大日本帝國軍の愛と友情の日々

逓信省の検閲済でありますが、男色趣味満載ですので、苦手な方は華麗なターンでご退却下さい!所謂BL小説サイトです。右側に注意書きがございます。必ずご一読ください

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  綿津見の波の色は・第肆拾壱話

 酒宴を終え、それぞれの起居する場所へ戻り、寝台へ潜り込んだ。波の音が心地よい眠りへ誘う。総員起しの前に、嵩利は目を覚ました。

 目覚めたとき、まるで夏祭にゆく朝に感じるような気持ちだった。そのような気分のまま起き出して、まだ夜明け前の薄闇に浮かぶ艦の、前甲板を散歩していると、誰かがラッダーをあがってくる靴音がした。

 振り返ってみていると、すぐに守本がその長身を現し、上甲板に立つなり、窮屈そうに気持ち屈めていたからだを伸ばして、解している。嵩利を認めると、守本は相好をくずして傍へやってくる。

 「早いな、きちんと眠れたのか」

 「うん」

 こどものような返事を寄越す、嵩利の天真爛漫な表情を、守本は好ましく感じていた。そして、嵩利がこのような態度をしているのを初めて見た気がして、何か照れくさかった。

 ―そうか。こんなに、可愛気のあるやつだったのか―

 顔を見合わせて、眠気が欠片もないのを確かめると、どちらともなく笑いあう。

 このひと月ばかり、守本に引っ張り出されて、短艇競技の訓練に出ていたが、実に日々が飛ぶようにして過ぎ、充実した毎日であった。別に副官稼業が嫌というわけではないが、やはり嵩利は海に触れているほうが適いている、とつくづく感じたのであった。

 「なあ、千早。おれは貴様を見直したし、好きになった。面倒見はいいし、何と言うか、貴様が居ると分隊の奴ら、ほっとしているんだ。うまく言えんが…、そういうことだ」

 嵩利から滲み出る、ひとを包みこむようなやさしさを、下士官水兵たちは感じ取っていたのかもしれない。小柄なからだの奥で、江ノ島が生み育んだ、綿津見の申し子の魂が輝いている。一種底知れぬ力が、嵩利にはある。

 「よせよ、守本。しかし、兵学校のころは話もしなかったのに、こうしてみると不思議なもんだなァ」

 「ああ…、そうだな。―千早、もし困ったことがあったら、必ず言えよ。今度はおれが助ける番だからな」

 嵩利の華奢な肩を両の掌で確りと掴んで、向かい合った。真剣なまなざしで、守本は宣言をする。まことに侍の気風を受け継いだ男であった。かれが、嵩利の親友になったのは、このときからと言っていい。


 総員起しの喇叭が鳴り響き、毎朝の日課が終わると、いよいよ各艦、順次海上へ出てゆく。

陸海軍合同の大演習は、お上の天覧がある。だからという理由ではないが、大層熱が入る。観艦式のあと、赤軍青軍に分かれての陸海軍合同模擬戦闘、複雑な艦隊運動を披露し、無事に演習を終えた。

 いよいよ、艦隊対抗短艇競技である。艦から短艇を海へおろすときも、他の艦と違い磐手は手際がよく、艇に乗り込んだつわものどもは、眼を輝かせて、どこか楽しむような様子すらあった。嵩利は舷からかれらを見送るなり、ぱっと身を翻す。

 「千早!どこに行くんだ」

 「うん、あいつらの応援にさ。指揮をとったぼくたちが行かないでどうするんだ。艦から高みの見物なんて嫌なこった。守本も行くべ、な?」

 「それは構わんが…おい、応援団長に一言ことわったのか?」

 「あ、言ってねえ。支度してくるから、頼む」

 まるで言葉まで普段と違う、腕白坊主のような嵩利の振る舞いに、守本は眼を白黒させながらも、頼みを引き受け、大わらわで来た方へ戻る。磐手の艦上は乗組でごった返しており、砲塔もマストも人で埋め尽くされていた。日の丸の旗と磐手と書かれた旗が、あちこちで振られている。

 応援団長は一期上の澤村少佐で、急遽海上に出ると言うとやはり、予定にないことだと少し渋い顔をした。それでも、守本と嵩利が熱心で、日々の指導に打ち込んでいたのを見ていたから、

 「しょうがないなァ、救護用のボート一艘まわしてやるから、行ってこい」

 と、許可をおろしてくれる。守本が綺麗に巻いた日の丸の旗竿をかついて戻ると、嵩利はもう下ろしたボートに腰をおちつけている。他にもちゃっかりと嵩利の尻馬に乗って、漕ぎ手を名乗り出た水兵が幾人かいた。櫂をとって出発の準備は万端である。

 一方そのころ、艦長である鷲頭はどうしていたかというと、後甲板へ出て設けられた席に着いて、コースとなる海上と、沖に浮かぶ旋回点のブイをじっとみつめていた。ここを回り込む技の良し悪しが、勝敗を分けるのだ。

 「艦長ォー、応援に行ってきまァす」

 聞き慣れた、しかし屈託のない声が何処からかして、見回してみるが姿がみえない。

 艦上からではないらしいと気づき、立って舷傍にゆくと、艦から離れつつあるボートのなかから、生真面目な顔をしつつ敬礼を寄越している。当日は艦に残る組のはずだが、我慢できずに飛び出したのだろう。嵩利がまったくの腕白者に戻っているのを認めて、鷲頭は微笑ましくおもいながらも、表情を崩さず、正しくその敬礼に答える。
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| 綿津見の波の色は・41―50話 | 22:24 | comments:0 | trackbacks:0 | TOP↑

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