大日本帝國軍の愛と友情の日々

逓信省の検閲済でありますが、男色趣味満載ですので、苦手な方は華麗なターンでご退却下さい!所謂BL小説サイトです。右側に注意書きがございます。必ずご一読ください

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  変わらぬ青空のしたで・第拾話

 「喧嘩、ですか。…逃ぐる如かず、とはまた厄介ですね。閣下の悪戯があまりにも手に負えないようでしたら、他人の振りをしますよ。赴任初日にそんな厄介な大役はご免です」

 無論、冗談である。和種が笑声でそう言うと、上官はちいさな肩を聳やかして、いかにも楽しげに磊落な笑いを飛ばす。

 「そんなら、隅田川の草っぱらで酔いつぶれちょるおれを捜索しに来るのが、おぬしの明日の朝に執る最初の仕事じゃな」

 と、あながち冗談でもない軽口を叩きながら連れ立って廊下をもどってゆくと、その距離に応じて宴席の賑やかさが響いてくる。

 それと共に和胤は、上官を囲んでいた雛のような貌立ちをした美妓たちを思い出す。和胤は、前を歩いている上官の背に向かって、半ばからかうように言葉をかける。上官の女の好みに、意外さを抱いたというのもある。

 「しかし、閣下はずいぶんと若い妓がお好きなんですね。おれはどちらかというと玄人味の濃い妓のほうが、話をしていて寛げますが」

 そこは、和胤も男であるから、色気のある笑みを隠さずにしている。

 「―好みはひとそれぞれだろうが、おれには、若い芸妓のほうが可愛いんじゃ。艶味のある妓もええが、昇りたての月みとーに輝いちょる姿がいじらしゅうてなぁ」

 まァ、そうだな―と、そこまで言って惟之はふと口をつぐみ、かぶりを振って後を打ち消すように苦笑いを漏らす。

 ―おれに言わせりゃ、おぬしも似たようなもんだ。

 飲み込んだ言葉はそれであった。如何にも男らしい、温かみのある笑みを浮かべている副官には、一寸言えぬことばである。それに今日、軍務を共にこなす間柄になったばかりなのだ。それを言うにはまだ少し、気恥ずかしさがあったかもしれない。

 ともあれ、惟之の知っている範囲の人間は、みな、それぞれの居場所で、それぞれの分を占めて精一杯努力して生きている。誰しも、そうやって日々を乗り越えている点は同じだと、惟之自身はおもっている。

 だから置屋の芸妓だろうが、帝国の軍人だろうが、惟之にとっては殆ど意味がない。違いといえば、戦場において共に肩を並べるのが部下の軍人たちであって、戦場からもどってきたときに染み付いている硝煙のにおいを、やさしく払い落としてくれるのが芸妓らであるというくらいだ。

 いつ死ぬかわからない稼業であるだけに、目に留まったそういうひとびとを大事にせずにおれない。世ではそれを八方美人だとか、独りよがりの博愛主義だとか言うのだろう。惟之だけに通用する価値観なのかもしれないが、そういう生き方しかできないのである。

 「ところで閣下、いざとなったら参謀本部まで撤退とのことでありますが。ただ担いでゆくというのも面白くありませんから、ここはひとつ閣下を横抱きにしたいとおもう次第であります。それでよろしうございますか」

 口調だけはくそ真面目、しかし面白がるような顔つきで、担ぐ注文を訊いてきた副官のことばには、惟之も思わず吹き出してしまう。

 「あっはっは、そりゃいい。抱きよるのはええのぅ、非常時はそれでやってくれ」

 そう言って相変わらず賑やかな宴席の襖をあけた。ざっと見渡すまでもなく、いきなり罵声がとんでくる。

 「オイ、惟之。わりゃー、またしょーもねえいたずらしやがって」

 言ったのは、惟之と同郷で一期下の恩田大佐だった。その厳つい外見を裏切らない、胆の据わった武人ぶりで、若い士官から特に慕われている。大いに酔っている証拠に、普段は出さない郷里ことばが丸出しであった。

 かれの顔を見たとたんに、惟之は苦虫を食ったような顔になる。よりにもよって、というのがその意味であったがそれは束の間で、すぐにけろりとして無邪気に笑いながら首をかしげる。

 「なんじゃ恩田、おれァ何もしちょらんぞ?」

 一座はもう、ふたりのやりとりの見物人になっている。すでにくすくすと笑いを零す者もいた。惟之は袂から花模様の杯を取り出すと、恩田に向かってほうった。相手がそれをうけとるとすかさず、

 「花泥棒は罪にならんよなあ」

 そう、のんきに言ってのけると、たちまち座中が和やかな笑いに包まれる。

 「しかし、そこまで酔うほど気づかんで、花拳をやっちょったんか。あいかわらずじゃのー」

 上座の席に落ち着こうと、そちらへ向かって歩きながら、なかば感心しつつ呆れ顔でいうと、恩田を慕う部下たちが怒ったように声をあげた。遊興に水をさした上官をこらしめたい、というもので、彼らは惟之に対して酒を五合一息に飲み干すか、さもなければふとん蒸しに処する、などという条件をつきつけてきた。

 そのことばを聞いた惟之は、俄かに上座の席の上で両足を踏ん張り、仁王立ちになる。

 「どっちもいやじゃ」

 ひとこと言い放ったとたん、恩田が惟之に掴みかかってきた。座敷の中で鬼ごっこが始まる。こうなったら、五周以内が勝負であるのが暗黙の鉄則になっている。
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| 変わらぬ青空のしたで・1―10話 | 13:21 | comments:0 | trackbacks:0 | TOP↑

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