大日本帝國軍の愛と友情の日々

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  綿津見の波の色は・第捌拾伍話

 所謂、”外向き”の軍務に就いたのは、嵩利にとってこれが初めてで、一年に何度も着ることのない大礼服に身を固めることには、内心うんざりしていた。もっとも、これを着るについて、そう悪い思い出ばかりがあるわけではない。

 横須賀鎮守府へ務めに出ているとき、鷲頭の友人である写真家に頼んで、ふたり一緒に大礼服で写真を撮った。言ってみれば婚礼写真に相当するようなものだ。あの写真もきっと、青山の新居に飾られているのだろう。宿舎で煩瑣な礼服を纏うあいだ、嵩利の口許から微笑が消えなかった。

 英国に着いてからこのかた、毎日が答礼訪問に関する催しばかりであった。

 普段一緒に居るとつい忘れがちだが、司令長官の那智の供をして陸にあがると、周囲に寄る人波の多さに吃驚する。辟易したのは、初対面の英国人が悉く、嵩利の容貌と肩章とを見比べることくらいで、かれらから見れば恐らく、嵩利はこどものように見えたのだろう。これには苦笑を禁じえない。

 昔、海軍兵学校を受験する際、担当官から年齢を詐称していないか、厳しく問い詰められて調べられたことがある。まあ、そのようなものだろうと、それ以降は気にも留めなくなった。

 今日は日本を訪問してくれた皇族殿下主催の歓迎会がある。

 いざとなると肝が据わるのか、幾つかの式典などをこなしたあとは、嵩利は特に緊張もおぼえずにこういった席に列していた。いきがっているわけでもなく、平素と変わらぬ態度でいるのを、同期の佐官たちは感心したようにみている。

 概ね、こういった絢爛きわまりない催しが一通りすむと、それらをスマートにこなした褒美とばかりに、英国海軍を退いたかつての提督が香取を訪れた。かれは日本海軍の士官たちを集めて、英国海軍のネルソン提督のはなしを語ってくれたのだ。このときばかりは嵩利はまるきりこどものように眼を輝かせて、熱心にそれを聴いた。

 日英同盟がもたらすものだけでなく、それ以降はあちこちで英国と日本の海軍士官の交流がはじまり、まさ盟友との蜜月、というべき光景がみられていた。

 その最中、嵩利は突然、大使館から招待をうけて、那智とふたりで急遽赴くことになった。

 英国大使館に駐在している吉田大使は回りくどいことがきらいで、用件を前置きなしに述べた。物腰が柔らかいのに押しが強い。むしろ大使というより、大店を切り盛りする商人の風格があるように感じた。

 用件というのは、嵩利を駐在武官に欲しいということだった。日本には帰らせず、このまま置いてゆけというのだ。今まで催されてきた式典などを、どこからどうみていたのか、大使は嵩利の物怖じしない態度が気に入ったらしい。流暢な英語と、なかなかに明晰な頭も買ったのだという。

 「いやいや。急にこんな話を突きつけて、甚だ無礼を致しました。お詫びといってはなんですが、今晩官邸でご一緒に夕食をいかがですかな」

 ということになって、夜に再び大使館官邸を訪れた。招かれたのは那智と嵩利だけかとおもっていたが、他に海軍将官、士官があわせて三人、顔をそろえていた。嵩利にとってはまったく見慣れない顔ぶれであったのも無理はなく、かれらは艦政本部から派遣されている士官たちだったのだ。

 那智はかれらを知っていて気軽に紹介してくれたが、それを終えると珍しいことにほんの僅か、意に沿わぬようなことをした、と言いたげな眼を嵩利へ向けた。たとえ気に食わぬ人物が居ても、いつもなら席上では知らぬ顔をしている那智がである。

 ”宮様”とからかわれて紹介された纐纈少将は、参ったなという茶目を含んだ表情を浮かべたあとは、またもとのような深沈とした態度でいる。嵩利からみて、かれにはどことなく、鷲頭を思い出させるようなところがあった。あとの二人の士官は、現在英国に駐留している武官だった。

 先任武官の橘田中佐が、どうにもからだが思わしくないということで、日本へ帰って療養したいと、わざわざ軍医の診断書まで携えてきていた。

 それはそのまま、那智と嵩利に対する嘆願書になり、いっぺんに断わりきれぬ状況へ持ち込まれてしまった。艦隊の指揮系統にもかかわることだからと、その晩は早々に大使館官邸を辞して、那智と嵩利は宿舎へ戻った。

 「実は英国へお前ェさんを置いて帰るつもりは、これっぽっちもねえ。だが、ああ頼まれちゃァなあ。ちぃっと明日から大使館へ出向いて、先任武官の補佐をしてやってくれや」

 苦りきった顔をして、那智は策を捻り出した。嵩利はどちらにせよ、命令どおり動くしかないのだが、なぜ那智がこれほど渋っているのか、どうしても訊きたかった。

 「あの”宮様”な、鷲頭や加藤と同期なんだが…、どうも益々いけすかねェ。お前ェさんの眼にどう映ったか知らんが、おらァあいつらの少尉候補生航海訓練のときに分隊長だったんだ。これでいて行状はよく見ていたつもりだぜ」

 那智から言わせれば纐纈は、鷲頭とまったく正反対の性質をしているように見えたらしい。傍目にも家柄を鼻にかける素振りなどはなかったそうだし、同期連中からも鷲頭と同様頼りにされる存在で、将官の卵に相応しいことは確かであったという。

 「うまく言えねェが、あれァ一生直らねェなと。ま、周囲に迷惑さえかけなけりゃ放っておいても大したことはなかろうと。おらァそれ以降、あの”宮様”には関わってねェってこった」

 こうして再会しても、那智の纐纈に対する印象は変わっていないらしい。嵩利は腑に落ちない表情で首を傾げた。まだまともに会話もしていないうちから、上官に対して偏見をもちたくないというのがあった。

 「アア、すまねえ。お前ェさんはそんな眼で上官をみる訳にゃあいかねェか。そンじゃ、ついでに纐纈の偵察もしてこい。あいつがどんな奴か自分の目で確かめてみな」

 それから那智は、つい陰口を叩いてしまったことを、ここだけのはなしだぜ、と言って悪巧みでもするような笑みを浮かべてみせた。
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| 綿津見の波の色は・81―90話 | 09:42 | comments:0 | trackbacks:0 | TOP↑

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