大日本帝國軍の愛と友情の日々

逓信省の検閲済でありますが、男色趣味満載ですので、苦手な方は華麗なターンでご退却下さい!所謂BL小説サイトです。右側に注意書きがございます。必ずご一読ください

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  綿津見の波の色は・第佰捌話

勉学に追われつつも、それが苦しいとは思わなかった。朝から夕、時には夜まで日々進歩する技術と戦術を学ぶにつれ、外国と比肩する誇りある帝國海軍として起たねばならぬという、使命感が激しくかきたてられもしている。

随分と昔の少尉になりたてのころはそれこそ、毎日のように抱いていた燃えるような心を、再び胸に抱くこととなって鷲頭は、一種のときめきのようなものを覚えている。

深沈とした叡智を湛え、大鑑の如き重々しさを以って構えていた、将官然とした態度がどこか解れているように思えた。嵩利はそうした鷲頭に接していると、その若き頃を偲ばせるに充分なものを感じ取って、かれの背に熱いまなざしを向けることもしばしばであった。

海軍大学校での日々は平穏且つ、飛ぶように過ぎていった。季節が一巡し、その間憂慮すべき事態が起きなかったかと言えば、そうではなかった。

明けて大正二年の一月末あたりから所謂、大正政変が起こり、陸軍と政府の、旧長州閥に対する不満が爆発した。特に陸軍が政治に絡んでいることが災いし、軍部に対してまで飛び火した。

海軍はこの件について、とばっちりを食ったも同然であったが、何処からも文句を出させなかった。

混乱に陥った政権は、現政府が倒れたあとも暫く不穏な空気が消えなかったが、やおら、無造作に海軍大将の座を予備役へ投げ込んで、”軍人政治に関与すべからず”という原則を遵守し、無位無冠の身となって首相の座に立ったのは城内であった。

軍部大臣就任は現役武官に限る、という制定も予備後備を含めるといった方針を掲げ、国民へ理解を求めることで、ひとまずの落ち着きを取り戻すことができた。

「うん、まあ、どうと言うことはない。こういうとき国のお役に立ってこそ、年の功だからネ」

さすがに心配して鷲頭、新見、嵩利といった面々は休日に軍服を脱いで、私的に訪ねていったが、城内自身は至って泰然としてい、いつもの、けろッとした顔でいる。藤原や城内といったような、いざとなると胆が据わって臆せず道理を通せる人物が、目に見えて減ってきたな、と何かの巣窟のようになっている政界を想像して、鷲頭は複雑な気持ちになった。

「大学校での評判は聞いている。若いきみたちには海軍の将来の為に、確り励んでもらわないと困るヨ」

滅多に説教めいたことは言わないのに、今日に限ってこんなことを説いたのには、城内も城内なりに感じるものがあるからだろう。表情こそ温和だったが、これから圧し掛かってくる首相の責務を、覚悟しているのを感じ取れた。

「それに、今のぼくには優秀な秘書官が居るからネ」

と、急に茶目の効いた笑みを浮かべて、誰やらを書生に呼びに行かせる。鷲頭たちが訝しげにしているところへ、山科が姿を現した。政治に関わる以上、きっぱりと海軍から身を退いており、今は内閣総理大臣の秘書官として敏腕を振るっているらしい。

「でも、ぼくが首相を辞めたら、山科くんはチャンと海軍へ戻るって約束しているんだ。新しい時代には、かれのような逸材が必要だからネ」

かつての事件で、暫くは良心の呵責から抜け出せずにいたが、いまは見違えるような穏やかさを漂わせている。誠実さとが垣間見え、すっかり本来の気質を取り戻していた。鷲頭と山科がかつて想いを交換しあった仲である、というのを事件が露見した際に聞かされていたから、嵩利はどこか儚げな雰囲気を持つ山科の秀麗な貌を、まともに見られなかった。

仮にも内閣総理大臣の私邸へ、碌に予定の打診もせず、前日の夜に連絡をひとつ寄越しただけで押しかけて来た一行に対し、城内は普段と変わらぬ態度でいる。

「たまには夕食くらい一緒にどうだネ。それまで、ゆっくりして行くといい」

にこにこと温顔を笑ませて言って、政務が残っていることを匂わせずに、さりげなく席を外した。

二月の突き刺すような寒気に洗われ、褪めたような色の蒼穹に、紅梅が映えている。微風がそよぐとおもいのほか強い香が匂やかに漂ってくる。桜と違って噎せるようなその香に、庭に出て梅の樹を見上げていた嵩利は、僅かに眉を顰めて息をつめた。

「梅の香は嫌いかい?」

不意に、静かな声が後ろで問いかける。吃驚して勢いよく振り向くとそこには、ほっそりとした柳のような立ち姿をみせる山科がいた。嵩利はかれと対峙して、急に胸がざわつくのを感じた。ちりちりと痺れるようなものが指先にはしり、心臓が掴まれでもしたように胸が軋む。その癖に、拍動はたかい。

「香りが強くて…。ぼくは、桜のほうが好きです」

うまく笑顔が作れたとはとても言えない。それは自分がよくわかっている。

「…初めて、眼を合わせてくれたね」

憂いを含んだ笑みを向けてくる山科の言葉を、嵩利は後ろめたく思いつつ聞いた。

あの件については、もう当事者たちの中でそれぞれ決着がついており、嵩利と山科の間で確執が生じるなど、あり得ない事だった。

嵩利自身も、そのようなことにかかずらっているほど、時間を無駄にできる立場になかったし、何より鷲頭との時間を大切に過ごしたいと思っているから、もう些細な過去の問題でしかなくなっている。

山科を避けるようにしているのは、寧ろ過去に鷲頭と絆を持っていたということについてであり、浜育ちの腕白小僧である嵩利と、秀麗な面持ちで、守ってやりたくなる儚げな印象を持つ山科とでは、まるで正反対ではないか。

こうして対峙していると、鷲頭が山科に惹かれるというのは、充分過ぎるほど納得できる。抱かなくてもいい嫉妬が胸中を占めているについて、嵩利は恥ずかしくて仕方がない。

「ぼ、ぼくは、別に…そういうつもりでは―」

「私はここの梅が特に好きでね、一寸特別なんだ。…鷲頭校長は、桜がとてもお好きだよ。きみと同じにね」

耳まで赤くして、弁解をしようとする嵩利の心中を察し、山科は先刻までと違う、安堵の笑顔を綻ばせて去っていった。
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| 綿津見の波の色は・101―110話 | 18:15 | comments:0 | trackbacks:0 | TOP↑

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