大日本帝國軍の愛と友情の日々

逓信省の検閲済でありますが、男色趣味満載ですので、苦手な方は華麗なターンでご退却下さい!所謂BL小説サイトです。右側に注意書きがございます。必ずご一読ください

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  綿津見の波の色は・第肆拾陸話

 夕方まで、嵩利は鷲頭を連れ出して生家の裏手にある丘まで散策に出ていった。どうせ、明日になれば腰越の親戚一同が押しかけてきて、賑やかな宴会が開かれるのだから、敢えて向こうには顔を出さずにおく。今はふたりきりで過ごしたかった。

 「長いあいだ海上にいると、陸が恋しくなるこの感覚は、艦乗りでないとわからないだろうな」

 鷲頭は丘にひろがる、芝生のような草原を見てしみじみと言う。履物を脱いで裸足になり、土と草の感触を楽しみながら歩いている。嵩利も同じようにして、草の上を歩く。

 ふと眼を閉じて、海から来る風へ顔を向ける。息を吸い込むと、そんな筈はないのだが、軍艦の鉄と石炭の匂いまで微かにするようだ。もう海を恋しがっている証拠だろうか。そうして微笑みながら風に吹かれている嵩利を、鷲頭は草のうえへ寝転がりながら見上げている。

 目の前に広がる春の淡い青空に、どこからか風に乗って、山桜の薄い紅色の花弁が、吹き上がるようにして舞いながら運ばれていった。

 「今年は裏の山桜が咲くの、早いなァ」

 のんびりと呟いて、嵩利は鷲頭の傍へ膝をつくと顔を覗きこむ。互いに、やさしく甘いまなざしを絡める。嵩利はいましがた舞った花弁のような、紅色の唇に笑みを湛えた。

 「春美さん」

 澄んだ声が蕩けるようなものを含ませて、名を囁く。こんなところでは、耳の毒になるだけである。伸ばされた手が鷲頭の頬へ触れ、指さきが艶かしく喉もとを撫でてゆく。

 「怪しからんな、このようなところで。きみの誘いには乗らんぞ」

 誘うその手を拒み、怖い顔をして怒ったように呟く。嵩利の華奢な腰をぐっと両腕に閉じ込めて、腰を折りそうなほど、きつく抱きしめてしまう。

 「郷里へ帰ってきて、そんな不埒な真似をしてはいかん。もう、以前とは違う。分別をつけるように教育してきた、私の意図を無碍にするのか。それとも…悪さができぬよう、ここで懲らしめられたいか」

 耳許へ囁く声は厳しく、窘める響きしかない。このままでは、ほんとうに腰を抱き潰されてしまいそうである。嵩利は鷲頭の胸へ頬をくっつけたまま、いやいやと頭を振る。叱られて耳を垂れた子犬がするように、全身の力を抜いて恭順を示すが、まだ鷲頭は腕を解いてくれない。

 「ごめんなさい」

 「わかればよろしい」

 拘束を解かれると、嵩利は鷲頭へ背を向けてその場で座り込み、項垂れた。自身の浅はかさに、顔から火が出るようなおもいがしていた。手を繋いだり、ささやかに視線を交わしたり、その程度が許容範囲であることくらい、嵩利にもわかっていたから、尚更である。

 「どうしてもというのなら、横須賀へ一日早く戻ればよい。きみと遠慮のない時を過ごしたいというおもいは、私にもあるのだからな」

 艦へ帰ったら、また長い禁欲生活である。嵩利の妖艶な媚態を味わい尽くすには、一日ではとても足りないが、いまのふたりならば骨の髄まで染みるほど、深い愛情を確かめ合える、それほどの間柄になっている筈だ。

 「そう…してください」

 消え入りそうな声で“その時”を鷲頭へ預ける。相変わらず眉を顰めたまま鷲頭は頷き返してきた。それでも、伸ばした手で嵩利のあたまを撫でる手つきは、何もかもを受け止めるような抱擁のかわりに、充分なり得るほどのやさしさがあった。

 「反省したのだろう。それなら、二度とせねばよい。さあ、もうそんな顔はしないでくれ。私はここへ、きみを叱りつけに来たのではないのだから」

 「はい…」

 あたまを撫でていた掌が、頬を包む。促されて嵩利は顔をあげ、漸く笑みをうかべた。まだ含羞むような表情をしている。それを溶かすように、鷲頭はめったに見せぬ微笑を向けてみせた。

 鳶がたかく、空に弧を描いて飛んでいる。ながく、尾をひくような鳴声が、丘にも響いて届く。その声とこの青空が、鷲頭の微笑とともに、嵩利の胸にいつまでも残った。
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| 綿津見の波の色は・41―50話 | 13:31 | comments:0 | trackbacks:0 | TOP↑

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