大日本帝國軍の愛と友情の日々

逓信省の検閲済でありますが、男色趣味満載ですので、苦手な方は華麗なターンでご退却下さい!所謂BL小説サイトです。右側に注意書きがございます。必ずご一読ください

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  綿津見の波の色は・第捌拾話

 宮嵜軍令部長のときは、その結末を城内から聞かされただけだったが、今回は違う。

 帝都へゆく身の鷲頭は、友人たちに護られて暢気にしているつもりはなかった。 何も知らずにいて、軍縮の論を引っ込めさせるためには、手段を選ばぬという卑劣な輩に、間抜けな奴だと陰で嘲笑されるのは我慢ならない。

 知らぬのは嵩利だけでよい。紺碧の海で、憂いもなく気兼ねもせず艦隊の務めに励んでほしい。それに、時々便りを寄越してくれさえすれば、鷲頭は心おきなく戦いに臨める。

 海へ出てゆく嵩利でなく、陸に残る鷲頭が戦へ征く覚悟を固めているというのは、おかしなはなしだが。

 そこまで思ったとき、ふっと視界が遮られた。温かいしなやかな両掌と指先が、閉じた瞼に触れる。気づかれぬ場所にいるのをいいことに、不覚にも思考に没し過ぎていた。

 「また勝手に脱け出したな。ここで桜を眺めるほうが、私と居るよりも良い、ということか」

 不意をつかれたのも相まって、言葉に刺々しいものを含ませてみたが、背後にぴたりと寄り添っている温もりは、怖じた様子もなく黙っている。

 瞼を塞ぐ手を掴み取る前に、するりと滑り降りて胸へ触れる。軽く抱きつくようにしながら濃紺の上衣に添わせて撫でる手つきには、愛しさのほかは何も含まず、ゆっくりと背に預けてくる体の重みは、それとなく甘えながら許しを乞うているように感じる。

 「…ひとついいか、嵩利」

 「はい」

 寧ろ許しを乞うのは鷲頭であって嵩利ではない。だがまだ今はできない、全て終わるまでは。

 胸を撫でる手を今度こそやさしく掴み、そのまま繋いで石の階をおりる。先刻まで嵩利が腰掛けていた低い石柱に座った。そうして初めて顔を見合わせたが、正面に立つ嵩利は、鷲頭を見下ろすかたちに居心地が悪いらしく、少し困った表情でいる。

 「嵩利、私を…」

 眼前に立つ伴侶の両手をとって引き寄せる。眉をしかめて、ぐっと言葉を飲み込み、

 「私を抱きしめてくれ」

 そう言ったとき、どんな表情をしていたかわからない。

 忽ち、嵩利の包みこむ笑顔がふわりと広がる。しなやかな腕が伸びてきて、鷲頭の首を胸へかき抱いた。髪へ指先を潜らせて、すくようにして幾度も撫でる。されるに委せて、鷲頭は瞼をとじた。

 「今度はもう少し、便りを多く寄越しなさい」

 「はい、努力します」

 「些細でも、何か困ったことがあったら構わず、司令長官の那智中将に相談しなさい」

 「はい」

 凡そ、このような状況で述べる言葉ではないが、ふたりは確かに別れと覚悟を分かち合っていた。

 鷲頭の広い肩に、嵩利の腕が回されて、ぎゅっと抱きしめられる。胸に抱かれていた頭を心持ちずらせて、隆い鼻を胸元へ埋めると、憂いとも安堵ともとれるような息を吐いた。鷲頭は未だ瞼をとじたままでいる。

 伴侶に対して胸中をつまびらかにしないのには、ちくちくと呵責に苛まれる。愛しているからこそ良かれと思ってしたことだと思う一方で、それでは嵩利を心底から信頼していると言えるのか、という問答がいつまでも鷲頭の胸を敲いている。 ことが済んだあと、若しこの件で嵩利からどれだけ責められても、鷲頭は全て受けとめる胆を決めた。


 この日から、鷲頭は殆ど引き継ぎに費やすことに専念し始め、嵩利は変わらずその傍らで副官の務めに勤しむ。

 今暁の裏庭でのひととき、鷲頭のとった態度と言葉を、空き時間の度に反芻している嵩利は、あのように甘えてきた鷲頭の振る舞いについて、旺盛な庇護精神がいたく擽られたのを無邪気に喜んでいる。

 自然と漏れる微笑は、なかなか引っ込まない。午後から参謀長執務室を訪ねてきた、現軍務局長の有元と秘書官の守本とが、顔を見合わせて怪訝な表情をしたほど、嵩利はぽわぽわとした綿毛の如き様子でいる。

 しかも傍らの鷲頭参謀長は、いつもの仏頂面であるが、身に漂う気配からは剃刀さながらの、独特な緊張感がまるでなかった。

 綿毛さながらの嵩利は、その癖しっかりと難しい書類の作成をこなしてい、間違いなく普段よりも多くの軍務を捌いている。 あからさまに無邪気を丸出しにしたその態度に、表情こそ変えないが、鷲頭は毒気を抜かれたようになってい、今朝まで抱えていた嵩利への葛藤と呵責を、きっぱりと棄てた。
→【31話】 →目次へ戻る

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| 綿津見の波の色は・71―80話 | 20:45 | comments:2 | trackbacks:0 | TOP↑

COMMENT

ぽわぽわ嵩利…っ

限界でございますw

お帰りなさいませ。

微笑ましくなってみたり、文章の美しさに身の引き締まる思いがしたり、先ほど読み始めてから上がったり下がったりしておりました。

すべて拝読してからコメントをと思っておりましたが、綿毛になられた日にゃあ……www
しかも有能。新局長KO負け。続きも楽しく読ませて頂きます。敬礼。

| 奇特な訪問者様 | 2010/09/17 23:17 | URL |

文章は文豪の影響大なりです

ご訪問ありがとうございます。

いきなり音信不通になってしまい、申し訳ありませんでした。

本当は第百話で終わらせようと思っていましたが、あまり気にせずに続けることにしました。番外編とか、何かちょっとした脱線話とか、そういうのでも続けてみようかと。

また来てくださると嬉しいです。

| 緒方 順 | 2010/09/18 18:38 | URL | ≫ EDIT















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