大日本帝國軍の愛と友情の日々

逓信省の検閲済でありますが、男色趣味満載ですので、苦手な方は華麗なターンでご退却下さい!所謂BL小説サイトです。右側に注意書きがございます。必ずご一読ください

PREV | PAGE-SELECT | NEXT

≫ EDIT

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。


web拍手 by FC2

| スポンサー広告 | --:-- | comments(-) | trackbacks(-) | TOP↑

≫ EDIT

  変わらぬ青空のしたで・第玖拾伍話

 相変わらず、惟之は小料理屋の一室でささやかな休息に浸っていた。四半刻ほどねむったあと、起き出してきて、軽く腹に入れられそうな豆いりの卯の花などを頼んで、それを肴にまた飲み直しはじめた。

 程なくして仲居が襖のむこうから声を掛けてくる。大城と吉田が揃って訪ねてきたらしい。別段、誰も通すなとは言っていないから、承諾の旨をつたえる。

 「珍しいこともありますな、杉さんがお一人とは。それに、随分飲まれておるようですが、お体に障りやしませんか」

 大城を上座に据え、その前に並んで座った吉田から、多分に心配そうな目で見つめられる。顔色こそ変わらないものの、いつも明瞭にことばを発する惟之が、すこしばかり舌足らずに話すのを、ふたりは聴き取った。

 例の藤井から預かってきた案件に惟之は目を通して頷き、すぐに署名と花押をしたためた。ひとまずこれで主な所用は済んだ。せっかくだからと、半刻ほど杯を交わそうということになったが、訪ねてきたふたりは、惟之が時折、針鼠のように気配を荒くしているのを感じていた。それはどちらへ向けてのものでないことは、見てすぐにわかった。それに、寂しげであるのにどこか自棄になって快活さを装っているのが、奇妙でもあった。

 「こいは、いけんしたこっじゃろか。何か、あっちゅうとか。そげん、酔っとるちゆうこつ…、どっちにしろ尋常じゃなか」

 言ってみれば、荒れた飲みぶりであった。

 その原因が和胤との喧嘩であるなどとは、ふたりとも夢にもおもわない。しかし療養の前例もあるだけに、これ以上酒をあけさせることは許容しかねた。官邸へ引き上げさせてしまおう、と吉田は大城へ目配せし、利かん坊のように膨れ面をしている惟之を立たせたが、酔いが回って足元がおぼつかぬ有様である。

 「さ、杉サン。帰りもそう、こげん飲みかた見るに堪えん。帰るまでいっとどま、おとなしゅうしやんせ」

 と、宥めるようにあたまを撫でたあと、惟之の腕をとるなり、ひょいと横抱きにしてしまう。抱きあげたとき、身をかたくしたのがわかる。

 「何、襲いやせんよ。今はおはんなからだのほが大事ちゆうこつごわす。おいとて、分別はあっど」

 呵々と笑って、そのまま帰途につく俥まであるいていって、乗せてしまう。官邸近くで降りると、惟之は言うことの利かぬからだを、大城に預けきっていて、情けないやら苛立たしいやらで、すっかり惨めな気持ちになっていた。

 官邸の廊下で、小倉へ赴任してきた先任参謀―和胤を迎えに行っていた藤井が、泥酔の態でいる上官を、あいた口が塞がらぬといった表情で見て、大城に案件のことも重ねて礼を述べると、すぐに和胤を呼びに行った。総長の執務室から出てきて和胤が見たのは、大城に抱きかかえられている惟之であったが、ここまでの経緯をなにも知らぬだけに、内心の狼狽はひどかった。

 惟之は虚ろになりかかった眼を刹那、和胤へ向けただけで、それきり見もしなければ、口も利かない。しがみつくように羽織の襟を掴んでくる惟之を、大城は腕揺籃であやすようにしてやる。

 「おはんら、いつまでんそげんな格好で居らんで、早うからだを休めなされ。おいは乗りかかった船、こんまま杉サンを介抱しもす」

 和胤の刺さるような視線を受け、これは勘違いされても仕方のない状況だけに、大城は苦笑いをうかべ、あとの説明は吉田にまかせて、惟之の私室へ引っ込んだ。

 心中穏やかでない和胤は、ともすれば吉田にさえ敵意のまなざしを向けかねなかった。それを察して、別室に和胤を連れてゆくと、こと細かに惟之のことを語り始めた。

 「何があったか存じませんが、酷く荒れておられましたよ。何か心当たりはないのですか」

 信のおける吉田になら、と和胤は恥を忍んで惟之との諍いを吐露した。それならば大城が去ったあと、即刻和解すべきである、と吉田は仲介まで買って出てくれた。新年の大城邸での出来事は、吉田も当事者のひとりであるし、川上と同じく、惟之らを擁護する側にいるからだ。

 それとなく吉田も惟之の私室へ入ってゆく。それを見届けて待つ間に、先ほど預かった案件へ、目を通しておいた。もし吉田がいなければ、くだらない諍いが元で、惟之との仲は、修繕の効かぬものになっていたかもしれなかった。この喧嘩で八割方、非があるのは和胤である。ひどい慙愧に見舞われながら、やがて呼びに来た吉田のあとについて、惟之の私室へ足を踏み入れた。
→【11話】 →目次へ戻る

web拍手 by FC2

| 変わらぬ青空のしたで・91―100話 | 16:42 | comments:0 | trackbacks:0 | TOP↑

COMMENT















非公開コメント

TRACKBACK URL

http://landofrisingsun.blog66.fc2.com/tb.php/106-a55a7c7a

TRACKBACK

PREV | PAGE-SELECT | NEXT

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。