大日本帝國軍の愛と友情の日々

逓信省の検閲済でありますが、男色趣味満載ですので、苦手な方は華麗なターンでご退却下さい!所謂BL小説サイトです。右側に注意書きがございます。必ずご一読ください

PREV | PAGE-SELECT | NEXT

≫ EDIT

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。


web拍手 by FC2

| スポンサー広告 | --:-- | comments(-) | trackbacks(-) | TOP↑

≫ EDIT

  綿津見の波の色は・第伍拾陸話

 育て上げた自慢の息子たちに導かれた三笠は、夏の名残を持った、うねりの強い初秋の海を越え、しずしずと横須賀の港へ帰ってきた。海軍はこのところ、目まぐるしく状況が変わるらしく、人事の発令は突然やってくる。それはこの、第一艦隊の乗組にとっても、例外ではなかった。

 嵩利は気配りの良さ、訓練や艦隊演習の指揮の鮮やかさなどを評価されていたが、何故か、何処へ配属させるか、人事が難航しているらしかった。異動である旨は知らされていたが、肝心の象牙色の封書が届いていない、という状況に陥っていた。

 結局遅れて、海軍省軍務局長副官兼軍令部出仕、という、とるものもとりあえず、といった内容の辞令が飛んできたのを受ける。名残惜しさは増すばかりだったが、三笠と、そして足掛け三年は駆け回ってきた海原へ、とうとう別れを告げねばならなかった。

 この異動には、下士官水兵は言うに及ばず、少尉中尉などからも、明らかに落胆の声が上がった。 “三笠の母ちゃん”と呼んで―勿論かれらだけで通じる、密かな綽名だが―嵩利を慕っていたからだ。

 上陸の為に内火艇に乗り込むころには、こもごもの土産物を持たされていた。そうして見送られ艦を離れてゆく、嵩利の照れを隠さない笑顔に、三笠に残る面々は微笑みを禁じえなかったが、陽が翳ったかのような寂しさを感じていた。

 待たせに待たせたというのに、辞令は厳しく翌々日付で配属になっていたから、嵩利は横須賀鎮守府に居る鷲頭へ挨拶にゆく間もなく、とにかく官舎へ辿り着くべく、列車へ飛び乗った。

 品川を過ぎたあたりから、面白くもない一面の陸になって、霞ヶ関に着いた頃には、群青に染まりつつある空を見上げて、つい何時間前まで居た海を思い出している。

 「あァ、明後日から赤煉瓦か…」

 と、憂鬱に呟くも、革鞄を取り上げたとき、そこでふっと救われたような気がした。その中には、三笠で苦楽を共にした者たちからの餞別がはいっている。明日にでも、陸勤めの同期連中に配ってやろう、と幾らか気持ちを明るくして、官舎にあてがわれた自室へ向かった。

 荷解きもそこそこに、寝台へ身を横たえる。思いのほかくたびれていたのか、眠りはすぐに訪れ、半年以上会っていない鷲頭の面影を追う間もなく、夢も浮かばぬ闇へ沈んでいった。


 翌日―。
 
 まだ夏の眩しさが残る朝日が、海軍省の赤煉瓦を照らし、白軍装の海軍士官たちが登庁して、きびきびと気持ちの良い働き振りをみせている。そんな中、軍務局長の執務室では秘書官の守本が、ひとり待ち惚けをくったように所在無げにしている。

 夏休暇の直前、ひどく慌しかったから、もしかしたら休暇がずれこんで、今日は自分だけが出勤なのだろうか。だとしたら、上官から何かしら連絡があるはずだ。局長の執務机をみても、手掛かりになりそうな物は何もない。

 ―仕方がない、次官に事情を訊くか。

 「ちょうど良かった。きみに来てもらおうと呼びに行くところだったんだよ」

 と、出迎えた海軍次官浅田少将は、柔らかな笑みと共に守本を招じ入れる。かれは、次官執務室でゆったりと朝の紅茶を嗜んでから、職務に就くのが常で、訪ねてきた守本にも惜しまずに紅茶を振舞った。浅田は執務机の抽斗から、書類挟みを取り出してくる。

 差し出されたそれは人事異動の通達で、開いてみて守本は懐かしさに目を細めた。それは嵩利のものだった。しかし随分と急なことで、決定した日付は昨日、発効は明日である。

 「守本くん、これから官舎へ戻って、鷲頭くんと一緒に居てくれないか。外出するのは一向に構わないが、ユニホームは必ず脱いでゆくんだよ」

 「えっ、何ですって」

 「妙だとおもうだろうが、ひとつ頼まれてくれ。これから、すこし面倒なことを片付けねばならないのだ。事情は済んだら必ず話すから、暫くの間、鷲頭くんを頼むよ」

 「それでは、明日の登庁はどのように?」

 「それは今夜、私から連絡をしよう」

 訊きたいことはあるだろうが、ここは堪えてくれと言わんばかりの、拝むような手つきをされ、しかも浅田は海軍きっての温厚と誠実さで知られているから、守本はこれ以上の詮索を諦め、頼まれた通り官舎へ向かった。
→【7話】 →目次へ戻る

web拍手 by FC2

| 綿津見の波の色は・51―60話 | 17:46 | comments:0 | trackbacks:0 | TOP↑

COMMENT















非公開コメント

TRACKBACK URL

http://landofrisingsun.blog66.fc2.com/tb.php/188-dcd0c0b0

TRACKBACK

PREV | PAGE-SELECT | NEXT

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。