大日本帝國軍の愛と友情の日々

逓信省の検閲済でありますが、男色趣味満載ですので、苦手な方は華麗なターンでご退却下さい!所謂BL小説サイトです。右側に注意書きがございます。必ずご一読ください

PREV | PAGE-SELECT | NEXT

≫ EDIT

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。


web拍手 by FC2

| スポンサー広告 | --:-- | comments(-) | trackbacks(-) | TOP↑

≫ EDIT

  綿津見の波の色は・第伍拾伍話

 陸では梅雨がそろそろ明けようとしていた。そのころ嵩利は土佐沖にいた。緑美しい四国を遠くに見ながら、日々の鍛錬に励んでいる。そうしながらも、鷲頭との文のやりとりは続けていた。

 横須賀鎮守府の参謀長官邸に、便りは幾つも届く。

 鷲頭の世話を焼いてくれている婦人と令嬢は、見慣れた封書がその中にあると、束の表にしてソッと私室の文机のうえに置いておく。鷲頭は何も言わないが、その気遣いがいたく沁みているのだ。庁舎から帰ってきて、嵩利からの便りを目にすると、務めをこなした疲労は跡形もなく吹き飛ぶ。そういうときは概ね、半刻は部屋から出てこない。


 ―貴方からの心尽くしを受け、どんなに嬉しいことでしょう。しかし、伝え度いことは数え切れない程あるのにもかかわらず、返す手紙の筆が進みません。

 どうやらぼくは、紙上に文字を綴って気持ちを伝えるのが大変不得手な様です。貴方の眼をみて言葉や表情を交えながら伝え度くて、こうして机に向かっていると、其れを出来ない事がもどかしくて、堪らなくなります。筆先が鈍るのはその所為ですから、どうか気長に待っていて下さい。

 先だって、両親からぼくの写真を受け取ったそうですが、何故貴方の写真を送って下さらないのですか。此方は艦上ですから、士官私室とは雖も人の出入りはあります。ですから、写真立てに収めて机上に飾りなどしませんと、何度伝えたか覚えていますか。ぼくは只、毎晩眠る前に貴方の顔をそっと見つめ度い丈なのです。

 切なくさせる丈させて置いて、陸にあがってきたときに、貴方の傍へ四六時中居させた方が、ぼくの教育になると、そんな風にお考えなのですか。此の儘では、艦に居る間に貴方の顔を忘れてしまって、横須賀で貴方を探し回る羽目になりますよ。上陸休暇は短いのに、そんな事になって傍へ居られなくなっても、ぼくは知りません。

 こんな風に拗ねても、きっと貴方はまた笑って済ませて、送っては下さらないのでしょうね。ぼくがどんなに貴方を慕っているか、最早言を俟たない程です。其の内、此れ迄頂いた便箋の、其のなかに居る春美さんの方が良い、と言ってしまう日が来ますよ。

 此れから、送って頂いた書籍をじっくり読みます。明日は土佐へ補給の寄港をして、薩摩の沖へゆきます。

 言うまでもない貴方のことですから、お体の為に酒精は控えて居られると思います。ですが、薩摩には美味いと評判の焼酎があるそうですから、折角ですので少し丈送ります。

 貴方は日頃から難しい顔をして居て、苦難を苦難と思わず、ご自身の不調すら黙って飲み込んでしまうので、周囲の者は其れに気づけません。夏の病は長引きますから、どんなに忙しくても、確りと寝食を摂って下さい。

 ぼくは貴方の心身が、少しでも穏やかであって欲しいといつも願っています。其れ故の苦言ですから、諾いて下さい。

 今度横須賀へ帰るのは、夏の終わりから秋の初め頃になると思います。此のひととき丈は、貴方のことのみを想って過ごしていますが、其れ以外は、精進鍛錬の日々を送っていますから、其の点は心配なさらないで下さい。

 遅筆に重ねて拙文の手紙を、何時も隅々まで読んで下さっている優しい貴方を、誰よりも愛しく想っています。

 七月一日夜 嵩利より―


 たとえ離れていても、こうしていると不思議と嵩利を傍に感じる。几帳面な文字が便箋に認められていて、それはそのまま、かれ自身の姿となって鷲頭の眼前に現れてくる。

 女々しいのとは意味合いが違う、何か大きな温かい愛情が嵩利にはある。便箋の言葉から、ひしひしとそれが伝わってくる辺り、艦上で如何にかれが乗組へ配慮を心掛けているか、目に見えるようだった。

 明日は、城内と共に帝都へ行くことになっている。と言っても、城内お得意の、例の達観したような口ぶりで、

 ―鬼退治には、守り刀が是非とも欲しいからネ。一寸、芝居の舞台にでも出ると思って、ひとつ頼むよ―

 などといって同行を求められた。何が何やら、鷲頭にはさっぱり見当がつかない。ただ、帝都で蠢いているらしい、怪しげな気配のことを、少しでも探れるのであれば、と承諾したのである。
→【6話】 →目次へ戻る

web拍手 by FC2

| 綿津見の波の色は・51―60話 | 23:59 | comments:0 | trackbacks:0 | TOP↑

COMMENT















非公開コメント

TRACKBACK URL

http://landofrisingsun.blog66.fc2.com/tb.php/186-c4ead00f

TRACKBACK

PREV | PAGE-SELECT | NEXT

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。