大日本帝國軍の愛と友情の日々

逓信省の検閲済でありますが、男色趣味満載ですので、苦手な方は華麗なターンでご退却下さい!所謂BL小説サイトです。右側に注意書きがございます。必ずご一読ください

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  綿津見の波の色は・第捌拾肆話

 初夏の匂いが桜の若葉を擽るころになっている。

 鷲頭と新見は海軍省を少し早く退いて、芝の水交社を訪れた。夕食にはやや早い時刻だったが、構わずに席を陣取る。しかも雲隠れどころか、堂々とめだつ場所にである。海軍では階級の上下があろうがなかろうが、こういう場所では構わずに席をともにするのが普通で、遠慮しない。どこへ座っていても誰かしらやってくる。

 定刻をすぎると、庁舎を引いてきた士官たちが憩いに訪れる。いつもと変わらぬその光景が広がってゆくのを見ているだけでも、鷲頭は内心の澱が縁から僅かばかり溶けてゆくのを感じていた。

 「鷲頭局長、お隣失礼します」

 「あれっ、新見局長、まだ鰹は召し上がっておられないンですか」

 「なんだ貴様、気が利かないな。そういうときは黙って持ってくるに限るだろう」

 「おれは副官向きじゃないって、気が利かないのは、部長の折り紙つきだよ」

 どっと笑い声が混じり、鷲頭と新見の居るテーブルに、あけっぴろげな態度をみせて士官たちが同席する。旬の魚といい、副官の云々といい、それらは鷲頭の耳に入ると、悉く嵩利の面影に結びついてしまう。徒に恋しがっている訳ではないし、その積もりでもないのだが、もうこればかりはどうしようもない。

 テーブルを囲み、自然と和やかな空気に包まれて夕食に移ろうとしている鷲頭たちを、どこか暗いまなざしで捉えているひとりの士官がいた。少し離れた窓際の席から、半ば呆然としたような表情でいる。

 軍令部参謀の証である金の飾緒を身に帯びている。いまは第一部第一課に身を置く、山科中佐であった。

 纐纈の策略に嵌り、踊らされた挙句、自暴自棄になって深い闇の淵へ一度落ちこんでいったが、自身に備わった才覚と、未だ残る善きものへの思いとが身を助け、辛うじて山科を海軍へ繋ぎとめてくれていた。もし居るのならば、神が見捨てなかったのだと、時々ぼんやりと考えることもある。

 今の山科は、もう纐纈の傀儡ではなくなっている。その代償に強力な後ろ盾を失ったが、欲と金に塗れているような、そんなものはどうでもよかった。

 フォークにのせた料理をくちへ運ぶが、咀嚼しているのに味もまともに感ぜられない。何か、山科はからだと意思が切り離されでもしたかのように、淡々と食事を進めながら、時々視線を鷲頭の居るテーブルへ向けた。

 全く食べた気のしない夕食の、食後の茶もそこそこに席を立つ。件の席はふたたび、鷲頭と新見だけが寛いでいる。そこへ山科は吸い寄せられるようにして、近づいた。

 「鷲頭局長、お久しぶりです」

 発した声はつとめて静かなものだった。そのことに自分でも驚いた。

 かれに対してどのような企てをもったか、そしてそれらを半ば為そうとしていたか、先ずそれを詫びるべき身であるというのに、こうして平静な態度でいる。厚かましい自身の面の皮に、今回ばかりは感謝した。

 悔いるのも、罪科を負うのも、いまここでなくとも、あとで幾らでもできる。それよりも今は、どうしても鷲頭に伝えなければならないことがある。

 「すこし、お時間拝借してもよろしいですか」

 柔和な口調と、どこか寂しげな表情のなかに切実な光を宿す眼を、鷲頭はしっかりと捉えてい、即座に頷いた。嘗て淡く想いを交わしあった男は、あの大戦の直前、不安に震えていた夜にみせていたのと寸分違わぬまなざしをしている。
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| 綿津見の波の色は・81―90話 | 00:44 | comments:0 | trackbacks:0 | TOP↑

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