大日本帝國軍の愛と友情の日々

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  綿津見の波の色は・第肆拾肆話

 第一艦隊というのは、有事発生時には聯合艦隊の先頭を担うことになる。その旗艦の司令長官及び参謀長は、そのまま聯合艦隊司令長官、参謀長となるわけで、格別優秀な面子を揃えておかなければならない。磐手乗組はまさにその眼鏡に適ったということになる。

 横須賀に着いて、第一艦隊が奥の区画に繋留されている。三笠を一番奥に見ながら乗組全員、甲板へ出てくる。鷲頭艦長が少将へ進級して磐手を退艦するのだから、登舷礼式を以って見送るのである。

 艇首に少将旗を掲げた艦載水雷艇が、舷梯のしたで待っている。乗組員が整列するなか、鷲頭は舷門から降りて、いかにも慣れた身ごなしで、ひらりと乗り込む。桟橋に向かってゆく艇のうえで、鷲頭は正しく挙手の礼をとり続け、磐手に答えていた。

 「いやァ、いくら三笠でまた顔を合わすといっても、やっぱりこうして見送ると、寂しいものだなあ」

 と、士官の誰かが言う。確かに艦長がこうした形で去るというのは喜ばしいことだが、皆が尊敬してきた艦長となると、寂しさもひとしおである。

 しんみりとした艦上に、すぐさま上陸用意の号令が飛んできて、余韻も何もあったものではない。水兵下士官そろって、何だ、とんだ野暮天だなァ、などとぶつくさ文句を言いながら、それでも栄転と休暇込みの晴れの上陸に、その足は軽やかだった。

 こういうとき、横須賀鎮守府の港務部長が汽船を伴って出迎えてくれるものなのだが、何もなかった。那智のいう“天敵”が長官に鎮座しているのだから、無理もない。瀟洒な白亜の鎮守府庁舎をちらりと横目におさめ、鷲頭はひと足さきに陸へあがった。

 いくら礼儀に煩い鷲頭でも、未だ引継ぎもしないうちに、鎮守府へ―というより長官へ―挨拶にゆくのは避けたかった。そ知らぬ顔をしながら、磐手と陸を忙しく往き来する内火艇などの艦載艇を眺めている。

 ほぼ全乗組を陸に移したが、これだけの大所帯にもかかわらず、遅滞はなかった。これから昼の休憩を挟んですぐ、三笠での交代式である。これほど忙しい引継ぎはそうそうない。三笠ではつい昨日、同じように艦長の退艦を見送って、全員が上陸したらしい。新しく配属になる連中はまた内火艇に分乗し、舷梯を登って甲板へ整列する。あとは長官の乗艦を待つばかりとなった。

 「おい、そう言えば今度の長官は誰なんだ?」

 と、司令長官を迎えるサイドパイプを聴きながら、集まった者たちのなかで囁かれるほど、明治四十二年、四月に赴任してきた第一艦隊司令長官は、目立たぬ人物であった。しかも前赴任地が舞鶴鎮守府で、それも長いこと―言っては失礼だが―閑職同然に居たという。

 見ようによっては四年前、まったく同じ道を辿って聯合艦隊司令長官となり、日本海海戦で三笠の艦橋に立ち、露西亜帝国のバルチック艦隊を撃滅した某海軍大将がいるだけに、うっかり来歴だけでは測れない。

 よもやその新任長官が、小倉の合同大演習前に磐手の艦橋に立って、短艇競技の練習風景を熱心に眺めていたことを知るものは、鷲頭をのぞいて、ここには誰もいない。

 司令長官は、海軍中将藤原格その人であった。

 いままで、鷲頭艦長よりも無口な人物を見たことがないと思っていた乗組は、藤原司令長官の奥州訛りの挨拶を聞いて、更に輪をかけた無口に驚いた。すこし前なら、

 「こんなダンマリふたりで、やっていけるのか」

 と、陰口が飛び出すところだが、もう今となってはそんな幼稚な言葉をくちにする者は一人もいない。小柄で、ほんの僅か背を丸め気味にして、しかしゆったりと歩いている藤原長官の姿は、将官の風格はあっても気負うところがなく、近寄りがたいといった雰囲気は微塵もない。

 「こう言ってはなんだが、郷里のお祖父様を思い起こさせるひとだな、長官」

 頼もしい“おやじさん”が来た、と艦上の乗組は気持ちを新たにしたのであった。
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| 綿津見の波の色は・41―50話 | 22:51 | comments:0 | trackbacks:0 | TOP↑

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