大日本帝國軍の愛と友情の日々

逓信省の検閲済でありますが、男色趣味満載ですので、苦手な方は華麗なターンでご退却下さい!所謂BL小説サイトです。右側に注意書きがございます。必ずご一読ください

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  綿津見の波の色は・第参拾漆話

 着いたのは、小槙という全く目立たぬ小料理屋であった。こぢんまりした日本家屋は、南の国特有の緑に囲まれて、奇異な感じもしたが、なるほど、隠れ家と呼ぶにはもってこいの場所であった。

 奥の間へ通されて、嵩利は思わず敷居をまたぐつま先を躊躇ってしまった。そこに居たのは三鎮守府の重鎮と、上官の鷲頭のほかに、陸軍の将官が三名と佐官が一名居たからだ。つい先刻、城内長官に唇を奪られたことなど、頭から吹き飛びそうなほど、この顔ぶれには驚いていた。

 ―一体、何があるっていうんだ?

 こんな場所に、嵩利が連れて来られる意味もわからない。いくら加藤と鷲頭と、夏季休暇を故郷で気兼ねなく過ごしたからといっても、いまこの場に嵩利が加わる理由にはならない。

 巨頭の出迎えを仰せ付けた、鷲頭本人へ眼を向けてみても、那智長官の隣で、何時にも増して眉間を嶮しくしているばかりで、嵩利には眼もくれない。この様子では説明すらしてくれなさそうである。

 「おゥ、来たか」

 こっちィ来て座んねェ、と加藤のかげに隠れている嵩利を那智がめざとく見つけ、頻りに手招きする。これだけの顔ぶれだというのに、人々が醸す雰囲気は非常に和やかだった。―鷲頭以外は。

 「だめだめ、千早くんはぼくの隣」

 にこやかな声と共にすっと腕が伸びて、城内に手をとられる。所作に嫌味がなく、まるで親しい友人を部屋へ招き入れるかのような、そんな温かみがある。誘われるまま、嵩利はチョコンと城内の隣へ席を占めたが、ますます居心地がわるい。ちょうど鷲頭の前だったのだ。

 「いいかい千早くん、あちらはネ、参謀総長の杉惟之中将、陸軍次官の川上宏信中将、参謀本部第一部長の恩田毅三郎少将、参謀本部第一部第二課長の山口和胤中佐だよ。今日はちょっと大切な話があるから、きみも確り聴いておくんだよ」

 城内から紹介され、嵩利は息を飲んだ。だが、陸軍の重鎮たちにも、目礼で折り目正しく挨拶をしてゆくことは、もちろん忘れなかった。かれらは階級が遥かに下である嵩利の挨拶に対して、穏やかに笑みながら、いちいち頷き返してくれる。

 それに、陸軍は将官にもなると敬称に閣下を必ずつけねばならない、とかいろいろと喧しい決まりごとがある。城内の紹介は海軍式であるのに、かれらは別に目くじらを立てることもなく、一種偉そうな、四角張った態度の欠片も見あたらない。陸軍にそういったしきたりに拘らない人物もいたのかと、ひそかに感銘をうけた。

 ちょっと大切な話というのは、他でもない軍縮についてであったが、今回の大演習に託けて軍備増大を叫ぶだろう輩を牽制するための話し合いであった。陸軍の首脳はともかく、海軍はその任務が海上だけあって、それぞれ方々で軍務についている。従って頻繁に集まって意見を述べあうことは、なかなかに難しい。

 話し合いの終わりしな、那智の隣に座って黙りこくっていた鷲頭が漸く口をひらいた。どうやら、海軍軍縮派の意見の纏め役を引き受けていたらしく、自身の考えも含めて、的確ながら言葉すくなに思うところを述べていった。

 普段、傍に居ないときなど、軍務の他にこういうこともしていたのかと、嵩利は思い返していた。傍に居ても何かしら書物を繰っているときなど、邪魔にならぬようにしていたが、そのようなことに首をつっこんでいることなど、鷲頭は微塵も漏らしたことがなかった。

 確かに軍縮は大事な問題だが、そこは本来の軍務に不必要な、様々な軋轢が待っているに違いない。嵩利が純粋に職務に向かえるよう、鷲頭が日々気配りをしていることは身に染みてわかっている。嵩利をこの問題に関わらせるようなことは、したくないと考えているはずだ。

 いつにも増して鷲頭が不機嫌なのは、自分がここへ来てしまったからかもしれない、それが脳裏にチラリと浮かんだ。どうしたものか―確り聴いていなさい、と城内から諭されたにもかかわらず、心が浮つきそうになる。

 城内が音頭をとって話し合いを締めくくると、あとは和やかな食事会へうつり、海軍側はまったく遠慮会釈のない、兵学校の同期会のような砕けた口ぶりになって、言いたいことを言い合っていた。

 陸軍の重鎮は、めったに聞けぬ海のうえでの話に、海軍将官のあいだに挟まって面白そうに耳を傾けていた。特に参謀総長などは土産話でも聞くような態度で、しょっちゅう磊落な笑い声をたてている。

 食事が済み、酒が程よく座に回って話が弾んできた頃。何かの拍子でまた人事についての話になり、鷲頭だけが未だ大佐で艦長であることが、話に出た。

 「きみがもし、大佐で予備役なんかに入れられたら、ぼくたちが黙っていないからネ。心配しなくていいよ。ああ、そうだ。やっぱり次の異動で、千早くんを呉鎮に来させてもらいたいなあ。ぼくの秘書官を務めて欲しいんだがネ」

 千早くんが来てくれたら、嬉しいんだけどなあ、と城内が無邪気に言って、抱くようにして嵩利の肩へ手をかけてくる。

 「鷲頭くん、ずるいねェ。こんな可愛い子を三年以上も手許に置いて。陸にいると副官は一年で換わったりするから、時々艦隊組が恨めしくなるよ」

 ほとんど冗談で言ったのだろうその言葉を受け、鷲頭は思いの外鋭い眼差しを城内へ向ける。何も言い返さないが、そのこめかみのあたりが、ぴりぴりと震えていた。相当に苛立っている証拠だ。なんだか、嵩利は針の筵に座らされているようで、気が気でなくなってしまった。
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| 綿津見の波の色は・31―40話 | 01:00 | comments:0 | trackbacks:0 | TOP↑

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