大日本帝國軍の愛と友情の日々

逓信省の検閲済でありますが、男色趣味満載ですので、苦手な方は華麗なターンでご退却下さい!所謂BL小説サイトです。右側に注意書きがございます。必ずご一読ください

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  或いは終わりと始まり・第壱話

 普段は何でもないように振る舞っていても、参謀総長となってからの惟之は、どこか追いつめられたような姿勢で職務をこなしている。この座に就いた経緯があるだけに、半ば意地になっているというのもある。

 ふたりきりで和胤の傍へいる時に、参謀総長なぞ辞めたい、と言ったのは偽りない気持ちであったし、いまもそれは変わらない。和胤が養嗣子として杉家へ来ることが決まって、心の大半はそれで安らぎを得ていたが、軍務―というよりも自身を取り巻く環境が監視されている檻同然で、うんざりしてきているのは否めない。

 元老となって陸軍から遠のいた尾木などが、お節介にも元帥の地位であるのをいいことに、ちょくちょくやってくると、もう機嫌が悪い。惟之の副官は藤井が変則的に一度離れて再度就き、大分この火の玉のような上官に慣れている、その藤井ですら手に負えないときが増えていた。

 職務上、第一部第二課へ足繁く通うのだが、藤井が毎朝のように顔をだすと、迎える面々はその表情で概ね、今日の惟之の機嫌がわかるといった具合になっている。

 「山口、貴様そろそろ副官を交代しろよ」

 別に藤井は、自身の働きに原因があって、参謀総長からとやかくと何か言われたことはないが、上官はとにかく手がつけられないところがあり、突っこんだところまで諌められるほどの器はないとおもっている。今の和胤ならば、誰よりもしっかりと惟之の手綱を取れるに違いなかった。

 懇願するような藤井を、和胤は心底困りきった表情で見返す。部長の恩田が何か考えあぐねている様子で、執務机についているのを、何とはなしに目の隅に捉えた。

 「そんなにひどいのか」

 「通算して一年とすこし、杉閣下の副官でいたが…おれには手に負えんよ。貴様ほどには、お世話ができている、とは言えん」

 昨日も腹立ち紛れの悪戯に振り回されて、困ったものだ、と藤井がぼやいたところで、恩田がそこへやってくる。強い髭面を撫でつつ難しい顔で、何かしたためた用紙をふたりへ見せた。

 「―今日から、山口は十日ほど参謀総長付になってくれ。名目は海外情勢を含む戦略についての相談役、兼副官ということで、これなら異論あるまい」

 戦略と言っても、別に欧米と戦争をするわけではないが、良く識っておかねばならないことであるし、取り巻く環境のせいで、内へ内へ篭りがちにならざるを得なくなっている今の惟之には、丁度よい気分転換になるだろう。というのが恩田の考えである。

 「頼むぞ」

 そのひと言に、すべて集約されている。

 藤井が入れ替わりで第二課に残ることになって、さっそく和胤は第一部から放りだされた。人事については、恩田が然るべきところへ連絡をとったらしく、そういったことに喧しい惟之から何も言われないように、配慮がなされている。先刻渡された用紙はいわば辞令に相当するもので、和胤は参謀総長の部屋を訪ねると、だまって執務机へそれをさしだした。

 「…何じゃこれは」

 電話か何かで、誰かと一戦交えたあとらしく、惟之は額に青筋をたてつつ、眦を吊り上げている。その名残りのまま、和胤へぶっきらぼうに訊く。

 「そこへ明記されている通りでありますが…」

 あくまでも平素通り振る舞っている和胤のすがたに、惟之はいくらか表情をやわらげた。ここで和胤に当り散らして、何の益になるというのか。ふーっと長い息をついたのは、憤懣やるかたない、というのと、多分にささくれ立っている気持ちを冷静に保つためで、そうしてから改めてその書類へ目を通した。

 「なるほどな、恩田のやつが見かねたちゅうことか。まったく、余計な世話じゃ」

 「そう言われましても、自分は仰せ付けられましたので、ここで使っていただきませんと困ります」

 小脇にかかえてきた、さまざまな資料などを机上へ置き、そこを挟んで対峙する。惟之は渡された書類のかげから、じっと上目遣いに和胤の顔をみつめた。珍しく、公務中にもかかわらず、疲れと苦しさがないまぜになったような色を、眼に浮かべて寄越す。

 「和胤、ちっとここへ来い」

 紙の束をぽんと放って、惟之は公務中だというのに憚らず名で呼んだ。和胤は心配に堪えぬ気持ちを抱きつつ、机を回りこんで椅子へおさまっている惟之をみつめた。先ほど発していた怒気はその身から嘘のように消えており、すっかり疲れ切った態で居る。

 「こがいなことは、後にも先にもこれっきりじゃ。のう、ひとつおれを抱きしめてくれんか」

 いつになく惟之がちいさく見える。心底から苦悩を滲ませて言うのを聞き終える前に、和胤は身をかがめてその身を抱きしめた。幾度も頭を撫でてやると、惟之はまた息をつく。

 もう、強がりも言えぬほど参っている。こんなすがたは初めてだけに、和胤は掛けることばが見つからず、ただただ、そうして包んでやるしかできなかった。
→【2話】 →目次へ戻る 

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惟之と和胤の話も百話を超えまして、時間軸を大分すっ飛ばした挙句にそろそろ明治の終わりになりました。ここからは題名を変えていきたいとおもいます。和胤が杉家の養嗣子になる前から、その後に起こるできごとの紆余曲折でも、ぐだぐだにならないように書くつもりでいます。

| 或いは終わりと始まり | 00:08 | comments:0 | trackbacks:0 | TOP↑

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