大日本帝國軍の愛と友情の日々

逓信省の検閲済でありますが、男色趣味満載ですので、苦手な方は華麗なターンでご退却下さい!所謂BL小説サイトです。右側に注意書きがございます。必ずご一読ください

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  変わらぬ青空のしたで・第拾伍話

 いつもの朝、電話の鳴る音や話し声、ひとびとの行き交ううごきが織り成す、一種異様な活気に満ちた騒がしさが響く参謀本部。そのなかにいて、惟之はひとり、目に見えぬ道を迷わず進む。縫うように辿って、すぽん、と喧騒から抜け出した。

 そこは、川上少将の執務室だった。枯れ山水を配した、古寺にでもあるような苔むした中庭を臨む、一階のそのあたりだけは、本部のなかにおいて別世界を切り取ったようにひっそりとしている。

 「おーい、川上の爺さん。居るかァ」

 悠長に、まるで囲碁仲間でも訊ねるような調子で言う。

 扉を叩くと、すぐに内側へと開かれる。副官ではなく、川上少将そのひとが顔を出した。長身で、熊のような大兵の身を肋骨服で鎧っている。白髯のめだつ風貌が、好々爺の印象を強くする。目の光も穏やかで、いつも笑むようなまなざしである。

 誰がみても、これが維新期~明治期の二度の大戦時に猛者として名を馳せたあの人物とは、即座に合致しないだろう。

 「おお、杉サン。入ってたもんせ」

 それだけ言って、にこやかに惟之を部屋へ招じ入れた。

 階級こそ惟之と同格だが、功績、年齢からしても本来ならば、とうに中将になっていてもおかしくない人物である。

 権威や階級に拘らないかれは、明治三十七八年戦役を境に、ひっそりと陰で陸軍を支える側にまわった。有り余る人脈を持ちながら、己の保身や栄達に利用することはなく、誠実な他人が難儀しているときにしか動かない。

 「いやはや。爺さんとこからきた新しい嫁から逃げて来たんよ。ありゃァ…なんちゅうか…とーじが据わっちょる」

 座卓のうえに風呂敷包みを解いて広げてから、惟之はことばを濁してまるい頭をぽりぽりと掻いた。包みからは、紐で結わえた竹皮の包みがでてくる。そのなかには、計ったように同じ大きさで結ばれた握りめしが、きっちり揃って鎮座していた。

 「これじゃものなァ、こそばゆうてかなわん。山口ときたら、このおれにまったく躊躇しちょらんのよ。今朝方もなあ…きちんと寝ろだの食えだの。挙句の果てに抱き上げよって、個室に押し込められるちゅう始末でのう。あねぇなやつは初めてじゃ」

 ぐったりと長椅子に背をあずけて、ぼやきを漏らす様子を、川上は微笑ましげな顔でみている。やがて、川上が手ずから淹れた茶をひとすすりしながら、もぐもぐと握りめしを咀嚼していく。食事中は姿勢を正し、たべることに専念して、けして言葉を発しない。惟之が起きているとき、唯一黙る間でもある。

 握りめしは美味かった。あっという間に平らげる。

 「ところで今日は、大事な会議があるのではごわせんか?」

 「うん。まあ、山口なら、時間までにおれを探しに来ると思っちょるけぇ。川上さん、それまで居さしてつかされ」

 そう言って懐から、昨夕届いた電文と徹夜でたてた作戦の一覧を取り出して、さりげないものでも渡すように川上へ差し出す。

 「いざとなったら川上閣下を恃むつもりで、お願いしに参ったというのが本題でしてなあ」

 「なに、おはんが遊びに来られただけとは、おもってはおりもさん。成っほど、こいが―」

 昼行灯をぶっていても将官、こどもじみていても将官。

 紙片をまえにした二人の少将は、やおら真剣な顔つきになると、その本領を顕した。

 いまごろ階上では、惟之の部下たちが智力の限りをふりしぼって、この件の策を練っているだろう。無論それを疑うわけではないが、手の内は幾重にも折り重ねておいて間違いはない。しかしあくまで見えぬように、こうして隠れてやる。あとが無いようにみせておいて、部下を奮励させるやり方も必要なのだ。
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