大日本帝國軍の愛と友情の日々

逓信省の検閲済でありますが、男色趣味満載ですので、苦手な方は華麗なターンでご退却下さい!所謂BL小説サイトです。右側に注意書きがございます。必ずご一読ください

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  綿津見の波の色は・第参拾肆話

 春先を待って、盤手が率いる北方警護艦隊は、小倉へ向けて出航した。

 今年は陸海軍合同の大演習があり、大湊から南へゆくにつれ、春の匂いが海風に乗って艦艇へとどく。灰色の海と真っ白な雪に閉ざされた冬の北方にいたころの、ともすればほの暗い、沈んだ艦隊の気分が、すうッと晴れてゆくようでもあった。

 新品少尉たちにとって、鷲頭艦長は厳父のようにありがたい存在であったが、所謂、出世街道からみれば、鷲頭の歩むそれは、みごとにコースを外れている。それにはひとつ原因があった。

 日露戦争後、海軍において、艦隊の性能を質量ともに向上させることに着目し、のちの八八艦隊思想の土台ができあがりつつあった。軍艦は国産化に成功したけれども、建造費はますます日本の財政を圧迫しており、鷲頭はその現状に苦言を呈したことがある。

 その発言に吃驚したのは親しい友人たちで、めったに口を開かぬ鷲頭が、水交社の片隅でぽつりと漏らしたその論は確かに正しく、“軍人政治に関与する勿れ”ということになっていても、国民を押し潰すかのような重税が、海軍の軍事予算となっている事実に対して、“国を守るため”と、開き直って娑婆を闊歩するまねは、鷲頭にはできなかった。

 日英同盟があり、国債を外国に買って貰って、ようやく資金を調達しての、日露戦争辛勝であったことを、海軍の上層部は忘れているような節が、鷲頭には窺えた。日本海海戦の神がかったような大勝が、その原因のひとつにあるのは、否めない。

 事なかれ、長いものに巻かれろ、右へ倣え、といった村社会で成り立ってきた日本民族の慣習は、軍隊という組織においてはその舵取りを、いつか誤らせるときが来るのではないか、と鷲頭は親友たちの前で零した。

 それから、そのはなしが何処で漏れたのか、鷲頭はひと月も経たぬうちに、あの海戦で栄光を浴びた日進の艦長を降ろされる。その後、海軍大学校教官、候補生遠洋航海艦隊、北方警護艦隊、といった道を辿って今に至っている。このような人事のあとに来るのは、待命がほぼその道だが、このまま予備役に入ろうが、鷲頭にとってそんなことはどうでもよかった。

 親友の加藤は、鷲頭の論をかたく支持していたが、独特の情報網から得る、現状の政府軍部のうごきは、“時機不相応な晴着を仕立てる”ことに熱心で、とても苦言を呈せる余地はなかった。加藤はひとまず知らん顔をしながら、鼬のように注意深く、行く先を見つめてゆく道をとった。

 いつも怖い顔をして、艦の真ン中に鎮座している鷲頭だが、その心は常に自分以外の者たちに向けられている。我が物顔をした海軍が、国民からソッポを向かれるような、そんな事態だけは避けたかった。

 ―なあ春美、お前が海軍大臣になるなら、おれが次官になってやるよ―

 次官として海軍省へ異動になりそうになったとき、加藤はのらりくらりとかわして“軍人”の立場に留まったが、鷲頭の前でそう言って、暗に励ました。加藤は相変わらず、陽の当たる表舞台に立つような職に就いて、鷲頭に先んじて、先年の秋に少将へ進級している。次官騒動の際、間にはいった城内長官に引っ張られて、いまは呉鎮守府の参謀長である。


 小倉に、聯合艦隊さながらの百五十隻から成る規模の、帝國海軍艦艇が現れ、その壮観さ観たさに、近隣の県民が見学につめかけた。未だ演習は先だというのに、早くもお祭りのような賑やかさで、街は陸海軍の歓迎に埋め尽くされている。

 盤手をはじめとする北方勤務に就いていたすべての乗組員に、二日間の上陸許可をおろした鷲頭は、そっと安堵のため息をついて、艦長私室へ引っ込んでいった。いまは、副官すら傍にいない。

 嵩利には佐世保、呉、舞鶴鎮守府から小倉へ来る司令長官、及び参謀長を迎えるための接待役を仰せ付けて、艦から放り出してある。別段、嵩利はそのことに対して不審も抱かず、むしろ重要な役柄を任されて、どことなく緊張感を漂わせながら艦を降りていった。

 この当時、佐世保と呉、舞鶴の長官、参謀長は、ふしぎな縁か、互いに信頼しあっている同期か先輩の将官ばかりであった。いわゆる、軍縮賛成派である。特に鷲頭の爆弾発言を、眉ひとつ動かさずに受け止めた、呉鎮守府の城内司令長官は、軍縮を唱える者たちが頼りにしている、地下組織の親玉のような存在になっている。

 無論、嵩利はそんな対立派閥が海軍に於いて水面下でぶつかり合っていることなど、まったく知らない。いつもの、どこか清々しい無邪気なものを漂わせたまま、小倉の街にある海軍官舎へ、巨頭たちを出迎えに足を踏み入れる。
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| 綿津見の波の色は・31―40話 | 19:11 | comments:0 | trackbacks:0 | TOP↑

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