大日本帝國軍の愛と友情の日々

逓信省の検閲済でありますが、男色趣味満載ですので、苦手な方は華麗なターンでご退却下さい!所謂BL小説サイトです。右側に注意書きがございます。必ずご一読ください

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  或いは終わりと始まり・第陸話

 誠実の塊のような、息子とも弟ともおもう和胤が縁談をことわっている本当の理由は、惟之自身のためであることを知っていた。だから、この悪戯には、一種理不尽ともいえる残酷さがないでもなかった。現に和胤は、哀れなほど打ちひしがれてしまっている。姪の千代も、昨晩は泣いて過ごした。

 しかしここからが本番だと、惟之はまるで祭祀を取り仕切る氏子の長のような気分で、ひとりいる。ここで、ことがことだけに、どうしても片棒を担いでもらわねばならない人物がいる。ようするに仲人である。白羽の矢をたてたのは、いまは陸軍大臣をつとめている川上だった。

 「こりゃ、ちとまずいことをしたかもしれんのう」

 翌日になって川上へ連絡をとり、電話をきったあと、惟之はすこし苦い顔をしてひとりごちた。昨日思い立ってすぐ連絡すべきだった。和胤と千代とは、昨夜からひとことも口をきいていない。

 和胤に何かあったら、ただでは済ませない覚悟でいるようだった。だが、惟之はそんな姪の覚悟すら、微笑ましく、むしろ頼もしくみていた。何しろ結婚させるつもりでいるのだから、それほどまでに和胤をおもっている偽りない証―真実をみているのと変わりがないからだ。千代の深刻さをみて、父親同然の惟之はのんきなことに、安心しきっている。

 まったくもって迷惑極まりないが、知らないのは当人たちだけである。惟之の悪戯もここまでくると、もはや犯罪ではあるまいかと、おもわずにいられない。しかし、惟之は惟之なりに真剣なのだから、余計始末におえない。


 そして夜。待ち合わせをした料亭の一室では、惟之と川上が奥の間で向かい合って座していた。

 「…ちゅうことでのう。―さすがに、おれも浮かれちょった。いや、やりすぎたと思っちょる。川上さんには甚だ迷惑なはなしじゃが、頼みます。この通り」

 憶面もなくいうと、惟之は川上に向かってあたまをさげた。しかも畳に手をついてまでいる。川上はといえば、あまりのことに言葉も返せないでいる。昔から付き合いのある惟之の、天衣無縫な破天荒ぶりは、知り尽くしているつもりだったのだが。

 「何ち言えばよかか…。勝手にはなしを進めて、山口クンには、何と伝えるおつもりかな、杉サン。かれのことです。いまごろ、すっかい思いつめちょりますぞ」

 「わかっちょる。だからこそ川上さんにも担いでもらいたいんじゃ」

 ぱっと、顔をあげ、なおも惟之は真剣な面持ちで言う。確かに、有為の青年がいつまでも独り身でいることは、この国の将来にとってよいことではない。

 「たのみます、川上さん」

 川上は二度も重ねて懇願され、頷かぬわけにもゆかない。惟之は相変わらず、五十になってもその栗鼠のような愛らしさは消えていない。憎めない、愛嬌のある目を一途に輝かせている。その視線を注がれて頼みこまれ、川上が承諾しなかったことは、いままで一度もない。

 わかいもした、担ぎもそう。そういったとき、惟之がこどものように喜ぶのをみた。まったく無責任なひとだとおもわないでもなかったが、川上は副官をつとめていたときからの和胤をつらつらと思い返していた。弟のように大事にしてきた、和胤の幸せに繋がるならばと、その片棒を担ぐことにした。


 一方、和胤は自邸のなかで千代と顔を合わせることも許されぬまま、ひとまず勤務があるからして、大学校と参謀本部へゆく間だけは杉邸を出ることをゆるされた。

 定刻になって帰宅すると、惟之が怖い目つきで蟄居を促すので、しおしおと自室へ篭ってしまう。考一には、それが何だかさっぱりわからず、きっと軍務に関することで和兄さんはお忙しいのだろう、と適当に見当をつけて、自身も帝国大学へ身を置くだけに、日々勉学に励んでいて、それ以上のことを推測している暇がなかった。

 惟之は参謀総長になってから、自身の執務のために事務所にしている、私室とは別の部屋にこもっていたが、午後八時ごろ居間へ顔をだした。遅い食事を軽くすますと、一階の奥の部屋に千代を呼び、ふたりは対面した。

 「千代や、ひとつ訊くが。どれほど和胤を好いちょるのだ?」

 またしても、いきなりの言葉に千代は面食らった。どう答えたらよいのか。もしかしたら、じぶんの答えひとつで、和胤の身に何か起きてしまうのではないか。とっさにそれをおもった。

 「なぜ、それをお訊きになるのですか」

 「そう、こわい顔をせるな。もっとも…答えを聞かずともその顔をみれば充分か。うむ、わかった。あとは和胤に責任をとってもらうだけじゃのう」

 「和兄さまに、何かあったら―」

 普段とはうってかわって、恐れを知らぬといった千代の剣幕に、惟之は閉口した。可愛がっている姪をこうまで追い詰めるのも忍びない、と、ここでとうとう口をひらいた。

 「なあに、責任ちゅうのは口実でな。そんなに愛しちょるなら、結婚せい。もう決めたんじゃ、和胤も千代を好いちょるじゃろ。それにおれと千代が、和胤にそうして貰いとうて、堪らんのじゃけぇ」

 もっとも頼りになる叔父が、そう言ってあかるく笑い声をあげた。千代は塞ぎきっていたところに、突然この報せをうけて喜ぶよりむしろ、戸惑うばかりだった。

 「まあ…叔父さま。それならすぐに階上へ行って伝えてあげてください。和兄さまのことです、思いつめておられるのでは…」

 「うむ、わかっちょる。あとはおれが何とかせる」

 千代はまだ笑顔をみせなかったが、それでも顔からは沈むような深刻さはなくなっていた。
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