大日本帝國軍の愛と友情の日々

逓信省の検閲済でありますが、男色趣味満載ですので、苦手な方は華麗なターンでご退却下さい!所謂BL小説サイトです。右側に注意書きがございます。必ずご一読ください

PREV | PAGE-SELECT | NEXT

≫ EDIT

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。


web拍手 by FC2

| スポンサー広告 | --:-- | comments(-) | trackbacks(-) | TOP↑

≫ EDIT

  綿津見の波の色は・第佰陸話

例年よりも短い梅雨が明けたころ、宮中侍従武官である藤原の表情がとみに暗く落ち込んでいる、ということを、鷲頭家の世話もしてくれている藤原邸家政婦のタエが、いたく心配のいろを見せて零していった。

それからひと月も経たぬうちに、お上がご不例である、という報が大八州を駆け抜けた。

陸上勤務の海軍士官はこぞって天機を奉伺する為、宮城へと急いだ。お上の病状も何も、詳しいことが長く伏せられていたことがわかり、臣民あげての平癒の願いもむなしく、遂に崩御された。

明治の御世が終わりを告げたことの衝撃は、小さいものではなかった。

日本は、たとえようもなく大きな支えである”父”を喪った悲しみを湛えたまま、年号は改元され、大正となる。諒闇にはいり、粛々とした空気のなかで暑い夏を越すこととなった。

冬に感じた嫌な、不穏な予感めいたものは、もしかしたらこのことだったのかと、嵩利はひどく暗い気持ちで振り返った。大葬の礼へ参じて、桃山の御陵へむかう葬列を最敬礼で見送る間に、堪えきれぬ涙がひと筋、頬を零れ落ちていった。

宮城の広場には陸海軍の士官が大勢詰めかけてい、そこには海上からとんぼ返りしてきた艦隊勤務の士官もいて、那智も城内も、この場に集まっていた。示し合わせておいた場所へ戻ると、馴染みの盟友たちが顔を揃えている。

静養の甲斐あって健康を取り戻した橘田も、折角良くなった顔色を翳らせているが、多かれ少なかれ、みながそのような面持ちであった。しかしそうしていても、国を守る者として軍務は途切れることはない。言葉少なに別れを告げ、またそれぞれの任務へ戻ってゆく。


―諒闇のなかでも例外なく、鷲頭は今日も赤煉瓦の軍務局、局長執務室で職務をこなしている。

別段、常時と変わりないと当人はおもっているが、必ずしもそうではないらしい。ごく親しい者しか気づくことはないが、その違いを指摘するほど無粋な輩は、鷲頭の友にはいない。

しかし、海軍省人事局長の新見は、那智の艦隊勤務でふたたび海と陸とに別れている己の身を顧みて、今朝食堂で鷲頭と顔を合わせたとき、ちらりと羨望のまなざしを向けずにいられなかった。いつもの仏頂面で食卓についていたが、その身に漂うものが全く穏やかで満たされているのがわかったからだ。

鷲頭は自邸に帰ると、嵩利と寄り添って時を過ごしながら、こんなときに独りでいるというのは、あまりよいことではないのだな、と新見の憂鬱そうな顔を思い返した。

夏が足音を忍ばせるようにして去ってゆき、大正元年の秋が訪れる。

中将への進級という通達を受け取って、鷲頭は漸く俯きがちだった顔をあげた。正装を纏って宮城へ赴き、お上に伺候してお言葉を賜る。お上は幼少の砌よりお身体の強いほうでなかったが、乗馬を能くし、青年から壮年になられるにつれ、周囲が案じていた虚弱さは薄れていった。

それに、なかなか気さくで諧謔味のある、飄々とした風格も漂わせておられ、ある意味で先帝よりも余程親しみを覚え、それ故に尊崇の念も湧いた。鷲頭は宮城から帰る道すがら、いつまでも沈んでばかりいられぬと、己を叱咤したのだった。

その後、藤原家からささやかな祝いの席を、と内々に招かれて嵩利と一緒に訪ねていくと、そこに新見と有元も顔を揃えていた。ふたりとも鷲頭と同じくして中将へ進級してい、有元は”ご苦労、喫みなさい”と、お上のお手から直に賜ったという煙草を持参してい、それを惜しげもなく美味そうに喫んでいる。

「今上は、今上であらせられる」

と、滅多に他人を批判したことのない藤原が、やや憤慨したように語り始めたのは、お上を蔑ろにするような態度をとる、陸海軍の古老たちのことだった。先帝と比較するなど怪しからんというのも、元来強くないお身体のことを案じこそすれ、侮ってみるとは怪しからんというのも、一々頷ける話である。

こういった怪しからぬ風潮が軍の重鎮を透して、軍部全体に浸透してしまうことを、極度に警戒している、と藤原は言った。

藤原自身もそろそろ、”陸海軍の古老”に含まれる年齢であったが、まるで鎌倉時代の御家人郎党のようにしてお上に接している。時に厳しくお諌めすることも厭わなかったし、忠心を誓う老僕として仕えていく志はこの先も枉げることはない。

大正へ改元されたが、暗い道程へ進み続けているような不安がそこかしこに漂っている。祝いの席であったが、座の空気は重々しく、喜ばしいという雰囲気には仕舞いまでならなかった。
→【18話】 →目次へ戻る


web拍手 by FC2

| 綿津見の波の色は・101―110話 | 12:00 | comments:0 | trackbacks:0 | TOP↑

COMMENT















非公開コメント

TRACKBACK URL

http://landofrisingsun.blog66.fc2.com/tb.php/251-70b93ae3

TRACKBACK

PREV | PAGE-SELECT | NEXT

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。