大日本帝國軍の愛と友情の日々

逓信省の検閲済でありますが、男色趣味満載ですので、苦手な方は華麗なターンでご退却下さい!所謂BL小説サイトです。右側に注意書きがございます。必ずご一読ください

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  変わらぬ青空のしたで・第玖拾陸話

 部屋へ運ばれて、ひとまず寝台のうえに横たえさせられ、鈍い痛みにさいなまれたあたまを寝具へ埋めた。

 大城は巨躯をかがめて、うつ伏せになった惟之の背を労るように撫でてやる。まったく他意のない温かさがそこにあった。大城からこうして触れられるのなら、一向に嫌悪感はない。一度欲望を剥き出しにすると、手に負えぬのが嘘のようだ。

 できることなら、もう色好みのする目つきで、見て欲しくはなかった。大城のことはすきだが、それはあくまで人間的な部分であって、和胤とは根本から違うのだ。

 「何があったかは、知たん。じゃっどん、今度無理すっことがあれば、おはんないつ倒れてもおかしゅうなかからだちゆうことは、忘れてはいけもはん」

 心底から出たことばだというのは、その声音でわかる。惟之は身じろいで寝返りをうつと、ひたと大城の顔を見つめて、情けない表情を隠さずにいた。

 「自棄を起こすのは、もうこれ切りにしちょきます。ええことなど、ひとつもないっちゃ」

 「そいなれば、こいで貸しは無しにしもそう」

 にんまりと笑みを浮かべ、覆い被さるなり惟之の唇をほんの軽く掠め取った。その気になれば、今この場で襲うこともできたが、何か心痛を抱えている様子の惟之を追い詰めかねない。そこにつけ込むような、狡いやり方はしたくなかった。

 それにしても、惟之の隙は相変わらずである。すこしでも気を抜くと、危なっかしい。すぐに隙が現れるのは何故なのか。態としているのでなければ、ある種の罪でもある。

 完全に虚を突かれたかたちだっただけに、惟之は恨めしげな眼で見るしかなかった。大城はすぐに身を起こして、目を細めて悪戯っぽく笑った。

 「こげな貸しの返しかたは、認めとうないですな」

 「もう返してもらったもんは、返せんど」

 部屋を出て行こうとしたところに、吉田がやってきて、ふたりは扉の前で鉢合わせた。惟之の独白ともつかぬことばが、その空間に流れる。吉田に促され、大城は踵を返して部屋の中へ戻ると、立ったまま惟之へ視線を注いだ。

 「心にまで触れられるちゅうのは、ひとりしか居らんのじゃ。おれは今まで、この身に何が起きようとも平気な顔をしちょったが、もう、そうはいけんのじゃ。おれになにかあったとき、傷つくのは、おれだけじゃーない」

 先刻、大城は和胤と目を合わせたとき、その眼にひどく悲しげな光が浮いたのを、刹那ながらもしっかり見てとっていた。こうして目に見えぬところで、ほんの悪戯程度のちょっかいを出されることさえ、惟之には苦痛なのだろう。

 「後にも先にも、おれが触れたいと、触れてもよいとおもっちょるのは、他のだれでもないんじゃ」

 もう、そっとしておいてくれ、と惟之は寝台に仰向けになったまま、呟いた。そのからだはちいさく震えているようにも見受けられた。

 「そげんに、山口クンが大切かな」

 「大切なんちゅうものじゃーない。くだらんことで喧嘩をしたが、ひと月も音沙汰なく離れてみて、ようわかった。あとどのくらい、共に居られるかわからんちゅうに、馬鹿なことをしたもんじゃと、我ながら呆れちょる」

 「ほう、自棄になっちょったんは、そいが原因じゃったんか。そいなれば、二度と山口クンの手を離さんことやな。おはんがそうふらふらすっと、おいはつい手を出しとうなってしまう」

 そういうところが甘い、隙だらけなのだと大城は釘をさした。

 先刻の突き刺すが如き和胤からの視線も、只の嫉妬ではないのだろう。それほど大切におもっているのなら、もっと真剣に、自然に、一分の隙もなく寄り添うべきだ。大城にも、命をも辞さぬという仲の男がいるだけに、この甘さにはすこし腹が立ってもいた。

 「おはんたちゃ、ニセでもあるまいに。そげんこつ、頭を悩ますちゆうのは、どうにも…。ともかくこいで、おはんの気持ちはよっくわかいもした。今後は一指も触れもさん」

 その口ぶりは重々しく、どこか苦悶さえ滲んでいるようだった。惟之を―掌中の珠を逸したと言いたげな、心残りのようなものが多分に表情にあらわれている。この性癖さえなければ、どんなによいか、と惟之はつくづくおもう。

 「いや、おはんらを裏切るまねはせん。じゃっどん、おはんな香は、ほんのこちよか香じゃった…」

 深々と、ふいごのような大きなため息を吐いたあと、大城は今しがた目が覚めたかのような声で、ゆっくりと言った。その一連のやりとりを吉田の背に隠れて、和胤はすべて聞いていた。

 「ほれ、そこいへ隠れとらんで、出て来んか」

 不意に振り向いた大城に歩み寄られ、腕を掴まれると有無を言わさず吉田のうしろから引っ張り出された。惟之の前に立たされ、肩を一度強く叩かれる。

 「喧嘩すなとは言わん。じゃっどん、てげてげにしやんせ。そいから、もっと杉サンを大事にしやんせ」

 ふたりきりにして、大城と吉田は出ていった。

 「みごとに怒られたのう」

 「はい…」

 もっと高い場所へ置くべきだと、決意していたはずのふたりだけの繋がりを、打ち捨てたも同然にしてしまっていたことに、互いにとっくに気づいていた。

 「おれを、許してくださいますか」

 「馬鹿。そりゃァ、おれの台詞じゃ」

 くだらぬ諍いなど、二度とするまい。このひと月はそれに気づけただけでも、無駄にはならなかった。そのことに救われもしたし、大城に芯から理解してもらえた点は、大きかった。
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| 変わらぬ青空のしたで・91―100話 | 21:54 | comments:0 | trackbacks:0 | TOP↑

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