大日本帝國軍の愛と友情の日々

逓信省の検閲済でありますが、男色趣味満載ですので、苦手な方は華麗なターンでご退却下さい!所謂BL小説サイトです。右側に注意書きがございます。必ずご一読ください

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  綿津見の波の色は・第参拾捌話

 まだ、この座はそれなりに和やかに賑わっているが、城内と鷲頭の間に挟まれた嵩利は、身を切られそうな寒気を感じている。鷲頭は食事会のあとも、輪に加わらず、黙々と杯を重ねて、なにか深沈と考えこんでいる様子であったし、どこかいつもと様子が違っていた。

 「人事について、私はとやかく言える立場にはありません。そう言われましても、返答できかねます。…秘書官に採りたいのでしたら、長官から人事局長へ推薦状のひとつでも、送れば済む話でしょう」

 にべもない。確かに筋の通った返答だが、城内はどこか面白そうに笑みを浮かべるなり、するりと両の腕で嵩利を背後から抱きとめる。先刻から心中穏やかでないのは、嵩利も同様であったが、ぴくり、と身をこわばらせて、その抱擁を甘んじて受ける。

 「じゃ、千早くんは、ぼくが貰っちゃうよ」

 「そういう意味であれば、ご遠慮願いたい」

 ぐっと眉間を嶮しくし、城内を猛禽のような目つきで射る鷲頭。相手が中将、鎮守府長官ともなれば嵩利は逆らえまい。それを知って城内はこの挙に出たのか?

 はしたないと思っているのか、嵩利は救いを求める眼差しを、鷲頭へ向けることすらしていない。伏せた瞼、震える睫から今にも涙が零れるのではないか、と鷲頭はその健気さに切なくなりつつ、城内の無神経さに苛立ちを隠せなかった。

 「かれを物のように扱うのは、止めていただきたい。わからないんですか、黙っているからといって、千早くんが諒解しているわけではない。その沈黙の意を酌まずにつけ込むとは。あなたは無邪気に振舞っているが、それがいけない。長官のもっとも悪いところです」

 「ふゥん、鷲頭くんがぼくにそこまで言うのは珍しいネ」

 ばっさりと斬り捨てるように口撃され、短所を指摘されても、城内は泰然としている。機嫌を損ねたわけでもなければ、腹をたてているわけでもなく、首をかしげながら呟くようにして言い、それから浮かんだ疑問を鷲頭へ投げかける。

 「相手が誰にしろ…確か、きみの信条は、一度きりじゃなかった?」

 確かに、そうだ。否、そうだった。いまは違う。鷲頭はそのような交際はしない。何より大切な、嵩利がいる。座卓へ、とん、と右手を軽く握りしめて置き、鷲頭はほんの僅か俯いて、一度息を吐く。

 「いつまでも、同じと思われては困ります。私にはもう…ただひとりが―千早くんだけが居ればよい。そういうことです」

 顔をあげて、鷲頭は城内を見据えた。そうしてきっぱりと言い切った言葉が、嵩利の耳朶をうつ。体中に電気がはしったかのような痺れが駆け抜けて、早鐘のように胸が高鳴る。

 「―ですから、長官が千早大尉を秘書官へ推して、呉へ引っ張ることについては軍務上のことで、私は口を挟みません」

 ―それ以外については、一切認めない。言外の意を鋭い視線にのせて送る。本当はもっと違う切り出し方で、この場に集まる友人一同へ、嵩利の存在を告げたかったのだが。

 「城内、そろそろ、その手を引っ込めといたらどうなんだい。鷲頭に叩ッ斬られても知らネェぞ」

 酔ってほんのりと頬を染めた那智が、城内の後ろを通りすがりながら、忠告する。手に葡萄酒の壜とグラスを提げて、その涼しげな貌に似合わず、豪快な笑い声をたてる。

 「めでてぇじゃねェか、鷲頭がとうとう身ィ固めたんだからよ。士官に手ェ出しても、三角定規で律儀に線引いてよう、まったく。それで面白ェのかって、おらァ前に、訊いたことがあったな」

 「ぼくの岡惚れに終わったという訳かネ」

 「贅沢抜かすな。お前ェさんは、女だろうが男だろうが黙ってても寄ってくる身分だろォ。おい、城内。千早大尉に手ェ出したら、おらァ、許さねえぜ」

 「きみが言うと、冗談にきこえないんだよ」

 威勢のいい言葉が、那智のくちから出てくる。かつて兵学校時代、あまりの放蕩ぶりに腹を立てた那智に、練習艦のマストへ、逆さ吊りにされかけた経験があるだけに、城内は渋々、嵩利への抱擁を解く。

 「わかりゃァいいんだよ。さ、お前ェさんはこっちィ来て、無粋はしねェこった」

 「きみねえ、ここは待合じゃないンだよ。話がわかったんだから、それでいいじゃないの」

 「よくねェんだよ、この朴念仁」

 那智は豹のような無駄のない体躯をしているが、背はさほど高くない。そのかれが、自分よりも背も体格も遥かに上である城内の腕をとって、引っ張り上げるようにして立たせる。駄々っ子のように口を尖らせる城内は、昼寝は嫌だと我儘を言う子供のようであるが、那智はそんなことには頓着せず、席を外させてしまった。

 その後も、嵩利はずっと顔を伏せたままで、座卓のしたで手を膝に置いて、開いたり閉じたりして、気持ちを落ち着かせようとしていた。そこへ不意に、手を確りと握りしめられる。温かい、力強い掌。促されるように、ぐっと力を込められて、漸く安堵する。

 隣を見れば、いつもと変わらない態度で、杯を傾けている鷲頭の横顔があった。ちらり、と向けられた視線には、譬えようのないやさしさと甘さだけがある。

 ―春美さん。
 
 顔に上がる熱はどうにもならず、酒に酔った熱に隠してしまえるのを、このときほどありがたいと思ったことはなかった。
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| 綿津見の波の色は・31―40話 | 19:38 | comments:0 | trackbacks:0 | TOP↑

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