もりでいるらしい。建造計画を追ってゆけば、遠からず海軍軍事予算は、国家予算の三割にも上る計算になる。何処からどうやってその費用を捻出する積もりなのか。机上の空論でしかない。実に馬鹿馬鹿しい。

これらの与太話を、帰ったら聞かせてやろう。と、講演の終わりしなに漸く鷲頭の脳裏に嵩利の顔がうかぶ。

明日は抜き打ちの試験があるから、夜はその問題作りに没頭していて、鷲頭の相手をしてくれるとは到底思えない。だが、この講演に出席したことで、少なくとも部屋を訪ねるについて、正当な口実が得られたと言えよう。

まさか海軍大学校の校長が、このような不埒な考えを頭上に浮かべているとは思うまい。講堂からさっさと出てゆき、校長室へ戻るなり身支度を整えて帰宅する。

しんと静まりかえった邸内の空気は、けして冷たいものではない。ここには穏やかさと一抹の甘さとが満ちている。鷲頭が帰るすこし前に、家政婦のとみは藤原邸へ戻ったようだった。台所を覗くと、夕食の支度がすっかり済んでいた。

「―あ、お帰りなさい」

寝起きの第一声のような声音に振り向いてみれば、綿入りの羽織を着込んだ嵩利が、まだ眠たげに瞼をしばたたかせつつ廊下のむこうから歩いてくる。寝不足のうえに四つも講義を受け持ったのが、余程堪えたらしい。

夜は課題作りですから、午睡をとったところです、と、やや非難めいたまなざしを鷲頭へ向けつつ言って、先んじて牽制してくる。昨晩、羞恥の極みに漬けこんだことを拗ねているのか、純粋に軍務に対して真剣な故なのか、おそらく両方だろうが、つんとした態度をとる嵩利を手懐けるのも、鷲頭にとっては楽しみのひとつである。

「そう、冷たくしてくれるな」

触れたくて、つと伸ばした手は案の定、ぴしゃりと甲を叩かれた。形のよい眉を吊り上げ、据わった半眼で見あげて暫し睨めつけてくる。寝衣の襟まわりから覗く首すじに、昨晩咲かせた花弁が見え隠れしていて、ひどくそそられる。

睨みつけたその眼が、反省のいろを見せるどころか、妖しげな色を浮かべたのを、嵩利は敏感に読み取った。呆れるというほかない。その横面を張り飛ばすように、きっぱりと声をあげる。

「駄目と言ったら駄目です。今日は大事な軍務が残っているんですから」

こんなことを言っても、まず効き目はない。或る程度の時刻を過ぎれば、なにくれと注文をつけるかして、務めを早く終わらせろと部屋へせっつきに来るに決まっている。ここは心を鬼にして防衛に徹しなければ。
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| 綿津見の波の色は・111―120話 | 21:04 | comments:2 | trackbacks:0 | TOP↑

COMMENT

専守防衛…www

綿入り半纏、かわいい~~!!
校長、魅力全開~~!!
忸怩としていた頃もまた男らしく悩むお顔が素敵でしたが、やっぱりこういう助平親父厳しい顔の下に炎が燃えてるのが、それこそそそられます~。
防衛なるか。

| misia2009 | 2010/10/15 11:02 | URL |

コメント返信です

助平親父。うん、そうですね。
嵩利の前だと、もうそれしかないです。

海軍の隠語で”ダブル平”という言葉があります。答え:”呑ン平”か”助平”もしくはその両方しかいない、というのが専ら海軍士官だというのが、細君や芸妓の主張だそうです。

| 緒方 順 | 2010/10/15 20:33 | URL |















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