大日本帝國軍の愛と友情の日々

逓信省の検閲済でありますが、男色趣味満載ですので、苦手な方は華麗なターンでご退却下さい!所謂BL小説サイトです。右側に注意書きがございます。必ずご一読ください

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  綿津見の波の色は・第弐拾漆話

 嵩利をふくめ、ガンルームの士官たちは、水交社の小ぢんまりした、宿と喫茶店を合わせたような施設へ集った。

 かれらはまもなく、酔った勢いで大いに盛り上がった。また、交替で月曜から海へ出る者などは、海上での状況によっては暫く上陸が見送られる場合もあり、そのぶん一層賑やかに騒いでいた。若者の通例で、いわゆるヘル談にも花が咲き、傍からみればだらしのない、どこか猥雑な雰囲気にさえなっていった。

 女性との性経験が浅い嵩利は、そのヘル談にはついてゆけず、却ってあたまのなかに、上官の顔が浮かんできてしまい、甘い秘め事までが思い返されてくる、その対処に困った。さほど酔ってもいないのに、頬が赤くなっているのはそのせいであった。

 手練手管を知り尽くした鷲頭に、文字通りからだへ教え込まれて、それなりに男色の味を知りつつあるが、それでも嵩利の初心なふるまいは中々、その身を潜めない。

 それというもの嵩利にとって、上官との蜜月は敬愛するひとへ身を捧げる特別な行為であり、鷲頭も嵩利に対して欲望も愛情も隠さずに示してくれる。祖父の影響もあってか、男色そのものに対する認識がそういった、ことばのない固い契りなのだ、という位置づけになっている。

 ところで、鷲頭艦長の性癖を知っているのは、ごくごく一部のかれと親しい者だけで、この場にいる士官たちは、嵩利が艦長の“お手付き”であることを知らない。だからそうして顔を赤くしている嵩利へ、他の同期などが面白がって絡んでくる。

 そのうちに卑猥なはなしは、艦であったことがらに移り、当直についていた水兵を暗がりへ誘って唇を奪ったことがあるとか、長官付きの従兵は美少年で見目がよいのが多いから、航海が長くなると食事どきに給仕をしている姿によく目が行くとか、ひどいものになると、こっそり従兵を自身の士官室へ連れこんだとか、そういった内容になった。

 どうもかれらは、見目のよい従兵や水兵などにちょっと手を出すことくらいは、何でもないことだとおもっているらしかった。あまりに悪びれないそれらの告白に、嵩利は目を白黒させるしかなく、しかし自身の上官とのことは、万にひとつでも匂わせるようなことはしなかった。

 表面では何でもない顔をして笑っていたが、内心はおだやかでない。その軋轢に神経をへとへとにさせて水交社を後にしたのは、いつもより少し遅い、夜十時をとっくに回ったころだった。


 道を辿って鷲頭の居る隠れ家へ顔を出したが、浮かぬ気持ちを隠せず、今日は文机へついて本を読み耽っている上官の、眉間の皺をちょっと見やってから奥の間へ引っこむ。襖を閉めてから、そっと溜め息を吐いて軍服を脱ぎにかかる。

 着込んだ外套を壁掛けにかけたところで、飾緒から何から勤務についたままの格好であるのを、取るのも面倒になって畳のうえに寝ころがってしまう。酔いも手伝って、億劫になっている。

 帰りの道すがら、鷲頭に訊いてみたくて堪らないことが、頭のなかでずっとぐるぐると回っている。これは普段の、謹厳実直な上官の顔でいるときの鷲頭に対してでなく、嵩利とふたりきりでいるときのかれに対してである。嵩利を大事に思ってくれているのは、偽りないとしても、いったい自分との関係をどう捉えているのか、知りたかった。

 いままではっきりと訊ねたことはない。訊かずともきっと同じおもいでいてくれているだろう、と考えていたからだが、今更こんなことを訊いたら、馬鹿者、と例の怖い目で睨みつけられてしまうかもしれないし、或いは、上官の気持ちを、踏み荒らすようなことになってしまうかもしれない。

