大日本帝國軍の愛と友情の日々

逓信省の検閲済でありますが、男色趣味満載ですので、苦手な方は華麗なターンでご退却下さい!所謂BL小説サイトです。右側に注意書きがございます。必ずご一読ください

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  変わらぬ青空のしたで・第佰話

 日を追う事に、焦りのようなものが心を占めてゆくのを、惟之は感じている。和胤に対するおもいが募るに連れ、ある“願い”があたまを擡げてきて、ここ最近はそればかり考えている。

 毎日触れることさえできればいい、それ以上の望みを抱くのは過ぎている、とひた隠しにしてきたことだった。だが、和胤の“ずっと一緒に居たい”ということばの深さを、知りたくて堪らなくなってしまった。

 「和胤…。聞いてほしい話があるんじゃが、ええか」

 「何ですか、改まって…。何でも聞きますよ、おっしゃってください」

 薄闇に包まれた室内で、いつものように寝台のうえで抱きあったまま惟之は口をひらいたが、いつもと同じように返事を寄越す和胤のからだを抱きしめて、逡巡した。いつもなら躊躇わずことばを継ぐのだが、この“願い”は言い難い。

 「どうしたんですか、惟之さん…?」

 「いや、いけん。待ってくれ」

 こうして触れているのも落ち着かなくなって、惟之は身を起こした。今から言おうとしていることで、或いは惟之は和胤を喪うかもしれない、と急に怖くなった。受け止めてくれるだろう、とは逆立ちしても思えないが、それでも知りたい気持ちが勝った。寝台からおりて、暗がりに隠れた窓のそば、部屋の隅にある椅子へ腰を据える。

 「今から言うのはおれの…、浅はかな独り言じゃ。そのつもりで聞いてくれ」

 「はい」

 沈んだ暗がりから、惟之の声が響く。背を向けているのか、すがたは見えない。敢えて和胤はそのままで話の続きを待った。

 「現実を言えばのう―」

 それでも暫く躊躇ってから、惟之は口をひらいた。

 「今後も、また海外駐在へ行くことも幾度かはあろうが、おぬしが前線へ立つことはなかろう。おれも恩田も、ゆくゆくはおぬしに作戦の要、陸軍参謀の重きに就いて貰いたいとおもっちょるけぇのう」

 良く冷静に、広く世を見定められる者が、軍の采配を執らねばならんのじゃ、と諭すように言って、すこし沈黙が続く。

 「―これはおれ個人のはなしになるが、余程のことがない限り、確実におれが先に逝くちゅうことは分かり切った話じゃろ。今までの無理も含めて、この身が全て承知しようる。後に残る大切な者たちに、確り現世を踏み固めておいて貰いたい、ちゅう思いがあってのう」

 何やら遺言めいた話に、和胤は緊張を禁じ得ず、寝台の縁に腰をおろした格好で、膝のうえで両手を握りしめた。

 「幼少のころからじゃ。係累はおれが長じるにつれ、…兄と父は戦死であるから、致し方ないが、他は病に倒れる者も含め、まるでおれに後世を託すようにして、皆いなくなった。元服の頃には、養子に行った次兄と義姉しか居らなんだ」

 一族に託されたかのような“重み”が、この上もなく苦痛であった。ひとの死はあっけなく訪れ、遺された者が負うものの重さは、はかりしれない。

 それを幼い頃からずっと近くで見てきただけに、どこか麻痺していったのか、自身が現世で生き続けることの意味に対して虚しさを覚え、淡々と向きあってきた。というよりも、目を逸らし続けてきた。

 それでも、じぶんに嘘を吐いてまで生きてゆくつもりはなく、その虚しさを不器用に塗り固めて隠し、何とかやってきた。和胤と会うまでは、亡き妻、佳乃との想い出に浸りながら、この後は何がどうなっても良いと、ただ生きてきただけだった。

 「しかし、おぬしと出会い、おれにはまるで本当の弟ができたようにおもえた。それ以上の絆で結ばれたことは、宿命から解放されたようにも感じちょった。そうしてな、おぬしと共に改めて現世と向かい合ってみたが、解放されたと喜んでおったところへ訪れたのは、じぶんに何も残るものがない、ちゅう新たな虚しさでのう」

 おれに続く者は居らん。何も残らんちゅうのは、それだけは耐えられん、と零して窓へ向けた椅子のうえで膝をかかえる。

 「幾ら考えても、おれのあとを託せるのはおぬししか居らん。あとにも先にも、心から愛したちゅうのは、佳乃とおぬしだけじゃ。おれの養子に来て、跡を継いでくれりゃァええなと、近頃はとみにおもっちょる」

 惟之がどこかで目を覚まして、二十年も後添いを貰わずにやもめを通していなければ、或いはこのような事態は避けられたかもしれない。現世に目を向けなかった報いと言えば、それだけの話である。

 「これは、おぬしの先に広がっちょる筈の、無数にある選択を奪い取って、おれが好き勝手に歩んできた人生の、我が侭の後始末を押し付けるちゅう、まったく怪しからん話じゃ。―これで独り言はおしまいじゃ」

 そこで口を噤み、姿勢を崩して座りなおす。惟之のあたまを、和胤の掌がそっと撫でた。いつの間に傍へ来ていたのか、変わらぬ温もりで抱きしめてくる。

 「あなたが参謀総長の職に就くか就かないか、揉めたあの騒動のあとのこと、覚えていますか」

 穏やかな声だったが、すこし震えているようにも聞こえた。惟之は、肩へ預けたあたまを頷かせた。

 「うん…、覚えちょるよ」

 「惟之さんは…、自分の命でええのなら、いつでもおれのためにくれてやる。その代わり生きて、おれの遺志を継いで、しっかりこの国を守ってゆけ、とそうおしられましたね」

 「うん、言うたよ」

 「遺志、ちゅうのはこのことで…本当はあのとき言いたかったんじゃァないんですか?」

 責めるわけではなく、和胤からすれば、ただ思い当たったことを確認したくて言っただけだった。やさしく問う声が、いまの惟之には却って辛い。

 「…和胤…すまん」

 「どうして謝るんです。…そこまで惟之さんに託してもらえて、嬉しくてどうしていいか…わからないちゅうのに」

 「嬉しいちゅうて、おい…おぬし。そう言うが、ほんにええのか。養子縁組じゃぞ?わかっちょるんか?」

 そこでぎゅう、と抱きすくめられて、惟之は一瞬息が詰まってしまう。その抱擁の強さに身を委ねつつ、消えぬ不安から、そっと問いかけてみる。惟之からしてみれば、夢を見ているような気がしているのも同じだ。

 「はい、わかっちょります。これでもう、惟之さんに思いつめたような寂しい顔をさせずに済むんです。何が嬉しいちゅうて、それが一番嬉しいです」

 和胤の答えには、一片の迷いもなかった。
→【終章:完・1話】 →目次へ戻る

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