大日本帝國軍の愛と友情の日々

逓信省の検閲済でありますが、男色趣味満載ですので、苦手な方は華麗なターンでご退却下さい!所謂BL小説サイトです。右側に注意書きがございます。必ずご一読ください

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  綿津見の波の色は・第伍拾弐話

 「鷲頭、おい」

 いつものように夕食後の士官室で寛いでいると、肩を掴まれて揺すられる。嵩利はハッとして振り仰いだ。守本が呆れた顔をして見ている。

 「姓が変わったことに、いい加減に慣れたらどうなんだ。油断しているとすぐこれだ、参謀長の養子になったんだろう、貴様」

 手にしている象牙色の封書を、嵩利へ渡しながら隣へ腰をおろす。三笠へ乗組んでから、一年が経っていた。守本が持ってきたのは辞令だった。

 「まだ艦から降りたくはないんだがなあ…」

 ぼそっと呟く守本の言葉には、まったく嵩利も同感だった。三笠から異動になるにしても、陸の上―所謂霞ヶ関の赤煉瓦―だけは御免蒙りたい。艦はちがっても例えば駆逐艦の艦長あたりに就くのが理想だった。

 「そんな事を言って、見ない訳にもいかないよな」

 そう言って嵩利はちいさな手帳を取り出し、挟んであるペーパーナイフで封を切り、辞令へ目を通した。守本もそれに倣って読み始める。

 「良かった、まだ三笠に残るンだ。今度は通信長か、守本はどうだった」

 「ん、軍務局長の秘書官だ」

 「へェ、そうか」

 「しかし、おれが秘書官とは、正直言って意外だな」

 狐につままれたような顔をして、辞令を封書へ戻す。確かに守本は軍人らしい男だが、武骨一辺倒ではない。本人が気づいていないだけで、充分務められる。それを言うと、守本はこそばゆそうに椅子のうえで身じろいだ。

 「貴様もしっかり務めろよ」

 「うん」

 春の人事で、第一艦隊の乗組も三分の一ほどが入れ替わることになった。その中に、鷲頭参謀長の名も入っていた。辞令が届いた夜に、私室を訪ねて訊いてみれば、

 「異動か。次は横須賀鎮守府参謀長だ。これで陸と海とに別れるが、確り務めることだな」

 と、あっさり言い、心なしか寂しげな表情でいる嵩利のあたまを、無造作に撫でてやる。鷲頭とて寂しさはある。だが軍務であるから、そこは一切表に出さない。もっとも、便りなら幾らでも送る、という気でいるというのもあるのだが。

 ―帝都には行かずに済んだか、ひとまず安心できる。

 紅茶を淹れたカップに唇をつける嵩利の横顔を、眼の端におさめつつ、鷲頭は加藤との会話を思い出していた。今年の正月休暇に、嵩利の生家へ挨拶に行ったあと、加藤が一計を案じて、坂ノ下にある別荘へ友人たちを招いた祝いの宴を開いてくれた。

 だがそれはただの祝いの席ではなく、帝都で不穏な動きがあるから、嵩利ともども身辺には充分配慮するようにと、集ってくれた友人一同から、鷲頭はそっと忠告されたのだ。その不穏な空気というのが何なのか、わからないだけに不気味ではあった。

 陸へあがったら、鷲頭はとことん鼬のようにして過ごすつもりでいる。嵩利に憂いを持たせるような事態は、何があっても避けたい。いまは、こうして嵩利が艦へ残り、海での務めに励めることを、素直に喜びたかった。
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| 綿津見の波の色は・51―60話 | 23:31 | comments:0 | trackbacks:0 | TOP↑

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