大日本帝國軍の愛と友情の日々

逓信省の検閲済でありますが、男色趣味満載ですので、苦手な方は華麗なターンでご退却下さい!所謂BL小説サイトです。右側に注意書きがございます。必ずご一読ください

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  綿津見の波の色は・第玖拾陸話

「お帰りなさい」

粋な縞の着流しでいる嵩利に、玄関先で迎えられる。笑顔とそのひと言だけで、鷲頭の胸に深く染み渡るあたたかな気持ち。それなのに、にこやかな伴侶の貌をまともに見られないでいる。ぶすッとした顔つきで、うん、とだけ喉の奥で唸るような返事をして、居間へ入ってゆく。

食事こそ同じ卓についていたものの、殆ど会話らしい会話はなく、鷲頭は食後に寛ぐ様子もみせずに、何か大事な資料を書き上げるからと、一層難しい顔をみせながら言って、早々と回廊の向かい側の自室へ引きこもってしまった。

訪ねあぐねて、夜に茶のひとつの差し入れもできず、結局、嵩利はまたしても独りで夜を過ごすことを余儀無くされたわけで、貴重な上陸休暇は残すところ、あと二日となった。

嵩利を見る鷲頭の眼に、今までにないものが浮いていることに気付いたのは、”我が家“に滞在して三日目の朝だった。焦りとも戸惑いとも、苛立ちともとれ、それでいてどこか、訴えるような切実な色が揺れていた。

朝、登庁してゆくのを庭先まで送ったあと、嵩利はひとり前庭を歩きながら、鷲頭の物言うまなざしの意味について、あたまを悩ませていた。

軍務局長という職務がどのようなものか、一度先任副官を務めている嵩利は、多少なりとも知っているつもりである。局長を支える秘書官と、鷲頭自身の敏腕を、その軍務と秤にかけて果たして、自宅に職務を持ち込まねばならぬ程の激務かと言えば、全く有り得ないことであった。

軍縮について、何か持ち上がったのであれば、藤原や城内や那智、或いは新見や有元、三上といった盟友たる将官がこの家へ集っているはずである。 こうして突き詰めてみると、嵩利へ一指も触れぬについては、それらの軍務が原因ではない。勿論、英国での出来事を未だ気に病んでいるのとも違うだろう。

鷲頭が仕掛ける策謀かともおもうが、それもないだろう。また洋上へゆく身である嵩利を焦らすつもりなら、余りな仕打ちだが、それはしない筈だ。これまで、互いに短い上陸休暇を如何に大切にしてきたか、過去を振り返れば明白である。

今夜に及んでも、鷲頭が手にさえ触れぬというのであれば、嵩利にも考えがある。愛しいひとの傍に居ながら、ふた晩も放っておかれてよく我慢しているものだと、自身を褒めてやりたいくらいであった。

「おゥい、御寮は居るかィ」

家へ入りかけたとき、門の外で聞き慣れた声がした。門扉を開けると、大島の着流し姿の那智が居た。煙管を指さきで玩びつつ、片手を懐手にしながら、嵩利の顔をみてニヤニヤしている。そんな一寸した立ち姿すら、役者さながらで様になっている。

「長官、からかわないで下さい。誰が御寮ですか」

頬を膨らませて言った副官の表情を一瞥して、那智は状況を察した。眉をすこし吊り上げて出来た眉間あたりに、やけに剣呑な色が見えたからだ。あれだけ釘を刺したというのに、鷲頭は行動をおこさなかったのだろう。やれやれと首を振る。

「お前ェさんのほかに、この邸に誰が居るってンだィ。…それより、こいつを受け取ンな」

「何です…?」

「英国でおいらに盾突いた代償さ。お前ェさんは昨日限りで第三艦隊から放逐したンでな。おいおい、…そうやって直ぐ真に受けるなィ、言葉のアヤってやつよ。ま、開けて見りゃァわかる」

那智は始終おもしろそうに笑みを湛えながら言って、嵩利へ象牙色の封書を手渡した。中へあがってもらおうと勧めるのを、那智は煙管を振って遮った。

「すぐ帰ぇるんだ、気ィ遣うこたぁねェよ。それに、今ここへおいらが来たことは、あの朴念仁には内緒だぜ」

と、本当に門前で帰ってしまった。粋な匂いの漂う後姿が見えなくなるまで、やや呆然と見送っていたが、渡された封書の内容が気になった。自室まで戻って開いてみれば、そこには十二月五日附で、軍務局長先任副官兼秘書官ニ命ス、とある。

あれらを、ひとりでふた役こなさねばならないとは、”英国でおいらに盾突いた代償”、という那智の言葉が本当は冗談ではなかったのでは、と思いたくなってくる。
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| 綿津見の波の色は・91―100話 | 20:23 | comments:4 | trackbacks:0 | TOP↑

COMMENT

NoTitle

那智×(着流し+煙管)= 最 強 !!
ですね!どうしようもなくかっこいい~!!
そしてついに局長附副官!っていうか秘書官って!!
秘書って!(←やましい考え)
軍務局長殿、どうやらまた仕事が滞りそうですネ☆

それはそうと、なかなか焦らしてくださいます。
こういう時間があるからこその、楽しみなのでしょうか。

| kanayano | 2010/10/02 00:51 | URL |

嵩利にも考えがある。

夜陰に乗じて急襲せんとするものなり。各員一層奮励努力せよ、って我が五体と一物に向けてZ旗を掲げ?

……那智司令官、姿も粋なら、お計らいも粋ですね♪

| misia2009 | 2010/10/04 13:02 | URL |

コメント返信です

秘書に反応されましたね、ふふふ。

でも軍務中は一切なにもなし、ですのでっ。
副官兼任なので、かなり激務です。あとは自宅に帰って…、ですね。

| 緒方 順 | 2010/10/04 20:58 | URL |

コメント返信です

旅順港へ水雷艇で斬り込み夜襲、ですね。

怯まず進め、開戦の火蓋は切って落とされた!

那智が好評頂いているようで、次回作の主人公にしちゃおうかしら、と密かに考えています。

| 緒方 順 | 2010/10/04 21:01 | URL |















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