大日本帝國軍の愛と友情の日々

逓信省の検閲済でありますが、男色趣味満載ですので、苦手な方は華麗なターンでご退却下さい!所謂BL小説サイトです。右側に注意書きがございます。必ずご一読ください

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  綿津見の波の色は・第玖拾参話

家の中を一通り案内しているうちに、鷲頭の胸中に様々な想いが浮かび上がってきた。嵩利と離れていた七ヶ月間、実に目まぐるしかった。

山科の告白から、やにわに周囲へ黒雲が広がって、その後と言えばまるで夏の夕立の訪れそのものであった。軍務局長の責務を果たしながら、遥か遠くの英国に滞在する嵩利の身を案じながら、そして、纐纈のばら蒔いた悪意の芽を摘み取る日々が続いた―。

長い長い半年を経て、晴れ渡った虹が望める程の穏やかさを勝ち取った。言うなれば今度こそ安んじて過ごせるというのに、鷲頭は、ふたりきりでいる時間に浸り切れていない。水も漏らさぬ態勢で嵩利を守れている、と過信していたことが、未だ胸を鈍く疼かせている。

ひとつ間違っていたら、嵩利の身にどんなことが起きたか、考えるだに恐ろしく、悪寒がはしる。鷲頭はしっかりと繋いでいた手を改めて握り直したが、嵩利へ顔を向けようとはしなかった。

嵩利が英国でどのような日々を過ごしてきたのか、先刻対峙したときの毅然とした態度が雄弁に物語っているような気がした。少し見ない間に、軍人としても男としても成長している嵩利が、ひどくまぶしい。

ふたりで住むには、充分過ぎる広さと部屋の数だった。もっとも来客の多いだけに、それを含めれば丁度良いのだが。鷲頭の自室は静かな奥まった場所にあり、嵩利の部屋はそこから、こぢんまりとした中庭を囲む回廊を挟んだ向かいに設えてあった。

「今日はもう遅い。ゆっくり休みなさい」

横須賀の隠れ家から引き揚げてきた私物や、予備の軍服が逐一丁寧に仕舞いこまれていて、滞在するのに不自由はなかった。襖を引き開けて、嵩利が自室を覗き込むのをしおに、繋いでいる手をそっと解く。ここまできて、抱擁のひとつも交わしていない。

「春美…さん…?」

「少し、軍務が残っているのでな、明日にでもゆっくり話そう。…お休み」

何ともいえぬ、ほろ苦い笑みを浮かべた鷲頭を、嵩利は怪訝な表情を隠さずに見つめた。口を開く前に、くしゃくしゃと乱雑に髪を撫でられ、遮られてしまう。一種差し挟めぬ空気が流れたのを感じて、切なさが過ぎる。歩み去る広い背を眼で追いながら、詮無さにため息を吐いて、部屋へ入ると後ろ手に襖を閉めた。既に床が延べられている。

「はぁ…。ケーアイのひとつくらい、したかったナァ」

甘く、こもった吐息混じりに言って、指さきで唇に触れた。

英国滞在中に届いた文の、一節一節が鮮やかに浮かび上がる。敵前に居たというのに、鷲頭の揺るぎない強さと優しさに包まれている安堵感に満たされていたから、何も恐れることはなかった。英国という遠きにあるからこそか、あれほどまで鷲頭を想ったことは今までになく、帰国する時が待ち遠しくて堪らなかった。

「明日、か」

軍服を着たまま、陽の匂いのする暖かな寝床へ横臥しつつ、呟く。胸がちいさく鼓動しているのを、じっと瞼を閉じて聴く。じわじわと熱いものが体に満ちてゆくのを、浅ましいとも、はしたないとも思ったが、おさまる気配はない。

夜という時間は全く厄介なもので、こうなると何かせずには落ち着けない。嵩利も健全な男子であるから、焦がれるようなおもいと欲動を放ったままにされては、到底ねむりになど就けるものではない。

寝具のうえで、ごろりと寝返りをうったあと、起き上がるなり部屋の隅にある行李を開けにいった。そこには、一からやりとりをし続けた鷲頭の文がおさめられているのだ。

嵩利が蕩けるように甘えたがっているとは露知らず、鷲頭は自室へこもって、事実やり残していた軍務の仕上げに掛かっていた。それほどの時間を要する内容ではなく、すぐに片付いてしまう。文机へ肘杖をついて、嵩利の澄んだ笑顔を思い浮かべる。

あの笑顔に裏心などないのは、確かめるまでもない。ただ、鷲頭の胸中に刺さる自己への嫌悪がいつまでも疼き、故にまっすぐに嵩利を見つめられないだけなのだ。伴侶へ触れるについて、幾日か自粛せねば気が休まらぬほど、心は揺れている。

全ての事象に助けられ、何事もなかったことは紛れもない幸運だったが、今回の件は薄氷を渡ったも同然、まさに板子一枚下は地獄であったのだ。
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| 綿津見の波の色は・91―100話 | 21:57 | comments:2 | trackbacks:0 | TOP↑

COMMENT

お二人とも可愛いです……

胸に飛び込みゃいいじゃねぇかとも思ったり、
よくぞ耐えたとも思ったり。
物思いに耽る局長の横顔ったら、もうたまりません! ( ´∀`)

| misia2009 | 2010/09/28 23:19 | URL |

コメント返信です

新居で二人きりなのに、何も起こらず。

焦らし焦らし回でした。

たまには、こういう間もいいかなあと思いまして。

| 緒方 順 | 2010/09/29 23:13 | URL |















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