 程よく酔いが回って、嵩利はぼんやりした思考のなかで、上官に訊いてみたいことがらを玩んでいた。寝返りをうつと、飾緒の石筆が触れあって澄んだ音を立てる。それが、ふいに鎌倉の生家を、縁側の軒先に揺れる鋳鉄の風鈴を思いおこさせた。

 同時に、あの夏に過ごした上官との屈託のない時間がひどく懐かしく、ともするとそれはもう、手の届かないところへ行って、二度と嵩利のもとに訪れて来ないのではと、こどもじみた寂しさに襲われもした。

 「千早くん、気分が悪いのか?」

 音を立てずに襖を開いてみれば、副官はこちらに背を向けて、畳のうえに丸くなって横臥している。部屋へ入ってきた様子からは、そんなに酔っているように見えなかったが、鷲頭は傍らに屈みこみ、背をそっと撫でさすってやる。

 いつもより遅く訪ねてきたのは、やはり何かあったのだろうか。顔を覗きこむと、副官はちらりと視線を絡めたが、憂いの浮いた眼を伏せがちにして外してしまう。

 双方暫くだまっていたが、やはり嵩利は堪りかねて口をひらいた。仲間内での怪しからん話の経緯を、酔ってもつれる舌にのせて、愚痴のようにこぼす。鷲頭は真面目な表情で聴きつつも、副官のあたまを、胡座をかいた膝へのせている。

 「―それで、怒らずにいて欲しいのですが」

 ふとそこで言い澱み、副官は憩った膝へ甘えるように頭を擦りつけてくる。鷲頭はその髪へ手を置き、あまりやさしいとは言えぬ手つきで撫でながら、何だ、言ってみ給え、と内心にある予感を抱きつつ、多分に訝しい様子をみせて促した。

 「もし…、ぼくが他の士官に…触れられたか、唇を奪られたか、不意打ちにそういったちょっかいを出されたら、艦長はどうしますか」

 公を離れてふたりきりなると、上官は驚くほど色事に対して大胆で、それで当たり前のような顔をしている。嵩利に対する振る舞いについては言を俟つまでもない。だから、いままで―つまり嵩利とこういった仲になる前、鷲頭が他の士官などに対して出来心で、つまみ食いの如き行為をしたことがあるのか、それを訊きたかったのだが、本人を目の前にするとさすがに憚られた。

 悩みに悩んで、結局はこんなかたちになった。

 「そもそも、そんなことにならぬよう、きみへの教育は慎重に行っているつもりだが?」

 至って平然とした答えが返ってくる。ほぼ即答にちかく、察しのよい上官だから、質問の裏まで読んでの返答だろう。後ろめたいものがないのは、明らかだった。すぐに上官の手が頬を滑って、指先で耳朶を吊り上げるように抓られ、嵩利は痛みに顔を顰めた。

 「げに、信用を置いて貰えんようになったものじゃのう。陰で漁色をしちょるちゅうても、そがいなええ加減な気持ちで、馬鹿な真似をしたことは一度もない。見くびられたものじゃ」

 郷里ことばで、裏の質問に対する答えを返しつつ、鷲頭は副官を睨みつけた。かれに対してその意図の、大した説明もせずに、黙って“教育”を続ける自身の不器用な性格を、すっかり棚にあげている。

 「艦長が…ぼくをどうなさりたいのか、その点はお任せしていますけれど。でも、何も仰ってくださらないから、時々とても不安になるんです。だから、同期のはなしをきいて…、艦長がぼくとのことを、どう考えているのか知りたくなって仕様がなくて」

 遅かれ早かれ、浮かぶのがわかり切っている筈の、こういった副官の可愛らしい不安に、鷲頭は腹を立てている。こうなると、まったく困った“暴君”になってしまう上官を、嵩利はそれでも怯まずに、あとは無言の訴えに出てみせた。
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| 綿津見の波の色は・21―30話 | 01:52 | comments:0 | trackbacks:0 | TOP↑

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