大日本帝國軍の愛と友情の日々

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  綿津見の波の色は・第漆拾弐話

 横須賀鎮守府での時間は、帝都と違って穏やかに過ぎてゆく。どうやら身辺に漂っていた不穏な空気が、すっかり晴れたことを漠然と感じながら、嵩利は日々の軍務に励んでいる。

 その相談役兼副官に、煩瑣で重要な事項まで任せきって、鷲頭は愈々軍備に対する意見を固め、微に入り細に入り、論文を綿密に仕上げることに没入していた。

 長官の城内が、参謀長執務室を訪ねてくることも増えたが、それは概ね副官に就いている嵩利を、片時も傍から離さずにいる鷲頭に対する冷やかしで、からかうような言葉をちらつかせて、面白がっている。無論それは、本心から思っているわけではない。

 ある朝も、始業前にぶらりと訪ねて来たが、めずらしく面を改めている。

 「今日はネ、真面目な話。ぼくンところの秘書官が今日は所用で居ないんだよ」

 それを聞くなり、嵩利はすっと消えるように席を外して、奥の扉から出てゆく。いつもは秘書官が淹れるはずの、長官が嗜む紅茶を支度して戻る。

 「長官、どうぞ」

 「おッ、いつもながら気が利くネ。副官、一寸だけ手伝いに来て欲しいンだが、参謀長、ウンと言ってくれないんだよ。午前中ずっと論文の執筆をしているっていうのにネ」

 あたたかい紅茶を注いだカップをとりあげながら、執務机と本棚の間を往き来している鷲頭を、眼でさした。

 散々、持論を表へ出すのを渋っていた鷲頭が、論文を纏めようと筆を取ったのも、嵩利の報告と、以前かれがここへ届けた、有元軍務局長からの書簡が決め手だった。

 帝都の赤煉瓦に少なからず蔓延る、慢心と驕り。欧米へ駐在武官に出ている士官たちは、諸外国が、わが国の急激な軍国主義への傾倒の兆しに、多かれ少なかれ危惧を抱いているという。

 しかし外国の顔色を窺って、国を守ることを疎かにするわけにはゆかない。そもそも陸海軍は侵略戦争など、毛頭するつもりはなく、また海軍も、その様につくられていない。内外へ帝國海軍としての意思を、示しておくべきだろう。その為の指針として、鷲頭はいま論文に取り組んでいる。

 「午前中だけでいいから、頼むよ。…つれないねェ、何も取って食おうという訳じゃないのに」

 「あなたには一度、前科がありますから。簡単に頷くというわけには参りません」

 ふたりの将官の遣り取りに、何か微笑ましささえ感じて、嵩利は紅茶を運んできた銀のトレイをとりあげて、笑んだ口許をそっと隠した。

 過去に一度だけ、軍務に私情を持ち込んだほどだ。鷲頭は慇懃な態度で、城内の頼みの重要性を吟味するかのように、改めて訊く。嵩利のこととなると城内に対してだけは、こうして庁舎に居ようとも、鷲頭は感情と警戒を露骨にみせる。裏返せばそれは、鷲頭と城内とが肝胆相照らす仲であるということでもある。

 こうした、ある意味において平穏な日々の中で、鷲頭は海軍を揺さぶることになる論文を完成させ、海軍大臣である小峰眞次大将へ、それを提出した。

 陸軍の尾木とならぶ、海軍の重鎮である小峰は、海軍大臣就任二度目で、しかも慎重な姿勢ながら、艦隊を新たに拡張することについて、賛成の意向を示している。なまじ理知的で穏健派なだけあって、説得するのは至難の業である。それを承知の上で、鷲頭は敢えてこの挙に出たのだ。


 明治四十三年、冬。

 一年半以上に及ぶ、第一艦隊司令長官の務めを果たした藤原格中将が、大将へ進級するとともに、旗艦三笠をおりた。司令長官の働きを認められ、御附武官として宮中に召喚される。

 横須賀へ帰港した三笠から登舷礼式で見送られ、内火艇から降りてくる藤原を、城内と鷲頭をはじめとする、鎮守府の面々はあたたかく迎えた。

 「鷲頭くん、とうとう腰をあげたか」

 端正な姿勢で挙手の礼を交わすと、藤原は訛りのきつい言葉で言って、鷲頭の肩をぐっと掴んだ。その手にこめられた力はつよく、感慨を含んだ眼差しとに、無口な藤原の心情が伝わってくる。
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| 綿津見の波の色は・71―80話 | 20:11 | comments:0 | trackbacks:0 | TOP↑

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