大日本帝國軍の愛と友情の日々

逓信省の検閲済でありますが、男色趣味満載ですので、苦手な方は華麗なターンでご退却下さい!所謂BL小説サイトです。右側に注意書きがございます。必ずご一読ください

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  綿津見の波の色は・第参拾伍話

 「おゥ、なんだい。こりゃァ随分と可愛いのが出迎えてくれたもンだな」

 車から降りて官舎の正門前に立った中将は、開口一番伝法な言葉遣いでそう言って、あたまからつま先まで、出迎えを務める嵩利を眺めた。

 佐世保鎮守府司令長官の、那智源吾中将である。

 東京―かれが生まれたころは、まだ江戸と呼ばれていた―は深川のうまれ。理屈に合わないことと、理不尽に物事が停滞することが何より嫌いで、鷲頭と昵懇の仲だけに、なかなか理知的で現実主義者である。その割に洒脱で粋なおとこ振りをみせる、中村座の役者のような貌立ち、容姿と共に絵になる人物である。

 「海軍士官に向かって何です、長官。芸妓相手じゃないんですから。…千早大尉、すまないね、迎えに来させて。本来なら私たちが動くべきなのだが」

 横から呆れたように窘めてから、嵩利の役目をねぎらったのは、参謀長の新見暢生少将である。

 このひとは越前の出身で、影のようにひっそりと立ち回って、その功績をほとんど表に出したことがないという。無欲な廉潔の古武士として海軍内で有名である。

 そんな新見から窘められた那智は、こういうときは可愛げがねェんだから、お前ェさんはよ、と、粋な仕草で振り向いて眉をあげ、新見を見遣ると鼻先で笑い飛ばす。姿勢を正して佇んでいる嵩利の傍へ立つと、遠慮会釈なしに軍帽をとりあげ、指さきでくるくると皿回しのようにしながら、

 「可愛いものァ、可愛いだろうがよ。ま、細けェこたァいいよ。ところで千早大尉、鷲頭はどうした、まだ艦に残って降りて来ねェのかい」

 と、短く剪った嵩利の髪をわしわしと乱暴に撫でながら、訊いてくる。しかし、嵩利の答えを待たず、無造作に、ぽすんと軍帽をあたまに載せたかとおもうと、背後から腰へ腕を回して、軽く抱き寄せる。

 『長官ッ!』

 みごとに声を被らせて言う新見と嵩利。へへへッ、と那智は悪びれもせずに笑って、嵩利から一歩、身を離す。

 「オイオイ、洒落だ洒落。何だよ、黄色い声出しゃァがって面白くねェなあ。鷲頭の嫁に手ェ出すような無粋なまね、おらァしねェよ」

 そう言っていることが本心なのは、その前まで飛ばしていた軽口と、まったく声音が違っていることでわかった。それに、ちらりと新見へ向けた眼差しが、一種の鋭さを持っていて、参謀長はそれでぐっと黙り込んでしまった。

 その微妙な機微のやりとりで、嵩利は敏感に察していた。このふたりが、鷲頭と嵩利の関係と全く同じなのだということに、気づいたのだった。

 「横鎮の煩ェのが来るまえに、いつもの場所にしけこむとするか。おらァ、あんな輩と顔つきあわせてめし食うのは、ごめんだね」

 車に長時間乗っていたからだを解すように、那智はひとつ伸びをしてから、ゆったりとした口調で言った。

 「その前に、面倒なやつを艦から降ろさねェとな。ひとりで仕舞いこんでやがったら、只じゃァおかねえ」

 鷲頭を案じているのが、ありありとわかる。こうして息をまいている那智は、まるで兄か何かのようで、あの鷲頭をグウの音も出ない程、遣りこめてしまいそうな威勢のよさに、嵩利は驚きを隠せない。

 呉鎮守府の城内指令長官と加藤参謀長が、このあと来る筈であるから、千早大尉はここでもう少し待つように、と言い置いて、佐世保鎮守府の重鎮ふたりは揃って車に乗り込み、去ってゆく。それは、まるでちいさな嵐のようで、黒塗りの車が遠ざかるのを、嵩利は目を丸くしながら見送った。
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| 綿津見の波の色は・31―40話 | 23:22 | comments:0 | trackbacks:0 | TOP↑

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