大日本帝國軍の愛と友情の日々

逓信省の検閲済でありますが、男色趣味満載ですので、苦手な方は華麗なターンでご退却下さい!所謂BL小説サイトです。右側に注意書きがございます。必ずご一読ください

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  綿津見の波の色は・第捌拾漆話

 水交社で偶然顔を合わせた鷲頭へ、場所も場所だけに手短に火急の用だけを告げて去ったのだが、さすがに、嘗て絆を結んだ間柄だけあって、鷲頭は山科の異変をしっかりと捉えていた。

 翌日退庁したあとすぐに呼び出され、山科は青山の鷲頭邸へ赴いた。

 もうあの頃と同じように、鷲頭と対峙することはできぬ身であるということを、包み隠さずに語った。すなわち、纐纈によって引き摺りこまれ、抗しきれずに溺れた堕落の日々と、その謀略と罠とを張り巡らせていた事実を。

 眉間を嶮しくしたままそれらを聴いて、鷲頭はただひと言、そうか、と頷いた。

 告解を終えてもなお悄然と項垂れる人のように、端座して体を震わせている山科を、鷲頭はいつか初めて触れたのと全く同じようにして、髪に触れ、つよく抱きしめた。

 「きみが、これ以上苦しむことはない」

 陥れようとしていたというのに、その策謀の張本人を、鷲頭はひと言たりとも責めなかった。日露戦争開戦前夜、厳冬のなかで軍艦へ乗組んで、出撃の瞬間に息を殺して震えていた砲術長参謀を、叱咤せずに温かく励ました日進艦長の鷲頭春美のままだった。

 傷つき、心身を蝕まれてもなお捨てなかった鷲頭との時と、交わした想い、それに山科自身の参謀としての才能がかれを助け、いまここへ繋ぎ止めているという事実。そのかれが、答礼訪問のために海を渡った嵩利の身が、英国で危険に晒されていると警告をしてくれたのだ。

 密かに結んだ一度きりの契りが、まさかこのようなことを引き起こすとは、鷲頭も山科も、想像だにしていなかった。

 清涼な想いを踏みにじった纐纈こそが悔悟の情を感ずるべきである。他人を妬んだり憎んだりしたことのない鷲頭だが、こうして打ちひしがれた山科の姿を目の当たりにして、初めてといっていい烈しい憎悪の焔を滾らせた。

 それに、何よりも愛する嵩利のことだ。己はたとえこの劫火に焼かれても纐纈を叩きのめす積もりだが、嵩利を巻き込むわけにはゆかない。何があっても、無事に帰朝させねばならない。

 ―那智さん、頼みます―

 碧い海の彼方を航海している香取の艦影を脳裏にうかべながら、鷲頭は祈るようにして心で呟いた。安穏とした空気が漂う青山の邸に居る身が、ひどくもどかしかった。

 「纐纈少将の知己、陰謀を企てる遣り口、そういったものは知っています。私に資格があるとは到底言えませんが、この件について手伝わせてください。あのような人に、あなたとご子息が振り回される謂れはありません」

 薬物などにも蝕まれて憔悴した体は、未だ回復していないに違いなかった。窶れた額には秀でた参謀の知性が浮いているが、まるで病み上がりの身を酷使しているようであった。健気にも、ひたと眼をあわせて申し出る山科の誠意に、鷲頭は胸を衝かれた。

 「きみがまだ罪悪感から、そう言っているのだとしたら、その必要は全くないのだぞ」

 「鷲頭局長…」

 刹那燃え上がった纐纈への憎悪の焔は、山科が向けるひたむきな想いと嵩利を案ずることとがあり、燻り、熾にまで押さえ込むことができた。まずは、山科を癒してやらねば。かれは心根のやさしい、誠実でまっすぐな男なのだ。このことを苦にしたまま、万が一にでも、死を選ぶようなことをさせてはならない。

 「山科くん、もう一度だけ言うが、きみが罪過を悔いる必要はない。私を変わらず慕ってくれているというのなら、罪過とおもうものは今、ここで全て捨てて行け」

 それは軍務に就いているときと違わぬ、厳しい命令と同じだった。鷲頭は真剣なまなざしで、山科の眼を射抜いて、言った。
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