大日本帝國軍の愛と友情の日々

逓信省の検閲済でありますが、男色趣味満載ですので、苦手な方は華麗なターンでご退却下さい!所謂BL小説サイトです。右側に注意書きがございます。必ずご一読ください

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  綿津見の波の色は・第玖拾話

 補佐官として大使館へ行かなくてよい、と言われたのは、那智からことの真相を聞かされた日からであったが、いまの嵩利は周囲のことに思考がついてゆかないほど、事実に衝撃を受けていたから、むしろその措置がありがたかった。

 橘田先任武官のことは心配であったが、告げられたことの前にはそれすらも霞む。

 纐纈という男が、鷲頭と嵩利を陥れるそれだけの為に、軍拡派の将校を煽ったとか、軍令部と大蔵省のなかで未曾有の人事更迭を引き起こさせたとか、山科軍令部参謀の件も含め、他に細かいことを挙げればきりがない。

 このひと月以上、嵩利が接していた纐纈少将に対し、欲と怠惰と退廃とが、人のかたちを成して歩いているだけだ、というのが那智の評価だった。

 そう言われて何度も思い返してみるが、嵩利の眼には少なくとも、纐纈がそのような人物には到底映っていなかっただけに、俄かにその事実を受け入れられなかった。しかし、鷲頭や那智、城内の言うことが誤りだったことは、今までただの一度としてないのも事実だ。

 「いいか、二度とあいつの傍には近づくンじゃねェぞ」

 と、十回は念を押された気がする。

 そう言う那智が、以前、纐纈と再会したときに、気にいらない、と言っていたのは、ある一種の予感のようなものだったのだろうか。

 再び那智司令長官の副官として日々を過ごすうちに、内心では様々な葛藤が錯綜してゆく。

 その思いが整理されてゆくにつれて、自然と脳裏には、去年の初秋に突然発令された、奇妙な辞令のことが浮き彫りになってくる。あの時抱いた不安と、得体の知れない焦りとが思い返された。それに、何より鷲頭のことが。

 「あの騒ぎのことは鷲頭もお前ェさんと同じく、何も知らないでいたぜ。宮嵜軍令部長の件が済んでから、さすがに話はしたがな」

 純粋に軍務に励む鷲頭が何故、そのようなことで振り回されなければならないのだろう。何故、こうして英国へ離れている間も、鷲頭が余計な憂慮を負わなければならないのだろう。更に幾日か経って、嵩利のなかに烈しい感情が湧いてきた。

 嵩利が第三艦隊の乗組となって、陸を―鷲頭のもとを離れるころ、かれがどんな思いで居たか。

 本当は春の人事のとき、嵩利は軍務局長先任副官だったというのに、鷲頭が真っ先に反対し、人事局長の新見に辞令を突き返したのだということを、知った。

 すべて、嵩利がひたむきに軍務へ就けるようにと、このようなことに煩わされることのないようにと、それのみを願って鷲頭は、信念を枉げてまで嵩利を海に遣ってくれたのだ。

 それらの想いがこの英国滞在で、全て台無しになったわけで、日本へ帰るまえに、鷲頭のかわりに纐纈へ一矢報いてやりたいとさえ、おもった。

 しかし、相手が狡猾で非情な男だとわかると、剛毅な嵩利もさすがに矢のように飛んでいって何かをする、というわけにはいかない。第一そんなことをしようものなら、那智がゆるさないだろう。こうして目と鼻の先に居るというのに、歯噛みをしているだけで手をこまねいている。

 城内から書簡を受け取って以来、那智は何か考えを練っているようだ。頼れる上官に任せて、何も聞かなかったことにして暢気にしている、というのがもしかしたら最善なのかもしれないが、嵩利にはできない相談である。

 
 それから何週間か経って、嵩利は橘田先任武官に呼ばれ、官舎を訪ねた。

 かれにはすっかり懐いてしまっているし、橘田からも屈託なく可愛がってもらっている。ほんとうは毎日訪ねていってかれを助けたかったが、那智の命令に従って大使館へ出入りできず、職務の手伝うことがなかなか難しくなっていたから、申し訳ない思いであった。

 「鷲頭くん、もう日本へ帰るんだってね。私ァ、もう暫く倫敦の曇天の下だそうだよ。軍務だから致し方ないことだが…」

 それでも寂しげな眼差しは隠せない。橘田はおもむろに、机の抽斗から一冊の封書を取り出して、嵩利へ渡した。

 「きみの父君のことは、よゥく存じ上げている。私も…軍拡には反対なんだ。かれこれ三年、英国へ身を置いている男から、ささやかな声援を送ります、と橘田が言っていたと、伝えてくれると嬉しい。それを父君に渡してくれないか」

 ちいさな封書だったが、嵩利はしっかりとそれを両手で受け取り、橘田へ深く頭をさげた。かれには、近いうちに帰朝して療養につとめてほしい。そして鷲頭の支えになってもらいたい。心からそう思った。
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| 綿津見の波の色は・81―90話 | 22:09 | comments:2 | trackbacks:0 | TOP↑

COMMENT

NoTitle

橘田さん…いい人ですね。
こんないい人が病気になっちゃったのも残念だし、さらに地球の反対側に置いていかなければならない事実も、嵩利にとってはつらい現実なんだな~って、改めて思いました。
最新話で久しぶりにお父上と再会していますね。
相変わらずの局長のそぶりにきゅんとなってしまいました☆

| kanayano | 2010/09/26 15:58 | URL |

コメント返信です

この当時の海軍はけっこう人員カツカツだったような気がしたので、苦しい台所事情を反映させてみました。
橘田中佐は、そのうち帰国してきっと鷲頭を支えてくれるはず。です。

そろそろ、甘々、だらだら、な日々を描こうとおもっています。

| 緒方 順 | 2010/09/28 22:38 | URL |















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