大日本帝國軍の愛と友情の日々

逓信省の検閲済でありますが、男色趣味満載ですので、苦手な方は華麗なターンでご退却下さい!所謂BL小説サイトです。右側に注意書きがございます。必ずご一読ください

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  綿津見の波の色は・第漆拾肆話

 大将へ進級し、華族に列せられても、藤原は贅沢や華美を好まず、広い敷地を所有しているのに、そのなかに建つ邸は主を表すが如く、瀟洒ではあるが質素な雰囲気のつくりであった。

 しかも、他に離れが二つあるが、そのうちのひとつは、苦学している青少年たちのための宿舎になっている。かれらはここから、それぞれの学び舎へ通っているという。

 それらの洋館が、侘び寂の効いた深沈とした日本庭園のなかにあるのがおもしろい。いつの頃から始めたのか、その前庭も中庭も、藤原家へ厄介になっている少年たちが、つねに清浄に掃きととのえてくれているらしい。かれらが自発的にはじめたことだけに、藤原は何も言わずにいるという。


 邸へ通されると、そこにはやはり海軍士官の姿が多く見受けられる。

 さながら、観艦式のあとに旗艦で催される艦上の宴か何かのようである。その中には、“元内大臣”とか“元侍従長”とかいった肩書きを持っている長老もいた。

 見渡してみても、嵩利ほど若い士官は他にいないようだった。気後れした様子でいるのを庇うように、混み合ったところを避けつつ歩を進めてゆく。鷲頭はすぐ傍を並んで歩く嵩利へ顔を向けはしなかったが、一瞬触れ合った手を繋いで、強く握ってやってから離した。

 歓談で賑わっている人々のあいだを通ってゆけば、見慣れた顔の揃っている一角が見えた。城内、那智、新見、有元、浅田、三上―かれらは鷲頭と嵩利を認めると、待ちかねていたように手招きをする。引き入れるようにして輪に加えるなり、鷲頭のうしろに庇われている嵩利を、那智が引っ張り出した。

 「お前ェさんは、ふた言目にゃァ名士名士と言うが。三上よゥ、この別嬪を軽く見ちゃァいけねえよ」

 人事局長をながく務めていた三上へ、那智が自慢げに言う。これまでの嵩利の―海軍の人事は、この将官が最終的に左右していたわけで、紆余曲折の末、今こうして鷲頭の傍へ置いて貰っていることもあり、感謝の念も含めて、嵩利は三上へ挙手の礼をした。表情こそ崩さないようにしていたが、微笑を堪えられなかった。

 三上はそんな嵩利の挙動に、戸惑うように細い目を瞬かせたが、すぐに短く端正な答礼を寄越してきた。

 「な、こういう奴なんだよ。可愛いだろ」

 恰も自身の身内を褒めるかのような口ぶりで、嵩利を評する那智へ、三上は渋々頷き返す。

 「ああ…、まあ、そうだな。それは認めるよ。可愛気のあるということは、確かに美徳だからな。だが、鷲頭少佐が大湊から始まって、才覚が芽を出してきていることくらい、私も気づいていた。だから、これまできみたちが推すことも成る程とおもって、諾いてきたんじゃないか」

 「まァ、そう不貞腐れるなって」

 確かに最初こそ、奇行のめだつ大尉のひとりを、いい厄介払いができたと言わんばかりに、三角定規で融通の利き難い、厳格な鷲頭の副官に附けて、洋上へ遣ったわけだが、その後の海軍士官としてのふたりの実績は、これでもきちんと見守ってきたんだぞ、と三上は不満げな顔を那智へ向ける。

 どうやらそのことで、随分と那智と城内からチクチクと苛められたらしい。元来、気の強いほうではないだけに、三上はそんな後ろめたさからか、ちらりと嵩利へ顔を向けても、細い眼を泳がせて逸らせてしまう。

 「正直に言うとヨ、お前ェさんを半ば目の仇にしかけていたンだが。まッ、これで仲直りできたわけだ。海の男は、いつまでも前のことに拘らねェで、お互い水に流して美味い酒を飲もうじゃねェか」

 那智はそう言って親しげに三上の肩を叩き、磊落に笑った。三上は安堵を含んだため息を漏らして、きみには勝てないヨ、とその言葉に、漸く顔を綻ばせる。ふたりはそのまま、輪から抜け出ていった。

 「どうやら、やっと悶着がおさまったようだな」

 噛み殺し切れぬ笑みが、苦笑いに変じて、鷲頭はそう呟きながら嵩利の隣へ立った。今日は軍務ではないからか、鷲頭はいつもより優しげで、嵩利を守るような寄り添うような姿勢でいる。人前でこんな態度を取っているのは、初めてである。

 もう籍をうつしたのだし、鷲頭の養嗣子―子息―なのだから、こうした態度は少しもおかしくはない。それでも改めて自身の立場を顧みると、嵩利は鷲頭の何であるかが今更のように沁みてきて、ひどくこそばゆくなる。
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| 綿津見の波の色は・71―80話 | 21:50 | comments:2 | trackbacks:0 | TOP↑

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| | 2010/08/28 07:10 | |

その発想はなかった…!

非公開コメントでもお返事します。

>雪風さん

確かに戸籍上は、そうなりますよねえ。

むはー。朝から凄い場面を想像してしまいましたわ。

でも嵩利がいまの鷲頭くらいの年齢になるまで、父上とは呼ばない(鷲頭が呼ばせない)気がします。

| 緒方 順 | 2010/08/28 07:43 | URL | ≫ EDIT















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