大日本帝國軍の愛と友情の日々

逓信省の検閲済でありますが、男色趣味満載ですので、苦手な方は華麗なターンでご退却下さい!所謂BL小説サイトです。右側に注意書きがございます。必ずご一読ください

PREV | PAGE-SELECT | NEXT

≫ EDIT

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。


web拍手 by FC2

| スポンサー広告 | --:-- | comments(-) | trackbacks(-) | TOP↑

≫ EDIT

  変わらぬ青空のしたで・第捌話

 どちらともなく、小ぢんまりとした坪庭に目を向けると、ちょうど吹いてきた夜風が顔を撫でてゆく。酔っている惟之にはそれが心地よい。ふしぎと頭の芯は醒めていて、ふと口をひらいた。

 「のう、山口。おれァな、じぶんが陸軍内でどんな立場にいるのか…、皆にどう見られているのかも、よーくわかっちょる。それでも、おれは軍人じゃ。国を守ることを常に考えちょる。尾木のくそ爺は名誉や権威がないとどうにも生きてゆけんようじゃが、そんなもんは元来軍人には要らんっちゃ。だからおれは、ああいう輩とぶつかるのだ」

 まっすぐ、真剣な目つきで、濃い夜の虚空を突き刺すように睨みつける。

 そこまでいうと、やっと傍らの副官へ目をむける。はじめは頼もしげに和胤を認め、そのうち少しだけほろ苦いものを含ませながら、包みこむような笑みをみせる。

 「おぬしくらいの若い者は、忠義だの正義感だの古臭いもんじゃと思うておるかもしれんが。おれはこういう風にしか生きられんっちゃ。おれはおれの、大事にしたいものを守りぬく。だが、周りは敵ばかりじゃ。おかしな話だ、守っちょる国の中で敵に囲まれよる。と、まァ…おぬしはこういう上官の副官じゃ。…いま、そうは言うてくれたが、この面倒な爺の世話をするのに嫌気がさしたら、いつでも遠慮なく言うてええぞ」

 惟之は根が快活な性格だからあまり気づかれないが、実は本当の自分というものを見せたことがない。その手段としていつも多弁を用い、相手が誰であれ煙にまいてしまう。だから、将官のくせに定見がないとか陰で囁かれたりもする。いま言ったことは酒の勢いに任せて言ったことだが、これは惟之の本心だった。

 「おれの独りよがりな正義感に、将来ある若いおぬしを巻き込みたくない。そもそもおぬし、大佐で予備役なんぞになりたくなかろうが」

 転属届ならいくらでも書いてやる、こうみえて顔は広いからな。と言って豪快に笑い飛ばした。それに対し、和胤はふと考え込む風をして、顎をひいて少し上目がちに上官を見つめる。

 「軍隊にいて、軍人らしい働きができないのであれば、大佐で予備役になろうが、大将になろうが、そんなものは何の意味も持ちません。―おれは、閣下の方針に賛成です」

 息をついて、和胤は初めてその一人称をくちに出した。

 そしてその答えは、上官にとって意外なものだったようだ。それが正直に惟之の顔に出ている。目許を笑ませる副官の顔を、惟之は丸い眼を驚きで開きながら見つめている。

 「それに。余計なものばかり見ていると、大事なものはすぐ隠れて、見えなくなる。それがわからないからややこしい世の中になるんです。時流だろうが何だろうが、大事なものをなくして、進んで行っていいはずがない。だから、おれも余計なものは要りません」

 ふっと笑みを零して続けた副官の言葉に、身を乗り出すようにして惟之は耳を傾け、そのつどいちいち頷いてみせる。

 「おぬしも相当言うな。ええか、今後は職務に就いていようがいまいが、おれの前で奥歯にものの挟まったような言いかたはするな。どんどん言え、遠慮は無用じゃ」

 胡坐をかいた膝をぴしゃっ、と叩いてひとしきり笑うと、ちょうどまた風が吹いてくる。今度は紅梅の香りとともにいくたりかの花弁も運んで。

 和服の袂から、こっそり持ち出してきた花拳でつかう当たりの杯を、手品のように取り出した。それに舞ってきた花弁をつまんで入れ、提げてきた銚子をとりあげて酒を注ぐ。

 「―しかしおぬしゃ、宴席を回って、方々挨拶しちょったくせに、おれのところには杯を交わしにも来てくれんで居なくなりよって。なんちゅうやつじゃ」

 受け取れ、と注いだ杯を副官へぐい、と差し出しつつ言う。言ってはみたがそんな無礼は、もうどうでもよかった。副官が少しでも、胸のうちを明かしてくれたことの嬉しさのほうが、ずっと大事だ。それでも、態と怖い顔をしてみせる。

 「一期一会ちゅうもんを、おれは大事にしちょる。いわばこれが座右の銘だな。今の言葉を…おぬしを信じるぞ。だからこれからは一切任せる。おれは無茶も言うし、やりもするから苦労すると思え。そつなくやるのは構わんが、遠慮はなしじゃ。あとはおれを蔑ろにしなけりゃええ。そのかわり、何があっても必ずおぬしを守ってやるからな」

 軍務ひとすじの惟之としては、これは命を預けるのも同然の決意だった。果たして新任の副官が、心の奥にある真意まで汲んでくれるかはわからない。何しろ赴任初日なのだから、いきなりこんなことを言われても、戸惑いが大きいだろう。だが、副官の信条が惟之の琴線に触れて離れない。

 惟之は人情に篤いうえに、基本的にひとを疑うことをしない。しかも、己の直感を信じてきて、いままでそれが誤ったことがない。

 差し出した杯を副官が受け取り、酒を干す様子をみて惟之は笑みを浮かべ、目を細めた。
→【9話】 →目次へ戻る

web拍手 by FC2

| 変わらぬ青空のしたで・1―10話 | 10:51 | comments:0 | trackbacks:0 | TOP↑

COMMENT















非公開コメント

TRACKBACK URL

http://landofrisingsun.blog66.fc2.com/tb.php/12-93b75065

TRACKBACK

PREV | PAGE-SELECT | NEXT

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。