大日本帝國軍の愛と友情の日々

逓信省の検閲済でありますが、男色趣味満載ですので、苦手な方は華麗なターンでご退却下さい!所謂BL小説サイトです。右側に注意書きがございます。必ずご一読ください

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  変わらぬ青空のしたで・第弐拾話

 「それは、難しいですね」

 和胤はわざと返事を濁し、少しだけ首を傾げて、考え込むような表情をしてみせた。その途端、またあの、痛まなくてもよい胸が痛む眼差しで見つめられる。今度はさすがに胸が痛んだ。咳払いをひとつしてから、生真面目な顔で上官を見つめ、言った。

 「正直に言えば、お部屋にいらっしゃらなかったのをみたとき、呆れ返って、明日にでも転属願を提出しようとおもっていました。ですが、それはやめます。自分は閣下を信じたくあります」

 「山口…」

 惟之はことばに詰まって、ただ黙って副官の顔を見つめた。その眼に見つめられれば、充分だった。あまりに見つめられるものだから、和胤はそのうち照れくさくなって、膝に抱えた書類の綴じが気になる振りをして、視線をおとした。

 「こがなええ嫁さん貰ったんじゃけぇ、これからは大事にしちゃりさえ」

 やれやれ、とその様子を見かねた恩田が、惟之へ諭すことばを掛けるのと同時に、扉が少し開いて、心配そうな川上の温顔が覗いた。

 「よかよか、てげてげにしもしたな」

 部屋に居る三人を眺め渡すと、ほっとした表情で扉から大兵の身を滑り込ませる。卓を挟んだ、空いている長椅子に歩み寄ると、どすん、と腰をおろした。

 恩田はこのとき、膝のうえへ横向きに惟之をのせ、力の入らぬ体を支えるために背へ腕を回して支えてやっていた。しかし、さすがに川上少将の前でこの姿勢は宜しくないとおもい、惟之をひとりで座らせようと慌てて立ち上がりかける。両脇の下あたりに手を添え、上官をほぼ宙ぶらりんにしたところで、川上は手を振って恩田の挙動を制止する。

 「ああ、そっとしておいてあげらんや。…おはんら、気も済んだとこで、こいを見やんせ。杉サンは、おいのとこいへ、遊びに来たわけではなか」

 それならばと、恩田は再び同じように惟之を膝に座らせ、楽な姿勢を保たせると、神妙にしつつ川上のことばを聞いた。その途端、はっと顔をあげて表情を強張らせる惟之を、川上は思いのほか鋭い眼で制した。何か言いたげに唇を開きかけたが、心身共に疲れ切っているのもあり、さすがの惟之もそれで黙った。

 ゆったりとした手つきで懐から一札を取り出すと、卓のうえへそっと広げて置く。

 それには、甲案を持って迅速に事態解決へ向かうべく、満州の状況と、現在の兵力と予算とを具に照らし合わせた結果が、淡々としたためてあり、乙案を脇差程度に添えて言上する、という旨が、少しの無駄もない黒々とした筆はこびで、紙上にしたためてあった。

 そして最後には、墨痕鮮やかに

 大日本帝國陸軍少将 川上宏信忠柾

 大日本帝國陸軍少将 杉惟之真貫

 と、普段使われることのない諱までが、花押と共に記されている。それを見ただけで、恩田と和胤は息をのんだ。ふたりの決意がいかに固いものか、思い知らされたからだ。

 「―こいを、午後一番に参謀総長のとこいへ、持って行きもそ。そいあとは総長に、議会を説得してもらうしかなか」

 そのあと、万が一にでもこじれた場合は、どうにかして納得させる胆を決めている、と川上はつけたした。おもむろに、その福福しい大黒様のような腹のあたりを撫で、僅かにからだを揺すった。

 「そいから、おはんら。食堂へ行って昼食を持ってきやんせ。いくら何でも、杉サンをそんなになるまでこらしめることはありもさん」

 痛ましげな顔で言われて見れば、惟之は、恩田の胸にあたまをつけてぐったりしている。半ば瞼を閉じかけ、それでも川上のことばに顔をあげると、苦笑いを漏らしてくびを横に振った。

 「川上さん、おれの自業自得じゃけぇ、部下にそない、けんつくせんといてつかされ」

 小声でいう上官を、恩田は立ち上がりざまにそっと抱き上げて、長椅子に横たえさせる。

 思い返してみれば、今の今まで上官はまともにねむっていないどころか、ひとより倍ちかく知力と体力を消耗している。そんな状況でいたかれを、頭に血がのぼってしまった恩田と和胤は、躊躇もせずに所謂、“百叩きの刑”に処してしまったわけで…。
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