大日本帝國軍の愛と友情の日々

逓信省の検閲済でありますが、男色趣味満載ですので、苦手な方は華麗なターンでご退却下さい!所謂BL小説サイトです。右側に注意書きがございます。必ずご一読ください

PREV | PAGE-SELECT | NEXT

≫ EDIT

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。


web拍手 by FC2

| スポンサー広告 | --:-- | comments(-) | trackbacks(-) | TOP↑

≫ EDIT

  綿津見の波の色は・第漆拾玖話

 黎明に届くか届かぬかという時分に、まどろみから浮き上がってみれば、傍らにあるはずの愛しい伴侶の姿はおろか、温もりの名残さえも掻き消えていた。これで何度目かと、僅かながら不機嫌に陥るが、その所在を確めることはしない。

 湯の支度から、務めに着てゆくものまでが、きちんと揃えられている。それらをせずともよいと何度も言っているが、嵩利はもうじきに陸と海とに別れる、その名残を惜しむように、甲斐甲斐しく、それらの世話を抜かりなくしてゆく。丁寧に畳まれた軍衣袴を身に纏えば、薄く漂う嵩利の想いが、身に染むような気さえしてくる。

 上官の私情を挟んで、好き勝手に振り回されている嵩利の立場を考えれば、鷲頭がこれ以上の感傷を抱くのは、許されないことだった。 嵩利のために過去に一度だけ軍務に私情を挟んだが、もうあのような真似は一生涯するまいと、固く決めていた信条をふたたび枉げた。どうしてもそうせずにいられなかったからだ。

 憂いに沈んだ双眸の光に、嵩利がどのような思いを含ませているか、鷲頭には手に取るようにわかっている。鷲頭を信頼し、健気に真剣に、一途に海軍を支えてゆこうとする、純粋な意志。

 軍務局長先任副官として、帝都へゆく筈の辞令を突き返し、嵩利を海へ遣ることを強く推した筆頭は、他ならない鷲頭である。

 この鎮守府で、嵩利の副官としての有能さは遺憾なく発揮され、それは人事局長の新見も深く承知していた。当然、今回の異動で鷲頭軍務局長の先任副官へ就けて然るべきだった。しかし、鷲頭を始め、嵩利を取り巻く周囲の悉くが、けして首をたてに振らなかった。その意見に対して新見に異論のあろう筈がない。辞令は直ぐに差し替えられた。

 城内たちが暴き出して葬ったと考えていた穢らわしい膿は、未だじくじくと染み出してい、どうやらそれは海軍のみでなく、政財界をも侵食しつつあると、語るにも聞くにも堪えぬはなしを、普段はまったく飄然としている城内が、苦々しい表情と共にこぼした時から、全ての状況が変わった。

 腐った膿を撒き散らしている、その元凶と思われていた宮嵜軍令部長は、実は仕掛けられたかませ犬でしかなく、もっと奥の隠れた闇のなかに、黒幕がいると城内は推察し、確信を持った。 宮嵜自身は傑物で、海軍は勿論、知己として繋がる者たちからも敬愛されている。予備役となったいまでもそれは微塵も変わらない。

 それほどの人物が何故、そのような元凶と目されたのか。かれが内なる問題を抱えていることにある。かれ自身どうにもならぬ淫蕩極まりない性癖があり、しかも相手が異性であろうと同性であろうと、振る舞いに差はない。それを当人は自覚しており、いたく恥じて自戒してい、表には毛の一筋ほども出さず、抑圧し続けていたところを、巧みにつけこまれたのだ。

 隠れ家同然に用意された、静かな洋館へ足を踏み入れるなり、堰を切った飽くなき欲望は狂奔し、何憚ることなく宮嵜を満たした。眼に叶う秀麗な美青年士官を、夜毎寝室に侍らせ、只ならぬ肉体の交歓を持つことに、躊躇いもなく没入してゆき、やがて裏の顔であるそれは、表にも僅かな影を落とすまでに至った。

 軍令部長である宮嵜の愛顧はそれでも、情や思いやりといった人の温かさをたっぷりと内包していたから、選ばれた士官たちはかれの絶倫と耽溺に翻弄されながらも、信頼の心を寄せていた。だからひとたび表に出れば、かれらは宮嵜を献身的に支え続けてきた。 そこまでなら、城内たちも目を瞑って、海軍が立ち行くように陰で支えておしまいになる話だった。

 問題は、宮嵜にことのほか寵愛した海軍士官が、ひとりいたことである。

 かれは宮嵜の眼に叶うほどの流麗な外見ばかりか、非常にその類の技に長けており、淫蕩な宮嵜の欲望を様々なやり方で煽り、焦らし、満たしていった。そのようなかれに溺れるまで、そう時はかからなかった。

 もっともかれはその手腕を奮うために、ある時期に海軍を中尉で退役したあと、高級官僚だか、どこかの貴族院議員だかの優秀な秘書官となったらしいが、かれとの関係に溺れていた宮嵜は、以前と変わらず日をあけずに洋館へ招いた。傾城の魔性に宮嵜は毒され続けていった。

 かれに唆されて、海軍を分裂させかねない―実際いま派閥に別れて対立している―軍拡を宮嵜が声高に叫び出したのはこの頃で、傾城の美青年秘書官が、宮嵜の耳に反軍拡の先にたつ鷲頭と、嵩利の存在を囁いてからすぐ後のことである。

 ことに嵩利については、誰もが認める紅顔の美少年然とした端整な容姿だけに、如何にも宮嵜の情欲をそそらせるようにして聞かせ、反軍拡派の勢いを挫くことにも繋がると、格好の獲物として狙わせた。

 おぞましい魔手の正体は、こうして狂わされた宮嵜のものだったのだ。城内はそれを断ち切っただけで、肝心の黒幕までには辿りつけなかった。今に至るも秘書官の行方は掴めず、事態が良いほうに進展しているとは言い難い。


 前にも増して危険の濃くなった帝都に、あの無垢で天衣無縫な嵩利を行かせたが最後、何処で誰の罠に嵌められるかわからない。深い愛で結ばれた鷲頭と嵩利を引き裂く事態だけは、何としても阻止したいと、城内を始めとするかれらの知己は、軍縮に次いでその事について意見を同じくしている。

 黒幕の企みは、ただ海軍の分裂というだけに留まらない、何かもっと別の意図を隠しているに違いない。鷲頭と嵩利がこうも執拗に狙われるのは、軍縮を唱える筆頭である以外に、理由があるのではないか。城内たちはそう睨んで、ふたりを徹頭徹尾保護する体勢を固めた。
→【30話】 →目次へ戻る

web拍手 by FC2

| 綿津見の波の色は・71―80話 | 20:40 | comments:0 | trackbacks:0 | TOP↑

COMMENT















非公開コメント

TRACKBACK URL

http://landofrisingsun.blog66.fc2.com/tb.php/216-8900ee25

TRACKBACK

PREV | PAGE-SELECT | NEXT

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。