大日本帝國軍の愛と友情の日々

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  或いは終わりと始まり・第肆話

 千代が和胤へ想いを寄せているのは確かで、このことはひとまず、惟之の胸へそっと仕舞っておく。

 こうして花たけなわのころ、杉家は家族が一挙に四人になり、賑やかな日々が続いた。今まで和胤が細事仕切っていた家事のあれこれは、千代がそっくり受け継いだが、毎朝の食事を拵えるについては、和胤の作った“おつゆ”と握りめしを口にしたいと惟之が言ってきかないため、それだけは和胤がときどき受け持つことで収まった。

 ほぼ五年のあいだ、寂しがりの叔父を放って学業へ没頭してしまっていたから、千代はこのことはむしろ、申し訳なくおもっていた。だから敢えて和胤から、それらの作り方を教えてもらおうとしなかった。

 叔父と和兄さんは、ともすると父と息子というよりは、母親とこども―どちらがどちらなのか、言を俟たないが―のように見えることも少なくない。

 惟之が我儘を言う、膝枕に甘えるといったことは毎日のようで、和胤は持ち前のおおらかさで、それらを諾いてやっている。ふたりは千代や孝一の前では、軍務についての憂いなどは一切見せなかった。

 陸軍の頂点にいながら、気負いたつ軍部を抑えるのは、さながら荒馬の手綱を繰るが如くで、容易ならざる難事である。さすがの惟之も骨が磨り減るようなおもいであり、毎晩自邸にいてその辛さを露呈するかわりに、姪と甥の前であっても、和胤に甘えることを憚らずしている。

 他愛のない悪戯をして、気をまぎらわせているから、この最後の難局ともいえる事態に向きあっていられる。

 十日間の期限つきで、惟之の副官を務めていた和胤は案の定、第一部第二課へ呼び戻されることはなく、そのまま参謀総長付副官として正式に職に収まった。身辺に気心の知れた者がいると、惟之の信条としていくら私情を挟まぬとはいえ、やはり心はいくらか休まるらしい。

 特に惟之は遠慮会釈なしにものを言うから、聞くほうもそれなりの耐性のようなものがなければ、うまくやってゆけない。今のような事態となっては、なおさらである。その点について陸軍のどこを探しても、和胤以外に適任者はいないだろう。

 日々を過ごすうちに、いっそ和胤が千代を嫁に貰ってくれれば、と惟之はそればかり考えていたが、家を押し付けておいて、このうえ嫁まで勝手に決められては、和胤が不憫である。かといって、千代の想いを無碍にするまねはしたくない。面と向かっていきなり話を切り出すのは、さすがに躊躇われる。と、悩みっ放しである。

 「見ろ和胤、佐官あたりになると誰しも婚姻で何処かしらと繋がるちゅうぞ。おぬし、他所から嫁をとるのが面倒なら、いっそ千代を嫁に貰え。その方がしがらみがのうて、ええじゃろ」

 と、部隊から上がってきた、とある士官の結婚承諾書が手元に回ってきたのを引き合いに出して、それをひらひらさせながら快活に笑ってみせる。

 それでも頃合いは参謀本部に居るとき、それも昼食後のささやかな寛ぎの時間である。何か、はなしのついでのように、しかも冗談混じりに言ってみるのが、惟之にとって精一杯であった。

 実際、千代を他家へ嫁に出すということを画策するとしよう。すると間違いなく、“杉閣下の姪御”とかいう目で、千代は見られるわけである。貰い手は十中八九、軍人になろう。惟之は生の人間を挟んでの、そういったしがらみが大嫌いで、その点、和胤ならば心配がない。千代も、和胤を好いているのだから。

 ところで。

 和胤はいままで縁談というものを持ちかけられたことは、実は山のようにある。頭にはつねに惟之のことがあったから、ずっと独身を貫いてきた。

 出自もあきらかで、出世頭のひとりであるはずの和胤を、陸軍のみならず海軍も放っておくはずがなく、相変わらず食い下がる将官が幾人かいるが、そのつど、丁重に断り続けているということも、惟之はきいていた。それが、自分のためであることも、わかっていた。

 このように、惟之が誰にも言えぬ悩みを抱えているころ。

 和胤は杉家に身を置くことになって、改めてひとつ屋根のしたに暮らし始めているが、まるで大きなこどもと大差ない、我儘な惟之の世話を焼くについては、千代と毎日のように結束して取り組んでいる。

 まったく五年という年月は侮れないもので、妹のようにおもっていた千代が、いつの間にか女らしさを備えていることに、和胤は胸中を擽られるおもいがしている。

 しかも杉家の特徴なのか、乙女らしく控えめでもどこか茶目を忘れず、その明るさが小さな太陽のようで、接していてほっとする。千代はさながら、惟之を反面教師にして良いところのみを得て育ったようであった。初めこそ、和胤に対してどこか遠慮がちであった千代も、いつかみせていたような快活さを遺憾なく発揮している。

 和胤が千代を憎からずおもうようになるまで、さほど時は要らず、だからこのとき、参謀総長の執務室に於いて耳にした惟之の軽口風のことばに、内心でただならぬ動揺が生まれていた。長い付き合いのある和胤にも、このことに関しては、惟之の意図がどこにあるのか、さすがにはかりかねていた。

 桜の花が盛りになった、ある日。ちょっとした事件が起きた。それというのも、齢は十九のうら若いむすめである千代の、和胤に対する想いが今日を盛りと咲く桜花のように、胸中に咲き初めてしまったからで。
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