大日本帝國軍の愛と友情の日々

逓信省の検閲済でありますが、男色趣味満載ですので、苦手な方は華麗なターンでご退却下さい!所謂BL小説サイトです。右側に注意書きがございます。必ずご一読ください

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  綿津見の波の色は・第玖拾弐話

所在無く、霞ヶ関の赤煉瓦をウロウロしていた嵩利は、守本をはじめ、同期や先輩の士官につかまって、英国での様子を話してきかせたり、猫の手も借りたいという多忙なかれらの心を和ませるのに、海軍省をあちこち奔走する羽目になった。

と言っても、正装を纏って参列した式典など、頻りに羨ましがられて満更でもなかったのだが。そのおかげか、どこか拭いきれない蟠りが綻び、嵩利は素直な気持ちで青山の新居へ足を向けることができた。

もうすっかり陽も落ちて、暗くなった坂道を登りながら、段々と心中に奇妙な緊張感が満ちていく。辿り着いた森閑とした佇まいの邸を目にし、門前で暫し踏み入れる足を躊躇う。

「た、ただいま…帰りました…」

玄関へ入る前に、前庭の縁側に腰をおろしている鷲頭を認めて、嵩利は気持ちの整頓もできていないまま、敷石のうえで畏まって立ち止まる。

「赤煉瓦のあちこちへ行って、ガンルーム士官のようにして騒いできたそうだな」

「は、はい…」

厳しい口調でぴしゃりと叩かれる。叱られるのを予期して、咄嗟に軍帽をとると左脇に挟むようにして持ち、項垂れた。庭に敷き詰められた玉砂利が、軋むようにして鳴るのを聞く。

「中へ入りなさい」

すぐ傍へ鷲頭が歩み寄っても、顔をあげられない。寒風に晒されて冷たくなった頬を撫でられ、耳へ囁かれた声音に驚いた。いつもなら、雷の如き叱責が降ってくるというのに。甘いような切ないようなおもいに満たされて、その胸に飛び込みたくなる衝動を堪える。

外套を脱いで、嵩利は紺の冬軍服のまま居間で再び鷲頭と対峙したが、何と言葉を紡いだらよいかわからない。そうして黙っているのは嵩利だけでなく、鷲頭も同じである。いままで交わした文のなかで嵩利は、英国での出来事について、何一つ鷲頭を責める言葉を記さなかった。

―危うい立場に居たのを紙一重でかわせたのは、全く天佑と言うほかなく、ご心配おかけ致しました―

などという殊勝な一文のみで、あとは変わりなく、英国での生活について描かれていた。心配をかけさせまいとしているのが、手に取るようにしてわかる文だけに、鷲頭も敢えてその件には触れずにいた。帰国してから、労わるなり、配慮のなさを詫びるなり、するつもりでいた。

「春美さん、ひとつ諾いていただきたいことが、あるのですが」

ひとつ、息をついてから嵩利は口をひらいた。

「うむ…、遠慮なく言いなさい」

「ぼくを庇護してくださるお気持ちも、配慮も大変嬉しく、ありがたく思ってきましたが、…もう、今後は止めていただきたいのです。あなたに護られて、軍務に打ち込めたことは大きな実になっていますが、ずっとこのままでは、いけないのです」

端整な貌は、厳しさを含めて引き締まり、少年めいた面影は微塵もなかった。鷲頭は伴侶の精悍な表情と、きっぱりとした口調とに、内心でひどく気圧されていた。

確かに、公私共に嵩利を案じて良かれと思ってしてきたことだが、今回の一件で痛感した。もう、護られているばかりではない、一人前の男として、海軍士官として、鷲頭の隣に立ちたいという、その意志がひしひしと感じられた。

「そうだな…、私が過保護に、きみを箱に押し込めすぎていたのだな」

海軍少佐として、申し分のない働きをみせているのは、他の誰でもない、鷲頭がよく知っている。もう、そういった保護の手は要らないのではないか。

「そんな表情をしないでください、ぼくはただ…今回のことで、改めて強くそう思っただけですから…。春美さんは、ずっとぼくのことを案じていてくださっている、そのことはこれからも変わりません。そうでしょう」

「ああ、無論だ」

「…良かった、どうやって打ち明けようか、ずっと悩んでいたんです」

ほっと、安堵の表情を浮かべると、もう先刻までの鋭さはなくなっている。容のよい唇を半弧に描かせて、端座していた姿勢を崩す。胡坐をかいて、遠慮のない寛いだ格好になると、途端に室内をきょろきょろと見回し始めた。

「ここが…その、春美さんと、ぼくの家なんですか?」

そわそわと、落ち着かなさそうに膝を擦りながら言う。その様子に鷲頭の口許にも、自然と笑みが浮かんだ。座を立って、廊下へ続く襖へ歩み寄ると、嵩利を手招いた。

「きみにとって降って湧いたような話だったな。これからはふたりきり、水入らずで過ごせる。ひとつ…案内しようか」

「はい、お願いします」

眸を輝かせて、笑みを向けてくる。長い艦隊勤務をこなしたばかりとは到底おもえぬ身ごなしで、嵩利は軽やかに鷲頭の傍へやってきた。相変わらず陽に灼けて、手指まで褐色をしている。間近に来るまで待ちきれずに手を伸ばすと、しなやかな掌を掴み取って強く握りしめた。
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| 綿津見の波の色は・91―100話 | 20:35 | comments:0 | trackbacks:0 | TOP↑

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