大日本帝國軍の愛と友情の日々

逓信省の検閲済でありますが、男色趣味満載ですので、苦手な方は華麗なターンでご退却下さい!所謂BL小説サイトです。右側に注意書きがございます。必ずご一読ください

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  綿津見の波の色は・第捌拾参話

 穏やかな性格だが、無口で怖い顔つきの鷲頭は、軍務となると梃でもうごかない。赤煉瓦ではやくも煙たがられ、頑固で面倒な人物として扱われはじめても、かれの眼は周囲のそのような下らぬ批評などはいっていない。ひたすらに、正しく続くべき海軍のすがたを守ろうとしている。

 その姿勢に、襟を正すように気持ちを持ち直した士官も確かにいて、そういうひとびとは一種どこか、清涼な顔つきになって鷲頭に会いに来る。

 それについて特に何を言うわけでもなく、かれらの顔つきを見て、眉間を和らげるわけでもない。考え方が柔軟になったことは認めるが、そもそも海軍士官は、そのような姿勢であれと躾けられてきたではないか。

 鷲頭の心には、透徹とした眸の光とどこまでも無垢な意志を持つ、唯一無二の海軍士官の姿がある。それが自身の伴侶だからと、高く買っているわけではない。だれも、もしかしたら鷲頭でさえ、あの眼差しには届き得ないかもしれなかった。

 別れる前に嵩利と交わした会話に、いまの鷲頭は励まされ続けている。

 ―難しいことは、ぼくの分を超えていますから、春美さんの支えにはなれるかどうか―

 謙遜しすぎだと、ここであたまを小突いた記憶がある。

 ―日本は海軍が守らねばならないようにできています。しかし、軍拡は結構ですが、四方の海にそれ程の戦艦がなければ日本を守れないとは、どうしても思えません。居たのは短いあいだでしたが、帝都の赤煉瓦は、ずっとローリングしながらすすむ戦艦のなかのようでしたよ。それにちっともスマートじゃありませんでした。とてもではありませんが、あれでは海軍士官とは言えませんね―

 陸の務めも、海の務めも、まったく同じ気持ちで励まなければということはわかっていても、あまりにも違いすぎたと嵩利はそう言っていた。やはりぼくの本分は海にあるんです、と切ないものを含ませながら浮かべた笑顔は、どきりとするほど颯爽としていた。この一年の間に、たとえ陸にいても、精悍な海の男として確実に成長していた。

 このたび洋上へ出た艦はすべて、日露戦争の名残をのこすクラス―所謂、前弩級艦―で、薩摩をはじめ今後は弩級艦の建造に移る。嵩利が乗組んだ香取は、国外へ発注した最後の艦でもあった。その艦で、洋上を狭しと疾駆してゆくのだから、それだけで立派な反骨の意思にもみえる。

 旗艦香取率いる第三艦隊は、一路欧州をめざして、佐世保を出た筈である。訪問先は英国。先の英国皇族の来朝に対する答礼訪問ではあるが、日英同盟でむすばれているいま、それに続く軍事面での援助について協議をしにゆくというのが真相だ。

 いま欧州は不安定である。そのなかに、日本がどのように立ち入ってゆくかにもよって、情勢は変わるだろうと、司令長官である那智にそのおもいを託すような手紙を、つい先日送ったばかりだ。勿論、嵩利にも遠慮のないことばを綴ったものを、諸々の書籍とともに送ってある。

 「鷲頭くん、今日は芝へ行きませんか」

 午後に訪ねてきてそう言ったのは、新見である。

 芝には水交社があり、帝都だけあってそこで起居できるほどの施設さえある。ちょっとの間雲隠れして息抜きをするには、最適の場所でもあった。

 「ん…、うむ」

 執務机へ肘杖をついて、ちょうど考え事に耽っていたが、敢えてそれを取り繕うとはしない。周囲のちょっとした動きでも、普段ならば即座に身を構えるのだが、友人のまえでは必要ない。それに新見は部屋も階も違い、同じ海軍省にいても顔を合わせることは少ないのに、鷲頭がこうして僅かに疲れを滲ませる頃になると計ったように訪ねてきて、誘いをかけてくれる。

 「ご子息に、禁酒令を解いてくれと打診しないと、愈々いけませんね」

 まじまじと鷲頭の顔をみつめたあと、新見はさも深刻そうな表情をして呟いた。無論半分は冗談である。

 嵩利は相変わらず鷲頭の飲酒については厳しい態度をとり続けている。海ほどあってもけろりとして呑んでしまうつわものに、禁酒は相当堪える。他でもない伴侶の言葉だから厳守しているが、どうも酒は鷲頭にとって、栄養源として体が要求するようになっていると、認識をした。だから、一升とは言わぬにしろ、その半分でもいいから許してほしい、と実は送った手紙にも書いている。

 「あれが、そう簡単に解いてくれるとは思えんがな」

 ふっと、遠い眼をしつつ鷲頭は呟くようにして言って、眉間を寄せた。脳裏に碧い波を蹴って進む香取の艦影と、受け取った文をどんな表情で読んでいるかと、嵩利の顔を思い浮かべた。
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| 綿津見の波の色は・81―90話 | 23:23 | comments:2 | trackbacks:0 | TOP↑

COMMENT

半升許してくれとは

お情けなや、局長…

もうラブラブで読んでるほうも幸せいっぱいです。
嵩利くんが可愛いまま男らしく成長していく姿に心洗われます!
粋な心遣い、新見さま素敵です。

| misia2009 | 2010/09/17 23:27 | URL |

悪の栄えたためしなし

愛と正義と純粋さと一途が勝つ!というコンセプトで、今後進めていく予定です。嵩利には、もうちょっと男らしい振る舞いをさせたいなあ、と思っています。

新見はどこまでも女房役が似合うので、周りへの気遣いは抜群です。そして那智を尻に敷いています。番外編で、那智と新見の話も書きたいなあ。

| 緒方 順 | 2010/09/18 18:43 | URL | ≫ EDIT















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