大日本帝國軍の愛と友情の日々

逓信省の検閲済でありますが、男色趣味満載ですので、苦手な方は華麗なターンでご退却下さい!所謂BL小説サイトです。右側に注意書きがございます。必ずご一読ください

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  綿津見の波の色は・第拾捌話

 いざ本祭が始まって、ただ中に飛び込んでみると、もう周囲のことなど眼中になくなっている。嵩利を含む江ノ島の男衆は、小動の神輿と行き交う龍口寺の前まで、勇壮な掛け声と共に神輿をすすめてきた。

 「ほら、タカちぃ、あそこだべ。真ン中で担いでるよ、いい顔してるわァ」

 親戚の女子衆は沿道につめかけて、その様子を見守りつつ、熱い視線を送っている。祭の熱気というものは、それ自体に力がある。伝播するそれに触れると、たちまちひとつの感覚を共有できる。目にみえぬものへの憧憬と感謝と…祈りとでもいうのか、言葉にし難いが、そういった類の、美しい感覚と言えよう。

 鷲頭は加藤と一緒に、案内された沿道の一角から、その光景をみていた。そこで昇華する力に、圧倒されていた。―勿論、鷲頭は副官の凛々しいすがたに見惚れてもいたが―

 行列を伴って、女神と男神をのせた神輿が小動に着く。これから祭典がはじまるのだが、先ずその前に担ぎ手の男衆は、腰越の港で饗される祝いの酒と食事を少しばかり頂く。

 板場に敷いたいぐさのうえで、同じ位の年頃の衆と陣取って、嵩利も酒を飲んでいる。さすがに地元の祭だから、この席に上官ふたりを招くことはできなかった。

 「よう、タカちぃ。やっと来たな」

 板場に嵩利のすがたを見つけると、迎えにきた従兄が駆け寄ってくる。ここでいつも、嵩利は江ノ島の連中と別れる。小動で待つ人々に迎えられて、親戚たちの祝いの席に連れて行かれるのだ。

 「さッと風呂につかったら、祭典の祝詞あげられる前に行くべ。海軍のお偉いさん迎えに行ってこいよ、おれン家で待ってるぞ」

 「う、うん」

 「あのふたり案の定、目ェ丸くしてみてたってよ。自慢じゃねえが、この祭は凄えよな。じゃ、おれァ先に行ってるからな」

 高揚しきった熱が、徐々に引いてゆく名残り惜しさを感じつつ、鷲頭を思い浮かべると、別の熱が頬を火照らせてゆく。

 鷲頭がどこであの祭列をみていたのか、嵩利は祭事に没入していて気がつかなかった。それが多分にこそばゆさを感じる。

 さっぱりした淡い色の単に袴をつけたすがたで、腰越の港を出て、ゆるやかな坂を登ってゆく。

 「艦長」

 軒先に出て待っていたらしく、坂の途中から上官がこちらへおりてくるのが見えた。生い茂る竹林続くその坂道は、両端の葉先が弧をえがいて、隧道のような形を作っている。そのしたでふたりは対峙した。

 「千早くん、―」

 竹林に棲む、夥しいほどの蝉の声が耳を聾していて、鷲頭が何か言ったのも聴き取れない。嵩利はその距離をつめて、ほとんどからだが触れ合うほどに身を寄せた。

 「いま、何と言ったんですか?煩くてよく、聞こえませんでした」

 「二度は言わん」

 無邪気に問うてくる副官の頬をかるく抓り、ちょっと視線を逸らせて、拗ねたように、ぶすッと呟く。そのまま、身をかわして坂をくだって行ってしまう。

 「あ、待ってください」

 慌てて隣へならぶと、鷲頭の横顔へちらりと視線を向けた。怒っているとも、苛立っているともつかぬものがある。

 「祭―、楽しめませんでしたか…?」

 心配げに訊いてくるのを、否、と首をふって答えた。

 「楽しんだ、充分すぎるほど。毎日街へ出て、実に多くのひとと語らったぞ。特にあの山車は素晴らしいつくりだな、きみの親戚の方についていって、色々と教えてもらったよ」

 これは確かにその通りで、確かに祭の高揚を楽しんでいた。だが今は、内心はちっとも穏やかではなくなっている。

 あの祭礼の最中、神事に身を捧げている副官のすがたは、清々しく尊いものであるのに、鷲頭はそんなかれを目の当たりにしているうちに、段々と怪しからぬ劣情が湧きあがった。

 平たく隠さず、身も蓋もなく言えば、まるでひっそりと知らぬうちに、かれが籠絡されでもしたかのような、そんな気持ちになっている。烈しく胸がざわめいていた。

 ―馬鹿だな、私は。神に嫉妬するなど、どうかしている。

 そうおもってみても、この焦がすようなものは容易に消えてくれそうになかった。
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| 綿津見の波の色は・11―20話 | 19:04 | comments:0 | trackbacks:0 | TOP↑

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