大日本帝國軍の愛と友情の日々

逓信省の検閲済でありますが、男色趣味満載ですので、苦手な方は華麗なターンでご退却下さい!所謂BL小説サイトです。右側に注意書きがございます。必ずご一読ください

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  変わらぬ青空のしたで・第玖拾肆話

 少しさかのぼって、惟之が“家出”をした日。

 怒りを覚えるどころか、和胤はこころの灯りが、ふっと消えたような、ひどい悲しみに襲われていた。

 大演習の公務で、参謀総長が小倉へ赴任したことを受けて、第二課の参謀は俄かに職務に追われた。ひとくちに演習といっても、そこに至るまでの段取りは実戦さながらなのだ。

 この忙しさに、悲しみを感じる暇がない点は救われたと言ってもいい。先任参謀に推された和胤は、惟之とのことをおもう間もなく、残り少ない時間のなか、あちこちへ奔走していた。

 いつかの雪中演習での手腕が印象にあったらしく、中佐になったのだし、ここでひとつ大きく出てみろ、という恩田の推薦だった。

 それからほぼひと月。公務に揉まれて、互いに離れてしまっているのは距離だけでは済まされない。内心にそんな感覚さえ生まれた。

 それでも惟之のことなど、もうどうでもよいと思っていたわけではないが、手紙もしたためず、電話のひとつを掛けるわけでもなく、愛想を尽かされても仕方のない状況になっていた。

 そんななか、宮中御付武官として、大城が小倉へ赴任したことを小耳に挟んだとき、惟之の身に何か起きはしないだろうかと、ちらりと嫌な予感がした。

 後日、恩田から小倉行きを命じられるやいなや、和胤は即刻帝都を発った。ちりちりと胸を灼くような不安が消えなかったし、何より惟之に早く会いたかった。

 大城が惟之の近くに居るということだけで、嫌でもあの日のことを思い出してしまう。


 閲兵式と大演習の手はずが整ってくると、それに対して、惟之の仕事も減ってくる。まるでひと月で一年分は働いたかとおもうほどの疲れが押し寄せてくる。

 それと同時に、堪えてきた和胤への、こもごもの想いがいっぺんに噴き出して、どうにも始末にこまった。

 疲れきっている身をおして、ある夜に街へ出ていって、目立たぬ小料理屋へ足を運んだ。官舎に居るのには、もう耐え切れなかった。

 このたびの一連の行事は、言ってみれば一大事だから、何かあったときのためにと、惟之にしては珍しく、副官に居所を告げておいた。

 狢か栗鼠が、棲み処に穴蔵をもとめるのに似た行動を、惟之はひっそりと、ひと息つきたいときに起こす。

 小料理屋の奥まったこの部屋は、心地よい温かさがあって、まさにうってつけだった。店の女将には、きちんと名を告げてあるから、借り切っているも同然というのも手伝っている。

 結局和胤からは、何の連絡も来ていない。あの心配性が、である。今までなかったことだけに、その不安と寂しさは言い表せないものだった。そのくせ萎縮してうごけないじぶん自身を叱咤できず、惟之から連絡を取ろうともしていない。

 気持ちを紛らわせるのに、徳利で五、六本ばかり飲んだ。久しぶりで、しかも度のきつい焼酎だけに、疲れている体にはこたえた。

 「まったく、何をしよるんじゃろ。これが全部夢じゃったらええのにのう…」

 料理をきれいに平らげて、また少しばかり酒を運んでもらったあとは、横になりたくて屏風を隔てて床をのべてもらう。泊まるわけではないが、いま少し、眠りたかった。

 小倉は演習を行うこともあり、街全体が軍御用達といった風で、行儀のよい軍人には寛容だったから、惟之の素性をきいている女将は、遅くともお送りしますから、ゆっくりお休みください、と労ってくれる。

 そのころ、惟之の副官である藤井が街をあちこち歩きまわって、上官の所在を探していた。どうしても裁可を仰がねばならない事項が出てきてしまい、もう先任参謀が赴任してくるだけに、このままではおさまりが悪い。

 街へ行くとはきいていたが、肝心の店がどこに在るのかわからずに困った。あちこちの目ぼしい店へ入って聞いて歩きまわっている。

 夜の街だというのに、飾緒と軍刀を吊ったすがたでいるのは嫌でも目立つ。何軒目かで、律儀なかれを気の毒におもった主人が、心当たりへ電話をかけてくれた。上官本人ではないが、陸軍のお偉いさん方が来ている店を教えてもらい、そこへ行く。

 訪ねた料亭の女将は、藤井の厳しい身形をみて、只事ではないとおもったのか、自ら買って出て、座敷で寛いでいる大御所を呼びに行ってしまった。止める間もなく、通された別室でまごついていると、現れたのは元老の大城と陸軍次官の吉田だった。

 「おお、藤井クンか。いけんしたとな?」

 呼びつけた形になったというのに、ふたりとも意にも介してもいないようで、目許を笑ませている。そろって恐縮している藤井へ気さくに声をかけ、かれの前に居並ぶ。

 こういった事情が斯くありまして、と藤井が何とも困った顔で言うのを、大城はご苦労でした、と頷いて、

 「こげな時間まで、藤井クンが働っこともなか。そん店ならば知っちょるし、ここはおいが預かりもそう」

 参謀総長の副官に就いて、しかもこれだけの行事である。初めてのことばかりで、いささか気張り過ぎているようだった。藤井を任から解放してやる気で、やんわりと背を押してやる。

 よろしくお願いもうします、と深くあたまをさげて、藤井は辞していった。今日は官舎へ戻っても、軍服を脱いで落ち着けるのはまだ先だった。これから駅頭まで先任参謀を迎えに行くのである。
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| 変わらぬ青空のしたで・91―100話 | 12:55 | comments:0 | trackbacks:0 | TOP↑

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