大日本帝國軍の愛と友情の日々

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  変わらぬ青空のしたで・第玖話

 酒に弱いとはいえ、一合程ならなんとか飲める。和胤は杯を干すと、上官へ返杯を促すようにその手に渡した。銚子を取り上げて、手中の杯へ匂やかな酒を注ぐ。

 「守ってくださるのは、大変心強くあります。しかし、閣下は我が身を顧みず、随分と無茶をなさるそうで…。先の大戦のときも、三度が三度、飽きずに弁当めしばかりを食べて、あちらの本部に詰めておられたと聞き及んでおります」

 その言葉に惟之の顔からは、先刻までのほろ苦い武士の侘びめいた表情が忽ち失せて、まるでこどものようにぷうっと頬を膨らませた。

 「戦時中、敵弾ゆきかう前線に立っちょる将兵たちはおちおち食事も摂れん。時には食うに困る状況もあるちゅうのに、弾も飛んで来ん、比較的安全な本部でのうのうとしちょる参謀が、一汁三菜なんぞ食っていられるか」

 いかにも幕末・維新期の戦火を潜り抜けてきた武士らしい言葉だったが、その武士も、いまは近代化した軍隊の、それも将官という立場に置かれている。心意気には感服するが、作戦に従事する参謀は重要な役割である。そんな立場の上官が無頓着、無鉄砲なようでは部下の士気等にも影響が出るだろう。

 「閣下が自らの身を顧みられないのでしたら、自分は出来る限り、その負担を軽くしたいと考えるものであります」

 半ば、迷惑を事前に回避したいという心積もりはあったが、おくびにも出さず。しかし半分は本気で心配している。それを前面に押し出して、和胤は真面目くさった顔でつけたした。

 「そうは言うても、戦時下は尽きざる泉水のように、あとからあとから問題が、いくらでも湧き出てきようるけぇのう」

 くちを尖らせて、酸っぱいものでも食べたような顔つきで呟きつつも、惟之の目は笑っている。任官したての少尉のように初々しい副官の態度が、好ましく映ったからだ。

 「しかし、今少しはご自愛していただきませんと。先の大戦の話はけして大げさではなく、一兵卒にまで広がっておりますよ」

 酒が注がれた杯をすぐには口に運ばず、暫く鼻先で酒の香を楽しみつつ、杯の底で揺れる花の絵柄を、なんとはなしに見ている。見ながら、傍らで話す副官のことばに耳を傾け、聞き終えてもなお惟之は、ただ黙って笑みを浮かべていた。

 やがて、ぐっと杯を干してから、体ごと副官へ向き直り、くるりとした目で副官を見上げる。じっと相手の目を見つめて、説得するようにゆっくりとことばを紡ぐ。

 「そもそも…おれを大事にするちゅうのは、おれの為すことではないと思っちょる。おぬしが言いたいことは、場合によっては守れるかわからん。約束を安請け合いして、守れんようでは情けないから先に断っておくぞ。譲れんものは譲れんからな。そこは理解して目を瞑ってくれるな?」

 最後に、どうだろう、わかってもらえるか?というふうに僅かにくびを右へ傾げた。

 「それならば、自分ができるだけ、閣下をお守りいたします。副官は誰よりもそばに居ますから、それも自分の勤めと心得る次第であります」

 「うん、頼りにしちょるよ。本当にな…、おぬしになら安心して背中を預けられるちゅうもんじゃ。…さて、酔いも醒めたな。そろそろ宴席に戻るぞ」

 副官に「守ります」とまで言われれば、惟之とて少しばかりたじろがないでもない。照れくさそうな顔で鼻のあたまを指で擦りながら言い、先ほどとは打って変わった機敏な身のこなしで、ぱっと立ち上がった。

 手のなかで花模様の杯をぽん、と軽く放って受け止める。その表情はといえば、まるで悪戯坊主のような笑みを満面に浮かべている。

 「いまごろ誰ぞ、おれの悪戯にひっかかっちょるだろう。ひとつからかいにゆくとするか」

 戻りしなの廊下で副官を振り返り、くすっと笑う。

 「今日は無礼講じゃけぇ、あいつらも何をしでかすかわからん。まァ、おぬしがいれば我が陣営は負けることはなかろう、酒の席だけでゆるされる他愛もない喧嘩のようなものじゃ。しかしいざとなったら三十六計逃ぐるに如かず、じゃ。山口、敵陣の捕虜になりたくなけりゃァ、おれを担いで参謀本部まで撤退せい」

 呵呵と大笑してみせる。惟之は無理にでも副官を巻き込む腹積もりで言った。しかし、心底から共にこの宴を楽しもうとしているのも事実で、和胤はそんな上官の気遣いに、素直に甘えることにした。
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| 変わらぬ青空のしたで・1―10話 | 11:37 | comments:0 | trackbacks:0 | TOP↑

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