大日本帝國軍の愛と友情の日々

逓信省の検閲済でありますが、男色趣味満載ですので、苦手な方は華麗なターンでご退却下さい!所謂BL小説サイトです。右側に注意書きがございます。必ずご一読ください

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  綿津見の波の色は・第漆拾陸話

 怖い顔をしている城内に、“ひとつ間違えば、軍法会議だヨ”とか“今回はぼくも、大きなことは言えないけれども、これは進級停止になっても文句は言えないヨ”とかいったことを淡々とした口調できかされ、さしもの鷲頭も畏まった。実際、あってもおかしくないことだからだ。

 長官の手招きに嵩利はしおらしく従って、加藤と入れ替わりに隣へ腰をおろす。これには鷲頭も抗議できず、内心で歯噛みしつつ、離れた席で沈んだ表情をしている嵩利へ、気遣う眼差しを送る。

 「長官が怒るのも無理はない。今回は灸を据えられたと思って我慢しろ。…なに、そんなに心配するな。度が過ぎるようなら、おれと那智さんとでしっぺ返ししてやるから」

 隣に座ってその様子を見ていた加藤は、慰めるように、ぽん、と肩に手を置きながら、鷲頭の耳元へささやいた。いま、那智は三上と別室で酒を飲んでいて居ない。もし居れば城内の挙措を必ず阻止していただろう。鬼の居ぬ間になんとやら、である。

 「おッと、祝いの席なのに、無粋をしてしまったネ」

 と、いつもの柔和な表情で微笑むと、それだけで場の空気が変わった。肝心の祝われる立場である藤原は、あちこち転々としているらしく、ここにはまだ姿をみせていない。酒と食事とが運ばれてきたが、招待客たちは構わずに手をつけていく。

 「副官、いつまでそんな顔をしているんだい?…ぼくはもう怒っていないヨ。きみは参謀長の命令を忠実にこなしただけで、悪いことはなンにもしていないんだからネ」

 食事に碌に箸もつけずに、嵩利は項垂れている。城内は端座して動かない嵩利の、その膝に置かれた両手をやさしく撫でてやる。鷲頭に灸を据える積もりでしたことだが、目当ての寵児まで萎れてしまっていては、城内は面白くない。

 「参謀長がぼくを恃んで、ああいうことをしたのもわかっているよ。ただ、一言も無いというのはネ、さすがにぼくも腹に据えかねる。それに…、あんな風にきみを誇るとは参謀長、けしからんヨ」

 耳朶をうつ城内の低い声が、心なしか棘のようなものを含んでいる。

 本当に何の相談もなしに、嵩利へ軍務を任せていたのだとしたら、それは鷲頭に非がある。何事にも厳しい鷲頭だが、長年の付き合いである城内が長官であるのに安心して、怠ったのだろうか。

 「あの…、長官」

 少なからず、鷲頭に類が及ぶかもしれない、と嵩利は急に指先が冷たくなるのを感じた。震える声で言って城内へ顔を向ける。

 「うん?」

 本当は心の底では驕っていたのかもしれない、でなければこんな事態にはならずに済んだ。と、嵩利は自身を責めた。城内はまるで鷲頭だけが不正を働いたように言うが、そうではないのだ。

 「ぼくがいけないんです、少佐の身で、越権行為だというのを意識していたのに、参謀長から任されていることに…頼りにされていることに目が眩んでいて、手をつけてしまったんです。本来なら、ぼくから長官に相談をし、参謀長を諌めて頂くべきでした…」

 慙愧に耐えぬといった面持ちで、真剣に告げる嵩利の黒目がちな双眸は、うっすらと潤んでいて、城内のみならず、周囲の者―勿論、鷲頭もだが―はその透徹とした意思と眼に、きゅっと胸を圧された。

 「ああ、もう…。実に健気なんだなァ、きみは。本当に可愛いんだから、いや、参っちゃうネ」

 愛しくてしかたがないというように、城内は嵩利の肩を抱き寄せて、華奢なからだを腕に閉じ込める。今この場で誰よりも、嵩利を抱きしめてやりたいのは鷲頭なのだが、城内にそれを奪われた形になった。

 「参謀長、今回のことは、この一途で健気な副官に免じて、不問にするからネ。でも気が済まないから、今日はご子息、ぼくンところから離さないよ」

 ぐっと堪えていたが、最後の言葉で一杯食わされたと気づいて、畏まっていた鷲頭の態度が普段のものに戻る。城内はあっさり、その本性をあらわした。鷲頭の性格を見越して、巧みに痛いところを突いて嵩利を奪った挙句、これである。

 「なァにが、気が済まねェだ、べらんめえ!手前ェ、今度こそマストに逆さ吊りにしてやらァ」

 そこへ丁度、中庭の渡り廊下からその様子を見て、那智が飛んできた。三上と傾けた酒のうまさと、そのほろ酔い加減が台無しになった怒りも含めて、仁王立ちになって額に青筋をたてている。

 並べた座卓を蹴り飛ばしそうな勢いで入って来たのを見るなり、席を占めていた士官たちは見物をきめ込みながら那智へ場を譲る。城内の前に進み出ると、那智は啖呵を切り出す。

 「やい、この色惚け長官。その手ェ離しやがれ」

 「嫌だよ。今日は鷲頭くん―参謀長がいけないンだから。きみ、怒る相手が違うヨ」

 「何ィ言ってやがんだィ」

 その遣り取りの間に、鷲頭は毅然として立ち上がり、無言のまま那智の隣に並んで、ひとつ頷いてみせた。加藤が後ろで退くように促すと、察した那智はぴたりと口を噤んで、成り行きを見守る。

 正面に座した鷲頭の眼は静かに城内を圧している。そのまなざしを真っ向から受け、笑んだ表情のなかに、ちらりと真剣な光を眼に宿らせて、城内は頷いた。すッ、と腕を解き、嵩利を抱擁から解放する。

 「だけどネ、…参謀長。例えぼくだからって、二度とあんな真似をしてはいけないよ」

 「はい、それは…身に沁みました」

 「ウン、これからも確り頼むヨ」

 一途に鷲頭を想う嵩利の気持ちが、純粋に城内の心を打ったせいなのか。嵩利を手許に置いて、ここぞとばかりに愛でたいと思っていたのだろうが、意外にも思惑に反して、いままで嵩利を抱いていた城内の仕草に、厭らしさは欠片も感じなかった。
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| 綿津見の波の色は・71―80話 | 23:10 | comments:0 | trackbacks:0 | TOP↑

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